「アンプ自作」カテゴリーアーカイブ

リモコン付きバランス型プリアンプ フラットアンプの試行錯誤(その1)

今回のフラットアンプを考えるときに最初に考えたのは、ぺるけ師匠の平衡プロジェクトだ。 平衡・不平衡の入出力に対応している。 すなわち、バランス入出力のフラットアンプであり、差動レシーバ/ドライバとしても機能する。

参考にしたのは、ぺるけ師匠の FET式平衡型差動プリアンプだ。 最少の半導体で構成されているが、上記の条件を満たしている。 トランス出力としているのは、不平衡出力の時に、片側の出力をアースすれば使えるということが大きいようだ。 今回のフラットアンプでも、そのようにしたいと考えた。 ぺるけ師匠は、各種のライントランスの計測データも提示なさっている。 これをみると、日本光電の E-8480 が私の目をひいた。 ヤフオクで手に入れることができた。

問題はこれから。 アナログ対応バランス型プリアンプでは、470kΩの入力インピータンスで受ける必要がある(MUSES 72320 の出力をバッファなしで受ける)ので、ぺるけ師匠の FET式平衡型差動プリアンプのフラットアンプは使えない。 反転入力型の回路であり、入力インピータンスをあげるのは困難だ。 小さく仕上げるためにオペアンプを使うことを考え、下記のような回路を考えた。 ぺるけ師匠のように、トランスの二次側からも NFB をかけるが、一次側の出力からも NFB をかけておく。 このようにすることで、トランスがループに含まれる NFB 量を減少させ、安定化に役立つ。

※ 二次側のターミネートは下記に示した試行錯誤により決定

二次側のターミネートをつけるだけで、上図の周波数特性が得られた。

VP-7723A LPF 80kHz(バラックでの測定)

上記に示したのは、バラックでの仮測定のときの歪み率特性である。100Hz が少し悪いのはシールド不十分のための雑音が影響していると思われる。

聴いてみると、なかなかゴージャスなご機嫌サウンド。 ビッグバンドジャズがよく映える。 ところが、これは失敗作であった。 なぜなら、CMRR を測定したら、6dB 程度しか取れていない上に、差動ドライバとしては動作しないこともわかった。

to be continued…

リモコン付きバランス型プリアンプ 構想編

mi-take クリエイトから購入したのは、PGA2230 によるバランス型ボリューム基板と専用電源基板、表示用LCDである。 これにフラットアンプを自分で作成する。

電源には SONY 製の重厚な鋼板で覆われたEIトランスを使う。 ちょうど専用電源基板にちょうど良かった。 

専用電源基板は、SBD で整流、ニチコンの FW が用いられており、自分の趣向にもあう。 ただし、FWのパスコンとして、PMLCAP 35V 4.7μF を追加した。

基板裏に PMLCAP をはんだづけした。

PGA2230 によるバランス型ボリューム基板には、デジタル制御の 5V とアナログ部分に供給されると思われる±電源が必要である。 専用電源基板は三端子レギュレータなので、このあとに、大好きな KZコンデンサによるリップルフィルタをいれてから、PGA2330 に供給する。 このあたりは、アナログ対応バランス型プリアンプと同じ。 PGA2330 基板とフラットアンプ基板には、それぞれリップルフィルタがはいる。

今回は電流が少ないので、トランジスタのベースのKZ は 100μFとした。

PGA2230 によるバランス型ボリューム基板は、リモコンに対応している。 リモコンの受光部がすでにはんだ付けされているので、これをはんだ吸い取り機(HAKKO FR-301)ではずして、フロントパネルに取り付けることにした。 取り付けは、例によって、ホットボンドだ。

手元に、4回路3接点のロータリースイッチがあるので、これを利用して3入力とするが、うち1入力を RCA 端子とする。 フラットアンプに差動ドライバの役割も持たせる必要がある。 最悪の場合は、アナログ対応バランス型プリアンプと同じように、変換基板を作ることにするが、できれば、今回はぺるけ師匠の差動型プリアンプのように、トランスを用いて、差動ドライバ/差動レシーバの役割を持たせたい。

