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6R-HH2 全段差動ミニワッターを平衡入力に改造・・・トラブルシューティング

前段回路の基板を取り出し、実験用電源につないで、電圧測定をしてみると、両チャンネルともバイアス調整ができない。 どこかが壊れているのだろう。 電圧をチェックしてみると、ひとつを除いて2SC2240GR の BE間が 0.6V前後から大きく外れていた。 これは壊れていると考えて交換したところ、当初正常だった側ではバイアス調整は可能となった。 最初に異常になった側はバイアス調整が出できない。 ぺるけ師匠が頒布してくださった貴重な 2SK117 の異常がないことを願って、発振器で入力しながら、オシロであたってみたら、なんと 2SK117 に信号が届いていない。 どこで途切れたかを探すとグリッド帰還抵抗であった。 はんだ付け不良である。 はんだを吸い上げて、再はんだしたら、バイアス調整が可能になった。 オシロで調べた限り、発振はしていなかった。

先の失敗の経過では、当初正常動作していたチャンネルも、壊れていったところから、何らかの設計不良があると考えざるを得ない。 ここでぺるけ師匠の平衡プロジェクトの記事を確認すると、FET差動バランス型ヘッドホンアンプが、この改造と同じタイプ(第1案)であることがわかった。 よく比較してみると、RNF の先のスピーカー(ヘッドホン)側を抵抗でアースに落としている。 第2案の場合は、NFの基準抵抗がアースに落ちている。 失敗した改造案では、2SK117 のゲートの電位はアッテネータを通してのみアースに接続されている点が大きく違っていた。 想像するに、スピーカーあるいはトランスからの逆起電圧が加わった際に不安定になったのではないだろうか。

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恐る恐る、電源をいれてみる。 何も起こらないことを確認して音を出してみると、問題ないように見える。 加えて、バイアス調整もきちんと働く。 よかった~。

さっそく、Analog Discovery で周波数特性などを図ってみると、NF量が上記の案では、NFが十分かかっていないことがわかって、NFR を 27kΩに変更して、NFC の調整をしてみた。

NFCなし(黒)では、500kHz の盛り上がりが目立つ。この盛り上がりは 10pF(橙)でも改善しないが、22pF(青)ではだいぶ解消される。 しかし容量を増やして 47pF(緑)とすると、また盛り上がりが目立つようになる。 グラフの生データをみると、NFCなしでは可聴帯域の 15kHz付近 で0.3dB程度盛り上がり、 10pF(橙)でも改善しない。 47pF(緑)ではさらに目立つ結果となった。 つまり、22pFが最適値だ。

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6R-HH2 全段差動ミニワッターを平衡入力に改造・・・改造失敗

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さっそく上記のように考えて、改造してみた。 5kΩの4連ボリュームはないので、この部分はアッテネータにしてある。 音出しをしながら、NFが正しくかかることを確認してバイアス調整をしたところ、片チャンネルで調整がうまくできない。 そうしているうちにバイアス調整ができないチャンネルの音が出なくなり、あれっと思っているうちに、煙がでてきた。 急いでコンセントを引っこ抜いて、焼損した場所を特定しようとしたが、どこもない。 電源電圧を確認しながら電源を入れると正常である・・・ どうしたのだろうかと考えているうちに、また煙が出て、トランジスタ側の電圧が出なくなった。

よく見ると2SK3067のゲート抵抗が焼損していた。 ゲート抵抗と2SK3067 を交換して、正常側だけつないで電圧測定をして、故障側の参考にしようとしていたら・・・ なんと、ヒューズが切れてしまった。 今度は、真空管側の2SK3067 が焼損していた。

こうなると、すべてダメということになる。 ぺるけ師匠のページには、前段回路が類似している6DJ8全段差動ミニワッターでは原因不明の発振に見舞われたとある。 やはりだめなのか。 この日は電源回路のすべての半導体を交換して、正常な電圧がでるのを確認して、寝た。 少し頭を冷やさないと。

6R-HH2 全段差動ミニワッターを平衡入力に改造・・・改造にむけて

電気工作作業部屋用のアナログ対応のプリアンプが完成した。 このプリアンプはバランス出力なので、この部屋で使っている6R-HH2全段差動ミニワッターを平衡入力に改造することにした 。

