Linaeum LS-1000 がやってきた

海外のウェブサイトや実測よりLinaeum LS-1000 の仕様は次の通り。

2スピーカー・2ウェイ 
低音部: 16 cm (6.5″)密閉型
高音部: 15 cm (6″) Linaeum driver 後面開放型
クロスオーバー周波数: 150Hz
インピータンス: 4Ω
大きさ: W275×H1010×D205(mm)
重量: 約17kg/本

The Linaeum dipolar 6" tall dual cylinder ribbon drivers, covering the entire spectrum from 200 to over 20K.Bass is handled by a single 6.5" woofer. Specs are as follows: FR: 70-18K (+/- 2.5 db) 50-20K (+/- 5 db) (the 5 db referes to the lower limit, HF extends to 20K =/- 3 db) Bass driver: 6.5" woofer in a sealed enclosure HF Driver: The Linaeum driver is in open back enclosure, as it a dipole design. Nominal impedance: 4 ohms Sensitivity: 88db/w at 1 meter Crossover frequency: 150 hz Recommended Amp power: 20-100 watts per channel Distortion: Less than 1% @ 400hz Less than .1% @ 1000hz Decreases as FR goes up. Size: 10.7" wide, 8.0" deep, 19.2" tall.
Linaeum has developed a driver the goal of which was to give all the clarity of a single line source with a usable bandwidth below 100 cycles to over 20k In the company's quest to build uncompromising speaker systems, the Linaeum brochure states: "In place of copper Linaeum Driver coils are made of pure silver to provide a more predictable and efficient response"

上記から期待したのは、海外サイトにあるように、音楽にとって主要な周波数である 100Hz 以上の可聴域を1本のリボンドライバーで再生している点である。 極端な言い方をすると、以前に使用していた Quad ESL-63 + サブウーファ的な鳴り方をするのではという期待だ。現在まで長いこと使用している Dynaudio Contour 3.3 はトールボーイ型ではあるが、Quad ESL-63 ほどとは言えないが、楽器の定位感にあふれ、音数の多いスピーカーで気に入っている。 もちろん Quad ESL-63 は大好きなスピーカーなのだが、湿気に弱いという欠点があって、長く持たなかった。 Linaeum LS-1000 は、電源を必要としないリボンドライバーなので、ESL-63 のような心配はない。 A-1 を手に入れて、その設計思想の素晴らしさを続 Linaeum Model A-1 がやってきたに記したが、LS-1000 にもそれを期待して、手に入れたというわけだ。 中古品市場でA-1 を探していた長期間にわたり、LS-1000 は1セットがずっと販売中の形で、残っていてくれた。 

我が家に到着して、バランスプリ+Soulnote ma1.0 で、リファレンスのシューマニアーナ8 を鳴らしてみると、ピアノのキータッチの差は驚くほど豊かで驚いた。 ちょいおきで聴いた瞬間に、ESL-63 の様な音場感を感じたのだ。 Linaeum A-1 をお持ちの方は、ツィーターのクロスオーバー周波数 150 Hz に落とされた・・・すなわち、ほとんどの音が、ツィーターのように鳴るといったら、イメージできるかもしれない。 ESL-63 はスピーカーの筐体の後ろにもスペースをたっぷりとる必要があって、音場はスピーカーの後方に広がるが、LS-1000 の場合は、前に広がる違いがあるだけでよく似ている。 しかし、低音にはしっかりしたウーファがあるため、ESL-63 のようにサブウーファを加えたいとはあまり感じない。