電源電圧が ±14.4V のみであることと省スペースという制約のなかで、平衡・不平衡入出力に対応できるフラットアンプを作成することがこのリモコン付きバランス型プリアンプの成功のカギを握ることになる。

to be continued…

リモコン付きバランス型プリアンプ 妄想編

メインシステムで使用しているバランス型プリアンプには、全ての操作をリモコン操作が可能という特徴があり、たいへん重宝していた。 このバランス型プリアンプを不注意な改造で壊してしまったときに、もしも修理できなかったときのことを考えていた。 2025年7月現在のたかじんさんのバランス型ボリューム基板には、リモコン操作可能なものはない。

ウェブ上で調べてみると、バランス型プリアンプのシャーシ(タカチ WO99-43-33S)にうまく組み込み可能なものに、mi-take クリエイトPGA2230 によるバランス型ボリューム基板がみつかった。とりあえず、各種の関連基板等を確保した。

幸いにして、バランス型プリアンプは、たかじんさんのご支援により修理できたので、この基板を用いて、単身赴任先で用いるプリアンプを作成することにした。

購入した基板はボリューム基板のみなので、フラットアンプが必要になる。 アナログ対応バランス型プリアンプでは、設置面積が少なくてすむClassAA フラットアンプを採用したが、この構成には大変大きな欠点がある。 CMRR(同窓除去比)が 0 ということだ。 バランス型プリアンプを改良しようとして、故障させてしまったのもこの点を改良しようとしたためであった。

よって、新たなフラットアンプを検討する必要がある。 一番良いのは、もちろん、たかじんさんによる入出力バランスアンプ NNBA-1 基板を採用することだが、7cm x 10cm 2枚構成ということで、小さくまとめることのは困難だ。 ヒートシンクがトランジスタに支えられる構造から、縦置きはよろしくない。 アナログ対応バランス型プリアンプもスペース的にも、電源容量の観点からも、NNBA-1 基板は採用できない。 どちらでも使えるフラットアンプを作り出す必要があるのだ。

ケースは単身赴任先で使用することも考え、できれば余り大きくしたくない。 そう考えていたときに、ヤフオクで、Ideal CE-30(幅300mm, 奥行き200mm 高さ100mm) が投げ売りされていた。 廃品種になったようだ。 ちょうど良いので複数確保することにした。

追伸 アマチュア向けのシャーシ/ケースがどんどんなくなっていく。 LEAD はアマチュア向けから撤退してしまった。 予定では夏ごろとのことであったが、KT-88全段作動アンプ で使った MK-400 はあっという間に売り切れてしまい、予備を購入できなかった。

to be continued…

フルバランス・フルディスクリートアンプへの修理・・・また発振だった

フルバランス・フルディスクリートアンプの左チャンネルが、バランス型プリアンプの改良で故障してしまった。 この故障は、フラットアンプの±電源のうち、+電源が供給されなかったために、出力にDCが出力されたためと思われる。 幸いにして、スピーカーは、保護回路基板のPRT-01 によって、影響を受けなかった。

この原因は、フラットアンプ NBBA-1 の出力のコンデンサをフィルムコンデンサと電解コンデンサを並列接続しており、逆電圧がかかったことが理由として考えられる。 ある機械の故障が他の機械の故障につながるというのは許容できないと私は考える。 よって、このような形式になっていた Blue Snow DACバランス型プリアンプの NBBA-1 の出力から電解コンデンサを除去することとした。 電解コンデンサの除去によっても、低域のカットオフ周波数が 1Hz 以下になることを確認した。 音質的な変化としては、低域の余裕度が犠牲になると思われたが、私の環境では、高域の変化のほうが圧倒的に大きかった。 高域の雑味が取れた感じというのが一番の変化であった。 ただし、我が家はメインシステムが、左右別サブウーファ付きという点が一般的ではないので、他の環境では別の結果となるかもしれない。

さて、フルバランス・フルディスクリートアンプの修理の方だが、VFA-01 の BTL 構成であり、片チャンネルがバイアス電流を上げられず、オフセット電圧を調整できなくなっていた。 実験用トラッキング電源で、±12V を供給し、各トランジスタのBE電圧が 0.6V になっていないトランジスタは壊れていると考え、交換することで修理が完成するだろうと考えた。

