フルバランス・フルディスクリートアンプへの修理・・・また発振だった

フルバランス・フルディスクリートアンプの左チャンネルが、バランス型プリアンプの改良で故障してしまった。 この故障は、フラットアンプの±電源のうち、+電源が供給されなかったために、出力にDCが出力されたためと思われる。 幸いにして、スピーカーは、保護回路基板のPRT-01 によって、影響を受けなかった。

この原因は、フラットアンプ NBBA-1 の出力のコンデンサをフィルムコンデンサと電解コンデンサを並列接続しており、逆電圧がかかったことが理由として考えられる。 ある機械の故障が他の機械の故障につながるというのは許容できないと私は考える。 よって、このような形式になっていた Blue Snow DACバランス型プリアンプの NBBA-1 の出力から電解コンデンサを除去することとした。 電解コンデンサの除去によっても、低域のカットオフ周波数が 1Hz 以下になることを確認した。 音質的な変化としては、低域の余裕度が犠牲になると思われたが、私の環境では、高域の変化のほうが圧倒的に大きかった。 高域の雑味が取れた感じというのが一番の変化であった。 ただし、我が家はメインシステムが、左右別サブウーファ付きという点が一般的ではないので、他の環境では別の結果となるかもしれない。

さて、フルバランス・フルディスクリートアンプの修理の方だが、VFA-01 の BTL 構成であり、片チャンネルがバイアス電流を上げられず、オフセット電圧を調整できなくなっていた。 実験用トラッキング電源で、±12V を供給し、各トランジスタのBE電圧が 0.6V になっていないトランジスタは壊れていると考え、交換することで修理が完成するだろうと考えた。

最初に見つかったのは、終段の 2SA1186 の故障であったため、その3段ダーリントントランジスタを全て交換した。 ところが、相変わらずオフセット電圧の調整が極めて不安定のままだ。 出力は、-10V からほんの少し回しただけで、+1.7V 程度となり、その後ゆっくりと +1.4V ていどまで低下する。 右に完全に回すと+4V程度になる。 DC Offset が +1.5V 程度であれば、バイアス調整が可能になる。
しかし、DC Offset がマイナスになると、バイアス調整が全く取れず、電流が流れない。

たかじんさんによる ±12V 電源 での動作時の各所の電圧 を参考にして故障した実機の電圧は下記の通り。

クリックで拡大: ただし、初段は 2SK170 である

これをみると、差動2段目があやしいかもしれないと考え、電流負荷も含めて全て交換するも、全く変化がなかった。 DC入力された、FET(2SK170)の故障を考えて、こちらも交換したが、変化がなかった。 念のために、電源を入れずに、全ての抵抗を確認したが、これまた異常がなかった。 交換していないのは、2SC2837 の3段ダーリントンのみとなってしまったので、だめもとで交換したが、これまた変化がなかった。

オシロであたってみると、オフセット電圧がマイナスのときには、40MHz 帯で発振していた(下図)。 オフセット電圧ガプラスになると、1MHz 帯での発振に変わる。

こうなると、初段の出力間のCR(下図の C4, R5)、2段目のベースに接続されたC(C5)を丸ピンソケットにして、各種の値を差し込んで試みてみたが、一向に改善されない。

たかじんさんに相談してみると、3段ダーリントンのベースのコンデンサ(C7, C8)の増量や、ベースにいれた抵抗の増加も考慮してはとのことであったが、C7, C8 を1000pF 程度まで増加しても,発振の状況は変わらなかった。 調整のしすぎで、半固定抵抗が不安定になってしまい、これも交換した。 

(クリックで拡大)

かくして、困ってしまった私だが、たかじんさんも新作の VFA-34 では発振で苦労なさっていた。 この記事のコメントで、ボード線図の測定が提案されており、私もやってみた。 

クリックで拡大

驚くなかれ、400kHz に急峻なピークがある。 このようなピークは、NFBループのコンデンサで解決すべきと考え、たかじんさんの推奨の 3pF から、6.8pF に増量したところ、このピークは消え、オフセット電圧の調整、バイアス電流の調整もきくようになった。 一番よかったのは、R5=100Ω / C4=1000pF であった。 念のために、ひずみ率特性を測定し、従前と変わらないことを確認した。

フルバランス・フルディスクリートアンプの修理での教訓は、基本に忠実であれということにつきる。 トランジスタアンプの場合、自分で設計する技量がないので、回路の理解が十分ではないこともあって、わからない/予想外となると、たかじんさんに安易に質問してしまう悪い習慣がついているようだ。 ぺるけ師匠の「Tips &トラブルシューティング・ブック」にある「手を動かす前に頭を使え」である。 今回は、問題がない部品をたくさん交換してしまった。 交換してしまったトランジスタは、HFE 測定後に再利用したい。

追伸: 本来の予定では、NNBA-1 の換装 した後に、Panasonic Audio Analyzer VP-7723A を購入したので、安定した測定が可能になった報告で終えるつもりだった・・・