ぺるけ師匠の平衡プロジェクト平衡型6N6P全段差動プッシュプル・ミニワッターにあるように、NFBのかけ方が異なるだけなので、改造は容易だろうと考えた。 考え方としては下記の二通りがあり、第1案のメリットは挿入損失が小さい(-1dB)ことがあげられる。第2案での挿入損失は -6dB と大きい。そのかわり、第1案の場合、NF抵抗が390kΩと大きく固有の浮遊容量が大きく、NFBが安定にかからないかもしれない。第2案はこの点が改良されており、ぺるけ師匠は、平衡型6N6P全段差動プッシュプル・ミニワッターでは、第2案を採用している。

第1案(クリックで拡大)
第2案(クリックで拡大)

我が家の場合は、ぺるけ師匠がご使用のような真空管式プリアンプはないので、入力インピータンスを下げても問題がない・・・というか、下げたほうが様々な点で有利である。 Multichannel 環境で愛用している SOULNOTE sa1.0 も XLR環境の入力インピータンスは 10kΩである。 よって、我が家では、入力インピータンスを下げたうえで、第1案でいってみることにした。 

(to be continued…)

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・特性とはらわた

フラットアンプの周波数特性は下記の通り。 実は左右とも全く同じである。 歪み率特性は省略。 なぜなら、WaveGene/WaveSpectra での測定の測定限界以下の部分がほとんどを占めており、100Hz / 1kHz / 10kHz ともに、0.01%の測定結果が長く続く。 測定した意味がないというか。

左チャンネル(クリックで拡大)
右チャンネル(クリックで拡大)

イコライザアンプのほうだが、RIAA偏差はもともとの基板が、20~20kHz で ±0.2dB 程度の偏差であり、そこからバランス化して、0 – 0.15 dB になるように調整している。 すなわち、RIAA偏差は問題にならないはず。 加えて、アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・フォノイコライザーのサブソニックフィルターとバランス対応で示したように、15Hz以下はしっかり落としてある。

イコライザアンプのS/N比を測定してみた。 DENON DL-103 をつけて、ボリュームを最大にしたところでの雑音電圧は、左 0.40mV(rms)、右 0.33mV(rms) であった。 アンプは 69dB のゲインなので、入力換算では計算上左 0.12μV、右 0.14μV である。これをdbV換算すると左 -138.4dBV、右 137.0dBV である。 A-weighting補正なしの数字であることを考えると、すばらしいといいたい。 実際、フルボリュームにしても、ノイズは皆無だ。

はらわたは下図。 左側に電源部、右側にイコライザアンプ、その間に、VOL-12&VOL-01、SEL-12 と ClassAA フラットアンプが、所狭しと並んでいる。 シャーシアースはフラットアンプの左側の縦ラグで、アナログ用GNDから得ている。 なおタカチのケースはアルマイト加工してあるので、そのままではケースの各部品間の導通はない。よって下図のように、アルマイト塗装をはがしてきつくねじ止めして、確実にアースされていることを確認する必要がある。

天板のアースをとる前に撮影、クリックで拡大

SONY SRP-D2000互換のパワーディストリビュータと一緒に使用。 前面にTRSジャックとRCAジャックの入力3がある。右の黒いつまみはボリューム。 赤い押しボタンはメニューボタン。 一番右の黒の押ボタンが MC/MM切り替えで、その上にインジゲーターがある。

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・やらかしたこと

今回もいろいろやらかしました。

  1. MUSES72320 のはんだ付け失敗
    バランス型プリアンプで経験しているから余裕のはずだった MUSES72320のはんだ付け。 VOL-01基板で片チャンネルの音が出ないことから、繰り返しているうちに両チャンネルともダメになった。 たかじんさんのホームページの注意書きのうち、「時間にして、1~1.5秒で行って帰ってくる。  これを3~5本くらいやったら、一旦、コテ先をクリーニング。  そのタイミングで ICの上を指で押さえて、熱を冷やす。」を忘れていたため。 気が付かずに、2枚壊してしまった。
  2. パスコンのコンデンサの極性間違い
    完成したと思って、ClassAA フラットアンプの前段(V-AMP)のオペアンプをとっかえひっかえして、好みのオペアンプを探していた時に、イコライザ部分のパスコンの頭が膨らんでいることに気が付いた。 極性の間違い。 12V のところに25V品を使っていたためか、簡単には壊れなかった模様。
頭が膨らんだ MUSE KZ