最初に見つかったのは、終段の 2SA1186 の故障であったため、その3段ダーリントントランジスタを全て交換した。 ところが、相変わらずオフセット電圧の調整が極めて不安定のままだ。 出力は、-10V からほんの少し回しただけで、+1.7V 程度となり、その後ゆっくりと +1.4V ていどまで低下する。 右に完全に回すと+4V程度になる。 DC Offset が +1.5V 程度であれば、バイアス調整が可能になる。
しかし、DC Offset がマイナスになると、バイアス調整が全く取れず、電流が流れない。

たかじんさんによる ±12V 電源 での動作時の各所の電圧 を参考にして故障した実機の電圧は下記の通り。

クリックで拡大: ただし、初段は 2SK170 である

これをみると、差動2段目があやしいかもしれないと考え、電流負荷も含めて全て交換するも、全く変化がなかった。 DC入力された、FET(2SK170)の故障を考えて、こちらも交換したが、変化がなかった。 念のために、電源を入れずに、全ての抵抗を確認したが、これまた異常がなかった。 交換していないのは、2SC2837 の3段ダーリントンのみとなってしまったので、だめもとで交換したが、これまた変化がなかった。

オシロであたってみると、オフセット電圧がマイナスのときには、40MHz 帯で発振していた(下図)。 オフセット電圧ガプラスになると、1MHz 帯での発振に変わる。

こうなると、初段の出力間のCR(下図の C4, R5)、2段目のベースに接続されたC(C5)を丸ピンソケットにして、各種の値を差し込んで試みてみたが、一向に改善されない。

たかじんさんに相談してみると、3段ダーリントンのベースのコンデンサ(C7, C8)の増量や、ベースにいれた抵抗の増加も考慮してはとのことであったが、C7, C8 を1000pF 程度まで増加しても,発振の状況は変わらなかった。 調整のしすぎで、半固定抵抗が不安定になってしまい、これも交換した。 

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かくして、困ってしまった私だが、たかじんさんも新作の VFA-34 では発振で苦労なさっていた。 この記事のコメントで、ボード線図の測定が提案されており、私もやってみた。 

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驚くなかれ、400kHz に急峻なピークがある。 このようなピークは、NFBループのコンデンサで解決すべきと考え、たかじんさんの推奨の 3pF から、6.8pF に増量したところ、このピークは消え、オフセット電圧の調整、バイアス電流の調整もきくようになった。 一番よかったのは、R5=100Ω / C4=1000pF であった。 念のために、ひずみ率特性を測定し、従前と変わらないことを確認した。

フルバランス・フルディスクリートアンプの修理での教訓は、基本に忠実であれということにつきる。 トランジスタアンプの場合、自分で設計する技量がないので、回路の理解が十分ではないこともあって、わからない/予想外となると、たかじんさんに安易に質問してしまう悪い習慣がついているようだ。 ぺるけ師匠の「Tips &トラブルシューティング・ブック」にある「手を動かす前に頭を使え」である。 今回は、問題がない部品をたくさん交換してしまった。 交換してしまったトランジスタは、HFE 測定後に再利用したい。

追伸: 本来の予定では、NNBA-1 の換装 した後に、Panasonic Audio Analyzer VP-7723A を購入したので、安定した測定が可能になった報告で終えるつもりだった・・・

Class AA パワーアンプは実現できるか・・・なんとかできた編

Gain 20dB のときの音が良かったことをたよりに、NFB抵抗を元に戻すことにした。 下図のNFB抵抗 10kΩ のところである。 あきらめた編では、NFB抵抗が22kΩになっていた。

左チャンネルでは、C1 = 2200pF, C2 = 82pF、右チャンネルでは、C1 = 4700pF, C2 = 220pF にて下記の雑音ひずみ率特性である。 左チャンネルでは あきらめた編 のひずみ率特性の名残のように 10kHz で 1W 付近のひずみ率が増加している。 右チャンネルでは、このような特性は認められていない。 これだけを見ると、右チャンネルのほうが優秀に見えるが、右チャンネルは最大出力の時に DC漏れが増加することがわかっており、痛しかゆしである。 とはいっても、実際に使用している 3W 程度までは、0.05V 未満であるので、これ以上追わないことにした。 最大出力は左右とも、雑音ひずみ率 5% であると、どの周波数でも、16W (8Ω)である。 ちなみに、4Ωでは、25W程度となるので、出力を増大させるという目的は達成したと言えよう。