鳴らし始めて数十分したところで、LS-1000 のほうが、これまで使用してきた Dynaudio Contour 3.3 より優れているのではないかと感じ始めた。 おそるおそる比較試聴してみると、中低域は LS-1000 の圧勝である。 音数の多さといい、定位感といい、比較にならない。 ただし、高域は Dynaudio Contour 3.3 のほうが華やかできれいな感じがする。 比較試聴しなければ、LS-1000 で満足しているところだが、ハイハットの伸びや切れが Contour 3.3 のほうがはっきり良い。 悩むところだが、メインスピーカーの座は LS-1000 だ。 リビングにどう置くかを悩むことにした。 Contour 3.3 を断捨離するわけにはいかないので、他のスピーカーを手放し、LS-1000 の置き場所を確保することとした。

to be continued…

続 Linaeum Model A-1 がやってきた

入手できたのは、ウーファーのエッジがボロボロになったもの。 A-1 のエッジはウレタンエッジなので、当然ともいえる。 交換するエッジはヤフオクなどで入手できる。

スピーカー端子のところのねじをはずすと、ネットワークが取り出せる、指月のフィルムコンデンサとコイル。 さすがしっかりしたネットワークだ。

最初に困ったのは、ウーファーの取り外し。 スピーカー端子のところをはずすと、ウーファが見える。 ウーファは後面から取り付けられており、なんとかねじを外せるが、ウーファを外に出せない。 正解は、前面のサランネットを取り付けるゴムをはずすことだ。 ゴムを外すと、ねじが見えて、前面を取り外せるようになる。 気がつくのに数時間かかった(^^;) 

ウーファの裏面には、エッジのはがし残りがたくさんついている。 ポリプロピレンコーンなので、マイナスドライバでカスカスとこじり落とす。 要注意なのは、ガスケットの方で、なかなかうまくはがれない。 結局カッターナイフを切り離すしかない。 フレームにもエッジがこびりついているが、これはラッカーはがし液を使うと落とせる・・・というか、物理的に落とすことは困難だ。 ネットで購入した新しいエッジは、フレームに合うように切り落とす必要がある。 どうせガスケットで隠れる上に、最終的には全く見えないので、少々いびつでも何ら問題ない。 専用接着剤も購入したのだが、木工ボンドにしか見えないのは、気のせいだろうか。 ツィーターのほうも相似をする必要がある。 金網が張ってあるとはいえ、ホコリがたくさんたまっていた。 リボンのほうのホコリはエアダスターで軽く吹き飛ばす程度にとどめた。

充分に乾かした後に鳴らしてみると、エッジがなじんでいないのか、低音がくすんだ音だったが、数時間で鮮度の高い音に変わっていった。 知人宅で聞いたように、びっくりするほどの質・量を伴った低音だ。 この秘密はバスレフポートにあった。 

写真に示すように2本のバスレフポートの長さが異なるので、増強できる低音のピークがふたつあることになる。 このことは、仕様が全く同じの Optimus LX5 の測定結果でしっかり示されている。

Optimus LX5 インピータンス&位相特性(バスレフポートあり)

バスレフポートあり(上)では、2本のバスレフポートによるインピータンス上昇が 45Hz と 100Hz 前後で認められる。 一方バスレフポートを詰め物で完全に塞いだ、バスレフポートなし(下)では密閉箱のようにインピータンス上昇は 100Hz 前後のみで認めている。 このデータは、Stereophile の Stand Loudspeaker ReviewsRadioShack Optimus Pro LX5 loudspeaker Measurements より拝借した。

Optimus LX5 インピータンス&位相特性(バスレフポートなし)

これまで示してきたように、本機には素晴らしい特徴がある一方で、いくつかの欠点がある。 
1) かなりアンプを選ぶこと。 
 公称ではインピータンスは8Ωだが、上記の実測データは低いインピータンスを示している。 実際、分解するとツィーターは6Ω表示である。すなわち、低いインピータンスのスピーカーをしっかり駆動できるアンプでないと、まともな音が出ない。 まさか、こんな小さなスピーカーが強力なアンプを要するとは普通思わない。
2) ニアフィールドで聴くときれいに聞こえないこと。
 音場感豊かなツィーターの良さも出ないし、せっかくの低域もブーミーにしか聞こえない。
3) 部屋が広くないと本領を発揮しないこと
 ニアフィールドでよくないという欠点につながっていると思われるが、最低でも6畳程度の空間がないと、ツィーターの良さが発揮されない。 本機の長所は全方位性ともいえるツィータによる音場感の良さだが、ある程度の空間が必要だ。 同様に、ある程度の空間があって初めて、上述した長さの異なるバスレフポートによって増強された低域が生きる。 まさに、しっかり、くっきりした質の高い低音に聞こえる。
 当初、4畳半の電気工作作業部屋で本機を使う予定であったが、すっかりあてがはずれてしまった。