バランス型プリアンプを改良したい・・・問題切り分けと解決

困ったときのたかじんさん頼み・・・とお定まりの道を歩んでしまった。 彼のアドバイスは次の点にまとめられる。

※ マイコンは明らかに壊れている
※ MUSES72320 の故障が、マイコンを巻き込んで壊すことがあり得る
※ MUSES72320 は電源が入っていないときの過大入力で壊れることがある(0.1V程度の入力で動作確認を)
※ 半田付けの確認はとにかく入念に

私は、わかりやすいように 2V(rms) の入力をいれて、動作確認をしていた。 どうやら、動作確認のたびに、MUSES72320 を破壊していたらしい。 さらに、MUSES 72320 を壊してしまった結果として、マイコンまで壊してしまったらしい。 マイコンが壊れていると言うことは、それと接続されている、SEL-12 上の SN74HC594 をも壊してしまっている可能性が高い。 マイコンはたかじんさんにお願いして、2個購入させていただいた。 MUSES 72320 は再発注した。 SN74HC594 は DIGIKEY から購入した。 

修理にあたって、最小限の構成で動作することの確認から始めた。
① VOL-12 のみを電源に接続して、新しいマイコン、MUSES 72320 の貼り替えを行って動作確認する。 MUSES 72320 をはがしたら、CRの容量をテスタで確認する。 MUSES 72320 のはんだ付けにあたっては、拡大レンズ下でたかじんさんの手法を忠実に守り、そのうえでミラーレスカメラで等倍撮影可能なレンズにて撮影し、確実なはんだ付けとブリッジがないことを確認する。 動作確認には 0.1V(rms) の入力電圧で行う。
② VOL-12 の動作を確認できたら、同様に VOL-01 の動作確認を行う。
③ SEL-12 については、SC74HC594 を張り替えてから行う。

体力・気力が充実した休日に以上の手順でがんばったところ、VOL-12 ではチップコンデンサの不良が、VOL-01 ではチップ抵抗の不良が見つかり、交換を要した。 MUSES 72320 を張り替えて動作が確認できたときの喜びといったら。

クリックで拡大

これで万事解決と思いきや、SEL-12 は動作が不確実で、動作したりしなかったりしていた。 動作していないときには、リレーに電圧がかかっていなかったので、駆動トランジスタが不良になりかかっていると判断して、全てのトランジスタを交換した。 これで無事解決と思ったら、リレーがひとつ動作しなくなっていた。 はんだ吸い取り器で、リレーを除去しようとしたが除去できず、やむを得ず、リレーの方を破壊して交換した。 なかなか破壊できず、基板を壊しそうになって、冷や汗をかいた。

かくして、バランス型プリアンプは無事に復旧した。 復旧にはおよそ2か月を要した。 あとは、VFA-01 の復旧だが、これはトランジスタの BE電圧をみれば、壊れたトランジスタがわかるはずだから容易であろうと・・・

to be continued…

バランス型プリアンプを改良したい・・・修理をしたがどんどん悪化

MUSES 72320 をさっそく秋月電子に発注して、交換することを考えた。 なんと、MUSES 72320 は在庫限りになっていた。 とりあえず4個購入した。

MUSES 72320 を張り替えれば、治るだろうという読みである。 0.65mm ピッチの SSOP32 をはがすところから。 太いより線にたくさんハンダをのせて、D型のこて先で熱すると、ほどなく MUSES72320 がはがれた。 いつものように、MUSES72320 を半田付けして、治ることを期待したが、全く駄目である。 発振器で入力して、オシロで確認しても、全く動作している様子がない。

NBBA-1 の不都合が生じたのは、左チャンネルのみなので、測定環境の問題を疑って、右チャンネルを確認したら、なんと右チャンネルも動作しないではないか! そのまま調べてみたら、MUSES72320 の電源ラインが故障している。 -電源が出力されていない。 取り急ぎ、三端子レギュレータで即席の ±12V 電源を準備して、つないでみた。 残念ながら、両チャンネルとも動作していないことがわかったのみであった。 NBBA-1 の電源不良がもとになって、全部駄目になってしまったのだ。 

あせるとろくなことはないと考えて、日をおいて、チェックのし直しをした。 現時点で、SEL-12 は不安定ながら動作しているので、マイコンはかろうじて動作していると思われる。 MUSES 72320 は VOL-12, VOL-01 ともに動作不良であることがわかった。

よって、MUSES 72320 を両方とも張り替えて、再度チャレンジしたが、動作不良はあいかわらず。 くわえて、SEL-12 も動作しなくなってしまった。 何故だ・・・・?

どんどん動作不良がひどくなっていく。 もはや修理不能? そうなると、リモコンで動作可能なボリュームを再度作成したいが、そのような基板があるのだろうか? VOL-12/-01、SEL-12 は既に廃版なのだ。

to be continued…