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周波数特性は上図に示した。 左右でけっこうフラット部分が異なるが、C2 を増減させると、よくわからないピークやディップが、200kHz 以上の部分ででてくる。 この特性で精いっぱいといったところだ。 残留雑音は、左で 0.09mV、右で 0.12mV (いずれも、GwINSTEK GDM-8261A直読)であった。 ダンピングファクタは、ON-OFF 法で、20以上と思われる。

試聴では、やっと安心して聴ける音質である。 MUSES 05 らしく、ソリッドな低音と華麗に散乱する高音といったところだろうか。 Victor SX700Class AA ヘッドホンアンプ で鳴らすと、きれいだけれど非力さを感じるが、こちらでは力強さを感じる。 リファレンスに示してピアノのキータッチの差は楽々表現してくれるので、よいアンプだと思う。

しかしながら、特性を見ても、また再現性という観点からも、このアンプの作成は全くお勧めできない。 今回の作成過程で、TDA2030L を5個以上壊してしまった。 トラッキング式定電圧電源 TEXIO GwINSTEK GPS-2303 を使って電流リミッターを働かせながら、基板作成を行って、このありさまである。 

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はらわたを上に示した。 トロイダルトランスの上には、たかじんさんの PRT-02 基板、右の側面に たかじんさんのPGA2311ボリュームと Balanced-Unbalanced 変換基板がある。 この Balanced-Unbalanced 変換も悩ましいところだ。 なぜなら、Balanced-Unbalanced 変換に用いるオペアンプの音質が、大きく影響してしまうからだ。

本機の Unbalanced の音は、MUSES 05 の音質が支配的であるように思われる。 力強い低域、ど直球の中域、華麗で散乱する高域という感じである。 Balanced-Unbalanced 変換のオペアンプとして、当初、無難に LME49720 を使用していた。 私の印象では、LME49720 はさわやかで情報量が多く、結構気に入っているオペアンプだ。 しかしながら、Unbalanced と比べて明らかに音の方向性が異なってしまう。 低域の力強さがなくなり、高域の華麗さがなくなる。 試しに、私の大好きな MUSES 01 にすると、MUSES 05 らしさがスポイルされ、ピラミッド形で、高域は雰囲気感あふれる音になる。 Unbalanced でもこの音なら、大変満足するところだ。 それではと、1回路→2回路変換基板を用いて、MUSES 05 を使ってみると、MUSES 05 らしさがマシマシになり、派手なドンシャリになってしまう。 さすがにこれは駄目だ。ふと思い出したのは、MUSES 02 だ。 MUSES 02 はかつてIV変換のために購入したが、MUSES 01 が好きすぎて、お蔵入りになっていた。 MUSES 02 は中域の密度の濃さが特徴的で、ボーカルものはよいのだが、大編成になるといまひとつという印象をもっていた。 低域の弾む感じは MUSES 05 に少し似ているので、良いのではと考えた次第だ。 試したところ、今回はベストマッチとわかった。 Unbalanced、Balanced ともに類似した傾向となった。

最近作成した、VFA-01 BTLアンプ、KT88全段差動アンプは似た音質傾向と述べたが、本機は明らかに異なる。 使用するオペアンプ・・・特に V-Amp のオペアンプによる影響が大きい。 本機は、Class AA ヘッドホンアンプやミニワッターの出力増大を目的としていたのだが、そうはいかなかった。

また、本機の製作を通じて、WaveGene/WaveSpectra での雑音歪み率測定や Analog Discovery での周波数特性測定の難しさも感じた。 ちょっとした配置の変更で、特性が変わってしまうのだ。 測定限界に近いところでの測定であることも原因かもしれない。 真空管アンプの作成では感じたことがなかったので、より広帯域、より低歪、低雑音の半導体アンプのためかもしれない。 オーディオアナライザが欲しくなってきた・・・。

