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Linaeum LS-1000 にスーパーツィータ・・・測定

スピーカーの周波数特性の測定法は、こちらなどに詳しい。 要するに WaveGene で必要なスィープ音源を作り、WaveSpectra で Overlay 表示させればできあがり。 今回の目的では低域を測定する意味はないので、時間の節約のため 1kHz ~80kHz のみを測定している。 よって下記の周波数特性は相対的な比較であり4kHz 以下は意味がない。

スーパーツィータなし(クリックで拡大)

上図はオリジナルのままで、スーパーツィータなしの周波数特性だ。 30kHz 程度まで帯域が確保されているが8-9kHz あたりにディップがある。

正相接続、エンクロージャ前面からスーパーツィータのケースが一致(クリックで拡大)

エンクロージャとスーパーツィータのケースの前面を一致させて測定したのが上図だ。8-9kHz のディップがやや解消され、帯域が50kHz 程度まで伸びているのがわかる。

正相接続、エンクロージャ前面からスーパーツィータのケースを1cm後退(クリックで拡大)
正相接続、エンクロージャ前面からスーパーツィータのケースを2cm後退(クリックで拡大)
正相接続、エンクロージャ前面からスーパーツィータのケースを3cm後退(クリックで拡大)

ここでは、正相接続でスーパーツィータのケースを1cm ずつエンクロージャ前面から後退させた図(1~3cm)を示した。 2cm 後退させたときがもっとも平坦な特性にみえる。提示しないが 1.5cm / 2.5 cm も測定して比較しているが、2cm がベストだ。

逆相接続、エンクロージャ前面からスーパーツィータのケースを1.5cm後退(クリックで拡大)
逆相接続、エンクロージャ前面からスーパーツィータのケースを2cm後退(クリックで拡大)
逆相接続、エンクロージャ前面からスーパーツィータのケースを2.5cm後退(クリックで拡大)

ここまで測定してから、同条件で逆相接続してみる。 スピーカー本体のプラスから、スーパーツィータのマイナスに接続する形だ。 コンデンサ一本の 6dB/oct のネットワークだと、正相のほうが良いことが多いが、12dB/oct のネットワークだとチェックしてみないとわからない。

結果は正相接続より逆相接続のほうが、10-20kHz のピークがおさえられ、2m が8-10kHz のディップも押さえられるようだ。 ここでは、-1.5 ~ -2.5 cm のデータを示した。 以上から、私の選択は、-2.0 cm で逆相接続である。

MJ 無線と実験の著明な著者によれば、「オーディオは測定器の奴隷ではない」そうだが、そういう方からみたら、私は測定器の奴隷にみえることだろう。 今回の例で言うと、正相接続で1cmあたりだと、他の条件だと聞こえない音が聞こえて、「すごい」ってなりがちだ。 私の経験では、そういう音は音楽のジャンルによっては、聴くにたえない音を鳴らしてしまい、がっかりすることが多い。今回の 逆相接続 -2cm の条件は、さえない音に最初は聞こえるが、聞き込むにつれて、オールラウンドプレーヤーであることがわかってくる。

追伸: 私の感覚だと、測定器はいらぬトラブルを探し出してくれる装置にみえる。

Linaeum LS-1000 にスーパーツィータ・・・下準備

Linaeum LS-1000 をメインスピーカーとして使うには、高域の華やかさがもう少しあるとうれしい。 Linaeum A-1 ではそういう不満はない。 考えることはひとつだ。 LS-1000のフルレンジと同じ構造のドライバである Linaeum A-1 のツィーター部をLS-1000のスーパーツィーターとして使うことだ。 このやり方でうまくいく可能性があるのかどうかを確認したい。

Linaeum A-1 のツィーターを LS-1000 の上にのせて、コンデンサ1本の 6dB/Oct ネットワークでつないでみる。 面白いことに、1µF でつないでも、それなりの変化がある。 1µF だと計算上のクロスオーバーは、26.5kHz だ。 可聴帯域ではないにもかかわらず、ハイハットの切れが増したように聞こえる。 

コンデンサを増量して1.47μFに(1μFと0.47μFを並列)すると、計算上のクロスオーバーは 18kHz になる。 ハイハットの切れが増すのはもちろんのこと、高域の質感が向上したような気がする。 ただし、この状態では、中低域の華やかさに負けている。 さらにコンデンサを増量して、2.2μF にすると、華やかさという点では、やっとバランスする感じに聞こえる。 ただし、この場合は高域が量的に多すぎる感じは否めない。

2.2μFだと、クロスオーバー周波数は 10kHz だが、6dB/Oct なので、数kHz の領域まで音が出てしまっている。 実際スピーカーに近寄ると、スーパーツィーターが鳴っている感じがわかってしまい若干の違和感がある。

この欠点をなくすためには、ネットワークを 12dB/Oct にすれば良い。 計算してみると、クロスオーバー周波数を 10kHz にするなら、コイルが1mH、コンデンサが1.47μFあたりでよいようだ。 試聴してみると、かなり良い感じだ。 よって、Linaeum A-1 のツィーター部を LS-1000 のスーパーツィーターに使うことは決定。 むき出しだとせっかくの振動板を壊しそうに思い、カバーの一部を切り取り、配線を外に出すことにした。クロスオーバー周波数10kHz/12dB/Oct のネットワークは端子板にはんだ付けして、車用の両面テープで固定した。 