ちなみに、ClassAAフラットアンプのオペアンプは、OPA827 DUALにが良かった。 MUSES01 は音数が多くてきれいだけど、冷たい感じがしたので却下。 OPA827 はこれから多用しそうな予感。 OPA1655D も気になっている。 なお下記は、平衡入力に改造された6R-HH2全段差動ミニワッターと Tangent Evo4 で試聴したときの印象である。

  • OPA2604・・・リファレンス(フォンテック FOCD3438)の冒頭のピアノのキータッチがでないので却下。
  • OPA2134・・・リファレンスはかろうじて合格だが凡庸。 廉価に済ませたいなら、とても良い選択。
  • MUSES 01・・・リファレンスはかろうじて合格。 音数の多さはOPA2134より良い。
  • OPA627DUAL(NFJ)・・・リファレンスを合格。 音数が少ないが、質の良いラックストーンを思わせる。 これもありかと。
  • OPA827DUAL(秋月)・・・リファレンスをゆうゆう合格。 音数が多く、ダイナミックレンジがよい。
  • LME49720・・・リファレンスを合格。 音数が多く繊細な感じがたまらない。 これはこれであり。 廉価に済ませるなら、きわめて良い選択。

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・フォノイコライザーのMC/MM切り替え

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・フォノイコライザーに示した基板は、MC/MMの切り替えをジャンパで行う。 ジャンパのピンヘッダにピンソケットで配線してスイッチで切り替えればよいと気軽に考えていた。

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回路図をみるとわかるように、ジャンパの一端は、入力ラインに直接つながっている。 MC/MMの信号ラインを長々と、前面の切り替えスイッチまで引き回すのはどうかと思う。 ノイズを引く原因になりかねない。 実際、バラックで実験しても、信号ラインを引き回すとS/N が悪化する。 いっそのこと、MC/MM切り替えは、筐体を開けてジャンパで切り替えとも思ったが、切り替えのたびに外部配線を外して・・・という手間をかけては、カートリッジを交換するのがおっくうになってしまう。 よって、前面スイッチでリレーを駆動して、リレー切り替えと考えた。 リレーは当然、オムロンのG6Aシリーズしかありえない。 シグナルにも対応できる、金クラッド接点を用いているからだ。 なぜかは、たかじんさんの記事「オーディオ用リレー」に詳しい。 

切り替えるべきは、MCと書かれたNF抵抗と、カートリッジの負荷抵抗とした。 R2の47.5kΩのジャンパはショートしておいて、R1の100Ωをリレーでショートすることとした。 C1/C2は、我が家がラジオの強電界地域にあることから、100pF をジャンパでショートしておくことにした。

また、ジャンパを引き回すコネクタにシールド線を用いて、信号側がホット、アースに近い側をコールドとした。 NFB側がうまくいくか心配だったが、交流的にアースされていることが奏効したようだ。

昔の高級プリアンプは、入力切替などの表示に、当時出まわり始めたLEDが用いられていた。 本機でも、MC/MM切り替えをLEDで表示することとした。 昔はLEDは赤しかなかったので、MC青/MM赤とフルカラーLEDで表示することにした。 ここで問題発生。 デザインの都合上、小さな押しボタンスイッチを用いたいのだが、アルターネートは2Pしかないのだ。 MM のときに、どうするのやら・・・ ヒントはたかじんさんの PRT-03 基板にあった。 下図のように、2PスイッチOFFになると、ONになるトランジスタをいれる回路だ。 例によって、これを置くスペースもないので、TNF11-16に組んで、底板を切り取ったSW-20(小型プラケース)にはめ込み、ホットボンドで、前面に貼り付けましたとさ。