とりあえず、これで完成としておくが、まだまだ改良の余地があると自覚していることを最後に述べておきたい。 いつの日か、再チャレンジを・・・

Class AA パワーアンプは実現できるか・・・あきらめた編

たかじんさんのアドバイスもむなしく、ダメだったことから、妄想編で記した方針を撤回して、Class AA ヘッドホンアンプClass AA ミニワッターと同様に、V-Amp に LME49720 を利用することとする。 2回路のオペアンプなので、1回路は遊ぶことになる。

今度は大丈夫だろうとタカをくくって制作してみたら、ホイートストンブリッジが 0.33Ωー0.1Ω、33Ωー10Ωの場合、LME49720でもコンパレータ状態になってしまった。 呆然とする n’Guin・・・

仕方がないので、たかじんさんのアドバイスをあきらめて、補正コンデンサ位置を元に戻したが、当然ノイズは高いまま。

アンプ入力ショートであると、雑音が聞こえないのに、PGA2311 電子ボリュームにつなぐと雑音が多くなることから、PGA2311電子ボリュームの作成ミスやQIコネクタの接点不良などを疑って、いろいろ試してみたが、PGA2311電子ボリュームの左右を変えても、右チャンネルの雑音が多いことから、PGA2311電子ボリュームはシロらしい。やはり不安定な Class AA パワーアンプ基板が問題?

ふと思いついて、トロイダルトランスを回してみたら、ノイズが変化するではないですか。 運が悪いことに、最もノイズが大きい方向で固定していたらしい。 また、Talema の 12V 6.67A x 2 (160VA) なので、付属の金属ボルトで固定していたが、これをプラスティックボルトに交換することで、さらにノイズは減った。 左右とも、0.1mV 台になった。 大喜びで試聴してみたが、なんか変だ・・・。 聴きづかれする音質のままな感じがする。 歪み率特性をとってびっくり。こんな変な特性を見たことがない。

to be continued…

Class AA パワーアンプは実現できるか・・・光転じて闇編

C1の容量を減らして、試行錯誤したところ、片チャンネルは C1=4700pF、他チャンネルは 2200pF で周波数特性がいい感じになった。 しかし、10kHz の方形波では、寄生発振が認められる。

ここで、C2 をいれて周波数特性の肩特性が整うようにしてみたところ、10kHz の寄生発振も止まった。 1KHz の雑音歪み率を WaveGene / WaveSpectra で測定してみると、出力2V(1W/8Ω)で 0.05% ぐらいと優秀。

これでいけるかもと思ったが、音を鳴らしてみると、雑音がひどい。左チャンネルは耳に近づけるとわかる程度、右チャンネルははっきりわかる。  測定してみると、左チャンネルは 0.4mV 、右チャンネルは、1.0mV 程度。 面白いことに、たかじんさんの PGA2311 電子ボリュームの接続をやめて、アンプ入力部でショートすると、左チャンネルは 0.1mV 、右チャンネルは、0.4mV 程度まで下がる。 PGA2311 電子ボリュームでのトラブルの経験から、アースライン対策はしっかりとっている。 何が何だかわからず、たかじんさんのホームページで相談したところ、上記のようにC1を入れるのは標準的な対策ではないそうだ。 

回路図とF特、拝見いたしました。
気になった点としては、C1ですね。 アンプの+と-入力間をCで接続すると、負帰還側から+入力へバイパスされて正帰還へとなってきます。
C-amp側の帯域を制限するときは出力と-端子の間に小容量のCを入れることが多いと思います。
(この回路図でいうとTDA2030の1-3ピン間に10pF、22pF、47pFなどを入れて実験)

ノイズに関しては、ホワイトノイズ系と、飛び込みによるビートノイズ系、電源由来の
ハムノイズに分けられます。
ホワイトノイズは、デバイス依存や入力部の抵抗値、アンプのゲインで決まってきます。
ビートノイズは飛び込み自体を抑えこむ必要があります。
入力信号ラインをGND線とツイストするかシールド線を使う、金属シャシーに沿わせる、
取り回しを動かしてノイズの低いところを探すなどでしょうか。
ハムノイズは、電源トランスが近いと意外と厄介だったりしますね。 磁束漏れの大きな
トランスの場合はトランス自体を変更しなければ解消できないというケースもありました。

C1がよろしくないというのは、言われてみて、初めて気が付いた次第。 ノイズは、ツィータからも聞こえてくるので、ビートノイズかと思われたので、次の対策を立てて試してみた。