ところで、本機には上位機種がある。 LM-1000 である。 本機を手に入れるためにずっとオークションなどをながめていて、見つけていた。 LM-1000 は、本機の最大の特徴であるリボン型ツィーターがおおむね200Hz 以上を担うフルレンジとして活躍する。 ネット上の評判では、SOUND JULIA 店長の日記 には下記のようにある。

何ともルックスの悪いスピーカー...。
いわゆる、「ブサイク」...
(中略)
QUADの初代ESLの低域をしっかりさせた様な感じでもあるし、
説明不能な音です。

フィルム系振動板の為、
エネルギーが強く出ませんので
突き刺さる高域ではありませんが、
素直で、フラットで、上まで伸びる高域と、
密閉型ウーファーの低域が、絶妙にマッチして
聴いていると、気持ちを持って行かれてしまいます....。

不思議な音です。

かなり迷った末に、上位機種も手に入れてみることにしました。

to be continued …

Linaeum Model A-1 がやってきた

知人宅でスピーカーの Linaeum Model A-1 を聴く機会があった。 気になったのは、リボン型のツィーターを使用しており、上面がツィーターのために360°開放されていることだ。 リボン型のツィーターだけあって、音場感抜群だ。 さらに聞き込むと、小さな筐体のわりに本格的な低音が出ている。 比較された 30cm フルレンジの Altec MaLaga といい勝負をしている。

オーディオの足跡によれば、仕様は以下の通り。

方式 2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・ブックシェルフ型
使用ユニット 低域用:12.7cmコーン型
高域用:リニアムダイポール型
周波数特性 85Hz~25kHz
インピーダンス 8Ω
定格入力 50W(RMS)
最大入力 100W
外形寸法 幅160x高さ268x奥行165mm
重量 3.4kg

独自のリニアムドライバーを採用したスピーカーシステム。

高域にはリニアム・ドライバーを搭載しています。
リニアムドライバーでは直径50mm、長さ50mmの円筒形に丸められた軽量で内部損失の大きい振動巻膜を2枚使用しており、中央部で張り合わせた構造となっています。そこにボイスコイルに該当するボイスループがあり、振動膜の反対側は固定されています。ボイスループは強力なマグネットによる磁気回路の600ミクロンのギャップに挟まれています。
振動膜にはデュポン社特注品の20ミクロンのものを使用しています。この素材は裁断によらず、指定された幅と薄さで引きぬかれた精密なものとなっています。また、ボイスループは最新の耐熱素材に写真製版によって精密加工されています。
ボイスループに信号が流れるとボイスループは前後に振動します。磁気回路は前後に2組あるためボイスループはプッシュプル動作をします。この円筒形の振動膜の振幅はボイスループ部が最も大きく、反対側は動きません。この構造によってリニアムドライバーは原理的に発音源が面積を持たない線状となり、線音源として動作します。この線音源から放射される音波は理想的な広がり方を示し、優れた音場再現性を実現しています。この方式では振動膜に剛性が必要ないため分割振動が起きず、平坦な周波数特性が得られます。
リニアムドライバーでは高調波歪の発生が少なく、位相特性が平坦で過渡特性が良いという特長を持っています。また、微小入力から大入力までリニアリティが良く、インピーダンス特性が素直でアンプの負担が軽い、指向特性が広い、変換効率が高い、簡単な構造のため長寿命が得られる、有効面積が広いため混変調歪が少ないなどの数々のメリットを得ています。