※ デジタル用電源(±12V)より分岐 ※ リレーは別基板
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アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・電源をどうするか

電源を考えた時に、以前に作ったバランス型プリアンプとは異なる難しさがある。 ひとつは、MCカートリッジ対応のためにノイズ対策を厳重に考える必要があることだ。 もうひとつは、Unbalanced-Balanced 変換基板 でも苦労したように、スペースがないことだ。

バランス型プリアンプでは、デジタルアッテネータの部分と、2つのフラットアンプの電源を、すべてトランスを分けることができた。 今回は不可能だが、せめてデジタル部分とアナログ部分ぐらいはわけたい。 また、ノイズ対策を考えると Rコアトランスを使いたい。 既製品があるわけではないので、特注品となるが、やむを得ないと思っていたところ、ヤフオクに 12V 2回路のRコアトランスが2個セットで出品されたので、手に入れた。 コアの大きさから 30VA 程度と考えられ、このプリアンプには十分だ。

ぺるけ師匠の私のアンプ設計&政策マニュアルのアース回路の解説にあるように、電源ラインにある電解コンデンサには、リップルフィルタとして働いているものと、信号電流の帰路として働くものがある。 このふたつを区別しておくことが大切で、ローカルの基板にもコンデンサを置くことが結構大切だと私は考えている。

たかじんさん設計の Blue Snow DAC でも、デジタル部分とアナログ部分でトランスが分けられており、トランスの近くにリップルフィルタと三端子レギュレータがある。 アナログ部分では、部品近くにローカルのリップルフィルタ&コンデンサが配置されている。 今回はこのパターンをそのまままねすることにした。 お気楽オーディオさんの TypeJ電源基板を利用した。 ショットキーバリアダイオードで整流後、デジタル用では日本ケミコンの105℃低インピーダンス・高リプル電流品で低Z のKZH電解コンデンサの並列使用、アナログ用では、オーディオ用ハイグレード品電解コンデンサ MUSE KZ 電解コンデンサの並列使用とした。LM317/337 で定電圧化後のパスコンには、MUSE KZ と OSコンデンサを併用した。スペースの関係で、チャンネルごとにイコライザ関係部分と ClassAA フラットアンプには、CRとトランジスタによるリップルフィルタをいれ、それ以外には電源供給部にパスコンをいれた。 これらの電解コンデンサはすべて MUSE KZ を使った。 おかげで、MUSE KZ 1000μF 25V の在庫をかなり使うことができた。

ローカルリップルフィルターとパスコン

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・Unbalanced-Balanced 変換基板

このプリアンプは、電気工作作業部屋に置くので、いろいろな入力があったほうがよい。 ところが、とにかく場所がない。 当初、たかじんさんの アンバランスTOバランス変換基板 BLA-01を用いるつもりであったが、95mm × 65mm と大きく、これを乗せるスペースはない。 よって、Unbalanced-Balanced 変換には、できるだけ小さくユニバーサル基板で組むことにした。

いろいろ調べてみて、目を付けたのは、ぺるけ師匠の OPアンプを使ったバランス型ヘッドホンアンプ  である。 特徴は、オペアンプを反転型として利用しているところにある。反転型の良さはたかじんさんの記事に詳しい。 ぺるけ師匠は、OPA2143 を使っているが、OPA2134 は手元に数個しかなく、入手難であるため、MUSES8920 を利用した。 MUSES01が大好きな私ではあるが、あまり使わないところに高価な MUSES01 を使う気にはさすがにならない。 回路図は以下の通り。 ぺるけ師匠の設計だけあって、実に安定。 特性は、DC ー 70kHz(-3dB)で、最小歪み率は WaveGene/WaveSpectra では測定限界以下。

この他、電源供給部に、MUSES KZ 電解コンデンサがパソコンとして入っている。

この基板で苦労したのは、とにかく小さく組むこと。 思考実験を繰り返し、Takachi TNF34-49( 34 x 49mm)に組み上げた。 裏面にも抵抗を配置しないと間に合わない。 BLA-01基板の1/4の面積ですますことができた。 でも、二度とやりたくない・・・。