この先の作業としては、スーパーツィーターを置く位置の決定である。 LS-1000の上に置くのは当然だが、前後の位置決めが必要である。 10kHz の波長は、3.4cm であることを考えると、センチ単位で決定する必要があるだろう。 こうなると、自分の駄耳での判定では心許ないので、周波数特性を測定する必要がある。

スピーカーの周波数特性の測定は、いつもアンプの歪み率測定で使用している WaveGene と WaveSpectra で可能だ。 ただし、測定にはそれなりのマイクが必要だ。 また、周波数特性が良いコンデンサマイクを使用するためには、ファントム電源に対応したマイクアンプ・・・DTM で利用されるオーディオインターフェースが必要と言うことだ。

周波数特性が良いコンデンサマイクだが、本格的な製品は数十万円の予算が必要だ。 私は廉価だが評判の良い Dayton Audio の EMM-6 を入手した。 必要とあれば、周波数特性の更正データでキャリブレーションをかけることもできる。

オーディオインターフェース選びは、いろいろ考えたが、聴き専に評判が良い MOTU M2を選ぶことにした。 M2 は DAC にESS Sabre32 を搭載している。 測定が終わってからも、バランス出力が可能なDACとしても使えることだろう。

to be continued…

Linaeum LS-1000 がやってきた

海外のウェブサイトや実測よりLinaeum LS-1000 の仕様は次の通り。

2スピーカー・2ウェイ 
低音部: 16 cm (6.5″)密閉型
高音部: 15 cm (6″) Linaeum driver 後面開放型
クロスオーバー周波数: 150Hz
インピータンス: 4Ω
大きさ: W275×H1010×D205(mm)
重量: 約17kg/本

The Linaeum dipolar 6" tall dual cylinder ribbon drivers, covering the entire spectrum from 200 to over 20K.Bass is handled by a single 6.5" woofer. Specs are as follows: FR: 70-18K (+/- 2.5 db) 50-20K (+/- 5 db) (the 5 db referes to the lower limit, HF extends to 20K =/- 3 db) Bass driver: 6.5" woofer in a sealed enclosure HF Driver: The Linaeum driver is in open back enclosure, as it a dipole design. Nominal impedance: 4 ohms Sensitivity: 88db/w at 1 meter Crossover frequency: 150 hz Recommended Amp power: 20-100 watts per channel Distortion: Less than 1% @ 400hz Less than .1% @ 1000hz Decreases as FR goes up. Size: 10.7" wide, 8.0" deep, 19.2" tall.
Linaeum has developed a driver the goal of which was to give all the clarity of a single line source with a usable bandwidth below 100 cycles to over 20k In the company's quest to build uncompromising speaker systems, the Linaeum brochure states: "In place of copper Linaeum Driver coils are made of pure silver to provide a more predictable and efficient response"

上記から期待したのは、海外サイトにあるように、音楽にとって主要な周波数である 100Hz 以上の可聴域を1本のリボンドライバーで再生している点である。 極端な言い方をすると、以前に使用していた Quad ESL-63 + サブウーファ的な鳴り方をするのではという期待だ。現在まで長いこと使用している Dynaudio Contour 3.3 はトールボーイ型ではあるが、Quad ESL-63 ほどとは言えないが、楽器の定位感にあふれ、音数の多いスピーカーで気に入っている。 もちろん Quad ESL-63 は大好きなスピーカーなのだが、湿気に弱いという欠点があって、長く持たなかった。 Linaeum LS-1000 は、電源を必要としないリボンドライバーなので、ESL-63 のような心配はない。 A-1 を手に入れて、その設計思想の素晴らしさを続 Linaeum Model A-1 がやってきたに記したが、LS-1000 にもそれを期待して、手に入れたというわけだ。 中古品市場でA-1 を探していた長期間にわたり、LS-1000 は1セットがずっと販売中の形で、残っていてくれた。 

我が家に到着して、バランスプリ+Soulnote ma1.0 で、リファレンスのシューマニアーナ8 を鳴らしてみると、ピアノのキータッチの差は驚くほど豊かで驚いた。 ちょいおきで聴いた瞬間に、ESL-63 の様な音場感を感じたのだ。 Linaeum A-1 をお持ちの方は、ツィーターのクロスオーバー周波数 150 Hz に落とされた・・・すなわち、ほとんどの音が、ツィーターのように鳴るといったら、イメージできるかもしれない。 ESL-63 はスピーカーの筐体の後ろにもスペースをたっぷりとる必要があって、音場はスピーカーの後方に広がるが、LS-1000 の場合は、前に広がる違いがあるだけでよく似ている。 しかし、低音にはしっかりしたウーファがあるため、ESL-63 のようにサブウーファを加えたいとはあまり感じない。

鳴らし始めて数十分したところで、LS-1000 のほうが、これまで使用してきた Dynaudio Contour 3.3 より優れているのではないかと感じ始めた。 おそるおそる比較試聴してみると、中低域は LS-1000 の圧勝である。 音数の多さといい、定位感といい、比較にならない。 ただし、高域は Dynaudio Contour 3.3 のほうが華やかできれいな感じがする。 比較試聴しなければ、LS-1000 で満足しているところだが、ハイハットの伸びや切れが Contour 3.3 のほうがはっきり良い。 悩むところだが、メインスピーカーの座は LS-1000 だ。 リビングにどう置くかを悩むことにした。 Contour 3.3 を断捨離するわけにはいかないので、他のスピーカーを手放し、LS-1000 の置き場所を確保することとした。

to be continued…