低域にはポリプロピレンコーンを用いた5inch(12.7cm)コーン型ウーファーを搭載しています。

ネットワーク部には位相特性に優れたファーストオーダーのネットワークを採用しています。

エンクロージャーにはアルミダイキャストを使用しておりバスレフ方式を採用しています。

小さい割によく鳴るスピーカーだと考え、入手することにした。 当然、ヤフオクや中古サイトを見渡したが、ちょっとの差で入手できない日々が続いた・・・。

to be continued…

発振とサウンドカード

フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・また発振 で、次のように記した。

我が家では、歪み率測定・・・WaveSpectraa 覚え書きに示したようにして、歪み率測定をしている。 測定には、サウンドカードの Juli@ xte を利用しているが、これにつないだで、歪み率測定をしようとしたら、1台でDCオフセットがとれない問題が再燃してしまった。 つないだ状態でオシロで確認したところ、50MHz 帯での微小発振が認められた。

DCオフセットがとれない問題が生じたのは、接続機器が MOTU M2 のときと、ESI Juli@xte のときだ。 ぺるけさんのトランス式DAC Soulnote sd2.0 では問題が起きない。 よって、接続機器側の何らかの問題を探っておくべきだと考えた。 もちろん当方のアンプの欠点であることは言うまでもない。

すなおに問題が生じた接続機器をオシロで観測してみた。 高周波帯を調べるので、1チャンネルを測定対象に、2チャンネルはプローブをショートさせて、1チャンネルの測定対象の近くに置いた。

ESI Juli@xte の場合は、50MHz 帯のノイズが、最大で20mV p-p で認められる。 高周波帯だけあって、ショートしたプローブのほうにも結構なノイズが観測される。

MOTU M2 でも同様だ。こちらは、15MHz 程度で10mV p-p 程度である。

このようなノイズは、ぺるけさんのトランス式DAC や Soulnote sd2.0 ではもちろん認められない。

もちろん、この程度の高周波ノイズでオフセット電圧が狂うような柔なアンプでは困るが、Juli@xte は測定器として使用しているので、何らかの対策をとっておかねばと思う。 LCRフィルタだと思うが、バランスの場合はどうなるのだろう? アンバランスのをふたつ重ねるのだろうか。 調べてみよう。

フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・はらわた

私としては超弩級のアンプを作ったつもり。

(クリックで拡大)

上中央左には、300VA のトランス。 芯線があまりに太く固いので、端子板にいったん接続してからダイオードにつないでいる。 下の写真を見れば、一目瞭然。 なお、端子台に見える小さなブリッジダイオードは、フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・再度のインラッシュカレント対策への電源用だ。 なお半田付けはとてもじゃないができないので、圧着している。

(クリックで拡大)

シャーシ後面で放熱されているブリッジダイオードだ。SBRT20U100SLP を用いたブリッジダイオードは、IFSMが140Aだ。 それでも、プラス・マイナスともに、4700μF×8 の構成ということもあって、ラッシュカレント対策が必要だ。 VFA-01のアンプのPSRRを考えると、とんでもない過剰品質の電源部といえるが、趣味の世界だから・・・。
なお、右側のダイオードの右に線が写っているが、ゴミで後の除去している。

モノラル構成のBTLアンプだが、タカチHY型の放熱器付きシャーシのため、放熱はケースに直接できる。 この構成は、できあがってしまえばスタイリッシュだが、部品交換などの手間暇ははんぱない。 次に作るときには、独立した放熱器を使うことだろう。

フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・測定結果

さて、これまでの経過で、なんとか各種のデータを安定して測定できるようになった。 最終回路図は下図で、BTL接続している。 なお、図中のC5 は1台では47pF もう1台では、220pF である。 その顛末は、フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・また発振 にある。また、終段のアイドリング電流は、0.5A に設定している。 8Ω出力だと4W相当、4Ω出力では、2W相当まで、A級アンプとして作動する。 日常的に利用する出力は、0.数W程度なので、日常の使用上ではA級アンプである。 筐体の両側が放熱器になっているが、触って心地よい程度の暖かさである。 トランジスタそのものを触ってもやけどするような熱さではない。

(クリックにて拡大)