バランス入力・アンバランス入力が自動で切り替わるように、TRS入力端子は2回路の独立スイッチ付き。 TRSに差し込むと、TRS入力に切り替わる。 小林電機商会で入手した。

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・ClassAA フラットアンプ

とにかく場所がない。 先のバランス型プリアンプでは、フラットアンプとして、たかじんさんの HPA-12 を使い、それぞれに専用トランスをつけた。 場所がない以上、オペアンプで作成することになるが、少しでも音質的に有利になるようにしたい。

目を付けたのは、たかじんさんによる禁断のClass AA ヘッドホンアンプである。 ClassAA とは、Technics が開発した疑似A級アンプ方式だ。 電圧増幅と電力増幅を別々のオペアンプに行わせるので、単なるオペアンプ一発よりも、低歪み率で高ドライブ能力を誇る。 動作原理は、たかじんさんが、テクニクス ClassAA回路とはテクニクス ClassAA回路の実際 のページに詳細な解説をしてくださっている。

ClassAA フラットアンプ

上図の実験(ただし CNF なし)で、-3dB が 900kHz と極めて優秀な周波数特性を示した(下図)。 位相補正を加えた上で、この回路に決定だ。 最終的には位相補正は、6.8pFが最適であった。

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なお、実装して、VOL-12/01 基板につないでみたところ、上図の回路のままだと発振してしまった。 バランス型プリアンプは完成するか・・・またもトラブル発生と同じかもしれない。 HPA-12基板と比較して、この ClassAAフラットアンプが圧倒的に広帯域であることを考えると、当然かも知れない。 先の例にならって、入力に 1kΩ ー 220pF のハイカットフィルタをいれたら、安定しましたとさ。

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・フォノイコライザーのサブソニックフィルターとバランス対応

出典: https://www.analog.com/jp/products/lt1115.html

フォノイコライザーは上記の回路で、この出力を平衡出力にすることと、サブソニックフィルターをいれることが目標だ。

最初のアイディアは、オペアンプによる unbalance-balance 変換回路を付加し、その後に CR型の 6dB/Oct のハイパスフィルターをいれるというアイディアだ。 比較的シンプルと言えるが、フィルタ特性は良くない。

アクティブフィルターにするというのも可能性としてはあり得る。 実際に計算してみるとわかるが、アクティブフィルターにすると低域特性が波打ったり位相がとんでもないことになったりということで、どんなアクティブフィルターにするかという設計思想の問題が多数出てくるようだ。 本格的なアクティブフィルターをつくることにすると、間違いなくそれだけでオペアンプ2回路を要するし、設計もいろいろ大変だ。 周波数特性を優先すると、位相特性が悪化したり、波形応答が悪化したりとといったジレンマが生じる。 回路規模がだいぶ大きくなることは必定だ。

unblance-balance変換回路後に、CR型のハイパスフィルター程度しか自分では設計できないなぁと思い始めたが、unbalance-balance 変換に優秀なライントランスを使うというのはどうかと思った。 優秀なライントランスなら、イコライザー出力程度の電圧なら、10Hz-100kHz 程度を 0~-1dB 程度 の周波数特性を保証できる。 サブソニックフィルターは考えなくてもそうなる。 手元に、TAMURA TAM121115 150Ω:600Ω とちょうど良いトランスもあるので実験してみた。

LT-1010CT は出力電流 ±150mA とかなり強力なので、そのままドライブできるのではとつないでみたところ、イコライザーのNF素子と両方の負荷はさすがに重すぎるようで、波打った周波数特性になってしまった。

オペアンプ一段のバッファ(LME49720)をかませてみると、低出力インピータンスでのドライブになるためか、数10kHz に急峻なピークが現れた。 これを是正するために試行錯誤したところ、R=680Ω/C=1000pF のローパスフィルタを一次側に挿入し、二次側の負荷抵抗を3.9kΩとしたところ下図の特性(オリジナルのEQアンプからの偏差)を得た。

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20 – 20kHz はほぼフラットで、8- 300kHz(0~3dB) と理想的な特性とといえる。  この解決策の問題点は、トランスを利用するため場所をとるということに尽きる。