① TDA2030の1-3ピン間に小容量のコンデンサをいれてみる
② さらなる安定化のために、ゲインを 26dB に増加させる(NFBを減少させる)
③ そのうえで、周波数特性をみながら、NFBの補正コンデンサ量を決定させる。

ところが、上記の対策をしてみても、ノイズは減少しない。 それどころか、雑音歪み率特性が一桁上昇し、10kHz では波打つようになった。 0.2W で 0.5%程度まで下がるが、1W では 2% 程度に上昇したのちにまた下がり始める。 試聴すると、耳障りな音で疲れる音であり、明らかに改悪してしまった・・・

to be continued…

Class AA パワーアンプは実現できるか・・・希望の光が

先に述べたように、C1 をいれることで、方形波での発振が止まったことから、C1の容量を減らして調整を試みた。 そうしたところ、おかしなことがおこった。 C1 = 1000pF で再度発振がおこったことから、2200pF に戻したが、発振が止まらないのだ。4700pF でも 0.01μF でもだめ。 何が起こったのかわからない。 さっきまで大丈夫だった条件で何が・・・

コーヒーブレイクをいれて、再度チャレンジしたところ、今度はOK。 何か違いはと考えたところ、横着してスピーカー代わりの抵抗に、オシロの端子をつけると、発振することに気が付いた。 よく考えると、2Ch オシロの GND 通しは導通があるので、横着した接続だと、GNDオシロのプローブによって、おおきな GNDループができる。 発振の原因がわかった。

結局、上の回路図で、C1=2200pF, C2 = 82pF で 周波数特性は下記の通り。 C1 、C2ともかなりクリティカルなようすが見て取れる。 300kHz 以上の位相特性のあばれが少ないのは、C2 = 82pF である。

上記の状態での特性は悪くない。 バラックの状況であるが、雑音歪み率をとってみると、おおむね2V出力(1W)で、100Hz, 1kHz で 0.05% 、10kHz で 0.07% と悪くない。 うまくいきそうだ。 よろこび勇んで、もう1台つくってみると、同じ定数では、方形波を入力すると、けっこうなオーバーシュートが認められ、10kHz だと寄生発振が認められる。 

寄生発振の存在から、C1 の調整が必要と考え、試行錯誤したところ、C1=4700pF, C2=68pF で 下記の通りの周波数特性と也、方形波での寄生発振もなくなった。

ここまで来たら、筐体の準備が必要だ。 いろいろ考えたが、過去に作成した LM3886 アンプを解体して、シャーシのみ(タカチ HY 133-33-23SS)利用することにした。 Victor SX-700 にせよ、Linaeum A-1にせよ、LM3886 アンプでは鳴らしきれないことがわかっており、出番がなくなっていた。 解体してみると、天ぷらはんだ同然の場所が多数あった。 天ぷらはんだの原因は、こだわりの太い配線材である。 2mm スケア(AWG 14)を無理やり使っていたためだ。 当時は、これが最善で必須と考えていたのだ。

このシャーシには、入力として2系統の RCA ジャックとしており、それを踏襲することも考えたが、最近の当方の自作品は平衡入力によることも多いので、RCA1系統と平衡入力1系統とすることにした。 Balanced – Unbalanced 変換には、ぺるけ師匠の 簡易平衡→不平衡コンバータ を用いる。 この回路は、専用IC の INA134 と同じである。 Balance 入力の際には、バランス型のプリアンプを通ることが多いので、こちらは、ボリュームを通らない形にする。

to be continued…

Class AA パワーアンプは実現できるか・・・やみくもに試行錯誤編

できの悪いあたまで考えたのは、発振すると、トラッキング式定電圧電源 TEXIO GwINSTEK GPS-2303 では、マイナス電源だけが、電流オーバーフローしてしまう現象から、不具合は TDA2030L によると考えた。 もしも、MUSES 05 であったら、MUSES 05 の最大出力電流を大幅に超えた電流が流れていることになってしまからだ。

TDA2030L が発振しているのなら、入力制限をして高い周波数では反応してしまわないようにしてはという考え。 1kHz の方形波では発振しないが、10kHz の方形波では発振してしまうのだから。 