最大出力は、5%歪みで20W/8Ω、40W/4Ωを確保できた。 これについては、概ね想定通りである。 残留雑音はそのまま測って、0.07mV程度である。 以下、C5が47pF の個体をA、220pF の個体をBとして記載する。

周波数特性は、以下の通りだ。 -3dB は、Aで150kHz、Bで 120kHz 程度である。 位相特性は両方とも-125°程度までで安定しているように見える。

VFA-01 (A): 周波数特性   (クリックで拡大)
VFA-01 (B): 周波数特性   (クリックで拡大)

歪み率特性は次の通り。 両個体とも、最低歪み率は0.02%程度で、10kHz の特性は、100Hz/1kHzに比べて、やや悪い。 周波数によって歪み率特性が異なるのは、たかじんさんのオリジナルのデータでも同様だ。 ただし、歪み率特性自体は大分悪い。 これは、BTL化によるものと考える。 おおむね4倍と考えれば、妥当なレベルといえる。 奇数次の歪みはBTL化で打ち消されないからだ。

VFA-01(A): 歪み率特性
VFA-01(B): 歪み率特性

視聴しての感じは、Soulnote ma1.0 に比較して、ワイドレンジでダイナミックだ。 エレガントさは変わらないが、このアンプのほうが、ピアノのキータッチの差や、ボーカルの表情の変化がわかりやすい。この差は、最近メインスピーカーになった Linaeum LS-1000 で聴くとたいへん目立つ。 Dynaudio Contour 3.3 で聴くと、キータッチは表情の変化はわかるが、突き放した表現で、聞き込まないとわからない。 Soulnote ma1.0 もフルバランス構成ではあるが、4Ω出力の記載はない。 LS-1000は、コンデンサ型スピーカーにスーパーウーファをつけたような構成であり、4Ωの記載があることから、一般に鳴らしにくいスピーカーであるが、本アンプは4Ωギャランティーは十分であることが長所につながっているのだと思う。

本アンプの欠点は、録音(やアレンジ)の悪さをそのまま出してしまうことだ。 ma1.0 はそういう点では、一枚上手のように感じる。 一方、LPレコード(soulnote ph1.0、バランスプリ経由)で古い録音を聴いても、ノイズが目立つといったことはないようだ。

基板を頒布していただき、また適切なアドバイスを何度もいたぢあたたかじんさんに心から感謝したい。

フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・また発振

ここで、BTLアンプの状態で周波数特性を測定してみたら、Unblanced のステレオアンプの状態と異なり、周波数特性が、150kHz あたりから ±0.5dB 程度波打っているのことが判明した。 2台ともなので、再現性がある。 なんてこったい。

下図の回路図で、 R5=100Ω、C4=4700pF としたのが、悪さしているので、元に戻すことにした。 その際、1台で不安定であったことを思いだし、R5=220Ω、C4=3300pF とゲインが下がる周波数を下げることにした。

(クリックで拡大)

C9を 3pF 程度が適正で、5pF だと過剰補正気味だとのことであったが、1台でDCオフセットが不安定であったことから、C9は 5pF としたところ、DCオフセットが安定してとれるようになった。 視聴でも特に問題はなかった。

これにて、一件落着と思われたが、そうはいかなかったのだ。 我が家では、歪み率測定・・・WaveSpectraa 覚え書きに示したようにして、歪み率測定をしている。 測定には、サウンドカードの Juli@ xte を利用しているが、これにつないだで、歪み率測定をしようとしたら、1台でDCオフセットがとれない問題が再燃してしまった。 つないだ状態でオシロで確認したところ、50MHz 帯での微小発振が認められた。 正直困り果ててしまった。 

対策はもちろん超高域でのゲインを下げるしかない。 試行錯誤で、上図の C5 を増やしたら安定化の方向に働いた。 結果的に、220pF まで増やしたところで、安定してゆがみ率測定ができるようになった。

たかじんさんによれば、C5 は 100pF を超えるとスルーレートが下がるので、あまりよろしくないとのことだが、私の力量では、やむを得まい。 また、私の駄耳では、C5を増加させた対策での音質変化はよくわからなかった。

フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・再度のインラッシュカレント対策

前項で完成と思いきや、思わぬところから、改良案が示された。 それは、たかじんさんのホームページで、VFA-01用のトランス電源についてのコメントからだ。 

私は、フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・片チャンネル音出しまでに示したように、トランスの二次側にインラッシュカレント対策をとればよいと考えていた。 この方式のオリジナルは、フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・構想編 に述べたように、お気楽オーディオキット資料館にある手法である。 Google で、ラッシュカレント対策 アンプ で検索すると、トランスの二次側に抵抗を入れておき、時間がたったところでリレーで抵抗をショートする形のページがたくさん出てくる。

たかじんさんのホームページで、ラッシュカレントに対する質問があり、上記のことをコメントしたら、たかじんさんから下記のようにご教示いただいた。 (太字、赤字は n’Guin)

たかじんさん wrote:
インラッシュ電流が厄介になるなのは、1次側に入れたヒューズが適切に働くかどうか、です。
トロイダルやRコアトランスの場合、EIコアに比べてインラッシュが大きくなります。安易にヒューズ容量を大きくすると、何か回路に問題が起きたときに保護できなくなります。
そこで登場するのがヒューズに直列にいれるスロースタート回路です。 抵抗とリレーを使うのは、お気楽さんのところで紹介されているのと同じです。1次側は電流値は小さく済みます。(2次側が1次側よりも電圧が低い回路の場合)
整流後のコンデンサの容量は、大きければ大きいほど整流ダイオードへの負担が増えますが、これはインラッシュ電流に耐えるダイオードを選択するのが適切です。 また1次側にスロースタートを入れると2次側にも影響があるため2次側のインラッシュ電流も下がります。
±電源をもつ回路で2次側に入れるスロースタート回路は2系統必要、かつ、大電流が流れるのでリレーの接点も傷みやすくなります。 それに対して1次側なら1系統のみでOK、かつ、2次側よりも電流は小さくなります。また、 万一、スロースタート回路が壊れたとき、ヒューズが切れるかONしないかのどちらかに落ち着きます。2次側スロースタート回路が壊れた場合は±電源のバランスが崩れ、最悪アンプ回路を壊してしまいます。
以上が一般的なインラッシュ電流対策の意味とスロースタート回路の位置です。(もちろん様々な理由により例外はあると思います)

よって、またしても回路変更。 SBRT20U100SLP を用いたブリッジダイオードは、IFSMが140Aだ。整流電圧は ±14V 程度で、巻き線抵抗は 0.03Ω程度なので、整流ダイオードに流れるインラッシュ電流は、500A程度に達する可能性があるのだ。 すなわち、インラッシュ電流に耐えられない可能性が高い。

現在、5Aのヒューズを用いているので、一時的な制限抵抗は、100V/5A で20Ωと仮定しよう。 このときの、二次側電流は計算上24A 程度になるはず。 整流ダイオードは余裕で耐えるであろう。 問題は、20Ωの抵抗の消費電力である。 定常状態では0.3A弱であることが測定してわかったので、消費電力は1.8W。 よって、10Wのセメント抵抗なら約5倍のディレーティングが得られるので大丈夫であろう。

(クリックで拡大)

そして、この修正作業を行っているときに発見! 

破損したトランジスタのエミッタ抵抗が割れていた。 トランジスタを交換したときには、壊れていなかったのに。 このタイプの抵抗は巻き線抵抗にセメント被膜がついているので、発熱している間に巻き線の金属が膨張して割れていったものと思われる。 気がつけてよかった。

フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・再調整

ここで、たかじんさんから、アドバイスがあった。

(クリックで拡大)

C9を 3pF 程度が適正で、5pF だと過剰補正気味だとのことだ。 こういうところは、設計者でないとわからない ^^;)

また、C4/R5の位相補正は、2SK170でゲインが上がったところを、負荷抵抗の差動部分で殺してしまうのはもったいない対策とも言えるが、低域では依然ハイゲインの特徴が残るので、DCオフセット低減、PSRR向上が望めるそうだ。

そして、R5を小さくすれば、ゲインを下げる効果があるとのことで、今回の場合は、R5を100Ωまで下げる(その代わり、C4を同じ時定数になるように増やす)ことを勧められた。

現時点では、R5が220Ωで、C4を 2200pF 、C9を 5pFであったので、C9を 3.3pF に戻し、R5を100Ω、C4を4700pF としてみた。

この条件で、より安定して動作することがわかってきた。 すでに完成したはずのチャンネルも同じ条件に修正することにした。

周波数特性や位相特性はより一層素直になった。

喜んで視聴にすすんだが、なぜか音の方はつまらない感じに。 おとなしすぎる感じで、よく聞けばワイドレンジだが、ダイナミックレンジが狭まったような。

対策はいろいろあるが、最も簡単なのは、バイアス部のコンデンサ C6 の変更である。 バランス型プリアンプのフラットアンプでも、このC6 で音決めをしている。 今回の場合は、おとなしすぎる感じなので、100μF (音響用電解コンデンサ)から減らすことになる。 バランス型プリアンプのフラットアンプで採用した、10μF のフィルムコンデンサ(Panasonic ECQE)を利用することとした。

結果は大当たり。 ワイドレンジ感もダイナミック感もよい。 初段の 2SK170 らしいエレガントさも失っておらず、とてもよい感じだ。

これにて作成終了。 あとは特性を測って確認・・・とは問屋が卸さなかったりする。

… to be continued.

フルバランス・フルディスクリートアンプへの長い道のり・・・焼損

片チャンネル分が完成したから、もう片チャンネルは楽勝・・・とはなりませんでした。

完成した片チャンネルと同じくC4を 2200pF として、C9を 3.3pFとすればうまくいくはずだったのに、全くだめ。 スピーカー出力のオフセットが全く調整できない。 また発振かと思い、オシロで確認したら、ハムノイズが観測された・・・。 入力オープンが理由だったというわけ。

(クリックで拡大)

そこで周波数特性を測ってみたところ、周波数特性はまずまずだが、位相特性がとんでもないことになっていた。 そして、これを測定中に焦げ臭いにおいがたちはじめた。 測定しているチャンネルを見ても、触っても異常がない。 なんと、測定していないチャンネルの終段トランジスタが焼損した。 入力をオープンのままにしていたため、あおりを受けて発振したのであろう。 なんてこったい。

幸い、交換するトランジスタ類は買い置きがある。 3段ダーリントンを盲目的に全て交換し、たかじんさんからのアドバイスもあり、抵抗値が変わっていないことも確認した。 全て交換して,問題は解決したが、入力オープン程度で焼損するようでは困る。

ここでもたかじんさんからアドバイスがあり、入力にボリュームをつけないなら、入力抵抗を 4.7~10kΩ 程度にしたほうよいとのこと。 47kΩにしてあるのは、その前に10kΩ程度のボリュームをつけることを想定しているそうだ。 トランジスタアンプだとそんなものかと軽く考えたが、よく考えてみると、このアンプとペアになるプリアンプは、スピーカー負荷が普通に可能な HPA-12 である。 8Ω負荷が可能なアンプからの入力抵抗が47kΩっていうのは、いくらなんでも高すぎる。 4.7kΩだって高いぐらいだ・・・。

さて、ここで気を取り直して、再度 C4と C9を取っ替え引っ替えしてみたところ、C4を 2200pF 、C9を 5pFで、まずまずの周波数特性をえるることができた。

BTL化した周波数特性も、すでに完成した片チャンネルとほぼ同じだ。 これにて、とりあえず、視聴してみる。 リファレンスの「シューマニアーナ 8」(FOCD9328)シューマン:ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 Op.14 の冒頭の数十秒で、ピアノのキータッチ饒辺かがわかるかどうかを聴いたところ、一聴して合格。 これにて完成か・・・

… to be continued.