この発想で、TDA2030L の入力にハイカットフィルタをいれたのが上図。 うまくいってくれと念を込めたが、なんと出力電圧が、マイナス電圧と同じになってしまった。 むしろ改悪ということ。 回路図を今になってみなおすと、ホイートストンブリッジが崩れてしまう。 だめになるのは当たり前。

抵抗を取り外して、コンデンサだけにしたら、なんと正弦波さえ通らなくなってしまった。 どうして?  なぜか、出力の抵抗負荷(スピーカー代わり)をはずすと、正常に服する。 はんだ付け不良を疑い、ハンダ吸い取り線で綺麗にして、再はんだしてもなおらない。

一晩頭を冷やして、よく考えると、出力の抵抗負荷で駄目になるのは、TDA2030Lが働こうとして失敗していることを意味していることに気が付いた。 抵抗負荷がなければ、MUSES05 の出力で十分間に合うと考えた。 よって,TDA2030L が先の実験で破壊されたと考えて、交換したところ、元の状態に戻った。

次に考えたのは、出力に空芯コイルをいれること。 Zobel に加えて、VFA-01と同じ空芯コイルを作成して、付け加えてみた。 これをいれてみると、1kHz の方形波のオーバーシュートが少なくなり、10kHz の方形波で発振するものの、何もしなくても発振が停止するようになった。

だめもとで、TDA2030L の入力間に、直接コンデンサをつないでみた。 当てずっぼで、0.047μ の PILKOR をいれてみたら、発振は綺麗に止まった。 しかし周波数特性はガタガタ。 可聴帯域からゲインが低下している。 この手法に期待が持てるかもしれない。

to be continued…

Class AA パワーアンプは実現できるか・・・迷走編

妄想を具現化したのが上記。 ホイートストンブリッジの 33Ω は作例に従って、調整することにした。 具体的には、基板の電源を入れずにLM1875 の出力端とスピーカー側との間に適当な電流を流し、LM1875 の入力端同士の電圧が最少になるように調整する。 実際にやってみると、この調整は結構クリティカルで、デジタルマルチメータの GDM-8261A の 6 1/2 桁表示にて調整で追い込んだ。

まず最初に、±22V に耐えられる LT1115 + LM1875 にチャレンジしたところ、コンパレータ状態(出力電圧が電源電圧に張り付く)になってしまい不可。

そこで、±18V が最大電圧であるオペアンプでチャレンジしたところ、OPA627, OPA827, JRC5534D, LF357, OP117 全て駄目。 唯一 MUSES05 + LM1875 の組み合わせだけがコンパレータ状態にならずにすんだ。 正弦波をいれてみると、正常に増幅が確認できた。

ところが、周波数特性をはかると・・・ 100kHz 前後にピークをもつ珍妙な特性である。 こんな特性は見たことがない。 作例をよくみると、シミュレーションが掲載されており、それに少し似ている。 

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NFループのコンデンサとして、いろいろ試してみると、150pF 程度が妥当であることがわかる。 ピークが収まってほっとした。 位相特性のあばれが、かなり認められるが、150pF ではそれなりに安定している。

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ところが、1kHz の方形波をいれると著明なリンキングが認められ、10kHz の方形波で発振してしまった。 ここまでくると、LM1875をあきらめ、TDA2030L に変更することにする。 Class AA ヘッドホンアンプ、ミニワッターでも、こちらを利用してみることにした。 ところが少し良いだけで、状況は変わらず (T-T);

以上の実験の際には、電流リミットの設定ができる、トラッキング式定電圧電源 TEXIO GwINSTEK GPS-2303 にとてもお世話になった。 もし普通の電源で行っていたら、何個も LM1875 を破壊してしまっていたことであろう。 無信号時には、±電源とも 0.06A 程度であるが、-10dbV にて周波数特性を測るときには、0.15A 程度に増えていた。 こういう消費電流が測定できるのも、トラッキング式安定化電源の強みである。 ちなみに、発振しているときには、マイナス電源のみが電流が増加して保護が働いていたので、発振の原因は C-Amp TDA2030L 側にあることは明らかだ。 何か対策は立てられないだろうか・・・。 

to be continued…