バランス型プリアンプは完成するか・・・表面実装部品にチャレンジ

2020年のコロナウィルス騒ぎで時間が取れた私は、本ホームページにあるように、アンプの制作を久々に始めた。たかじんさんのホームページでは、我が家のサブシステムに使用している HPA-12 基板の改訂バージョンである HPA-1000基板 がリリースされていた。 バランス型プリアンプの作成に必要な半導体や各種部品は死蔵されており、恥ずかしながら表面実装部品のハンダ付けに失敗していることをコメントに書き込んだところ、曲がりのピンセットがあるとよいことを教えてもらった。

2014年のときと大きく異なるのは、はんだごてもだ。 Goot のステーションタイプの RX-701AS を思い切って購入していた。

基板を固定する冶具(Aven 17010 Adjustable Circuit Board Holder by 24-Hours)も手に入れて、準備は万端。

マルツから、表面実装部品を多めに取り寄せて作業を再開したところ、無事に表面実装部品をとりつけることができた。 コツを覚えれば、結構簡単で、曲がりのピンセットで表面実装部品を軽くおさえ、はんだごてにちょっとハンダをつけて、部品の脇のプリント面を滑らせるようにすると、簡単に仮止めできる。 前もってハンダを載せておいて、溶かしてから仮止めするやり方もあるようだが、力の入れ加減を間違うと表面実装部品がピンセットから飛んで行ってしまう。 仮止めさえうまく出来れば、もう片方のハンダは簡単。 ただし、横着せずにピンセットで固定しておくこと。

次は、MUSES72320 のハンダ付けだ。 0.65mm ピッチのハンダ付けは成功するか?

バランス型プリアンプは完成するか・・・挫折からのスタート

我が家のメインシステムは、長らく Soulnote ma1.0 をパワーアンプとして利用しており、マルチチャンネル&AVシステムとの兼用でもあるため、平衡入出力のセレクター(AudioDesign AudioDesign HAS-3LB)とアッテネーター(SPL Volume2)を利用していた。 できるならば、バランス入力がたくさんあるプリアンプが欲しいのだが、適当な製品がない。

Soulnote / Fundamental には該当する製品はないし、3つ以上のバランス入力があるプリアンプと言えば、Accuphase C-3900 ぐらいしか選択肢がない。 200万円を超えるプリアンプはとても購入できないうえに、私自身はあまり Accuphase の音質が好きではない。 ピアノのキータッチの違いのような表現をうまく出しているデモに出会ったことがないからだ。

そんなおりに、ネットワークプレーヤーなどでお世話になっているたかじんさんから、バランス対応入力セレクター付きMUSES72320電子ボリューム基板(VOL-12)が発売された。 バランス対応基板(VOL-01)を追加することで、3バランス入力のプリアンプを作成できる。 さっそく購入したのは良かったのだが、あっという間につまずいた。

表面実装部品のコンデンサ、抵抗(1608サイズ)の半田付けがうまくいかない。 細い先端の半田ごてを準備してトライしたが、あっというまに、部品がぴちっと飛び跳ねて、どっかに行ってしまった。 MUSES72320 の 0.65mmピッチの半田付け以前で失敗してしまったのだ・・・。

2014年の秋ごろに挫折からスタートしたバランス型プリアンプは果たして完成するのか?

 

6R-HH2 はミニワッターの夢を見るか・・・はらわた

外観とはらわた。

入力端子は使用場所の都合で前面にある。 もう少し右側にすれば良かった。 つまみはとりあえずの手持ち。 前面と後面だけヘアライン加工した。

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トランスの側面(左下)にリップルフィルターをつけた。 中央左は前段用の定電圧電源。 真ん中左の端子板は、ヒータ電圧切り替えのため。 ショートすると、7DJ8用になる。

左下の緑色の基板は、定電流回路。 当初は抵抗一本で大丈夫だと思っており、場所がなくて苦労した。

出力トランスからのスピーカー接続ラインは、近づけると超高域の飛びつきがあって安定度が悪くなる。 エーモンの配線止め金具で固定して離してある。

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前段はサンハヤトの AT48D で両チャンネル分。 2SK117には2mm のスズメッキ線を渡して接着して熱結合させた。 熱結合があるほうがバランス安定度がよくなる。 信号ラインは距離が短いのでシールド線を使っていない。

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6R-HH2 はミニワッターの夢を見るか・・・完成

最終回路図は下記の通り。

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周波数特性は下記の通りで、6~90kHz (-3dB) 程度である。左右差がないので、代表して左 Ch を示した。

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歪み率特性は下記の通り。 7DJ8全段差動ミニワッターとほぼ同様な結果である。 高域の暴れは 14kΩの出力トランスでもあり仕方ないか。 5%歪み率で 0.7W 程度と、7DJ8前段差動ミニワッター の 0.9W に比べて若干少ない。 残留雑音は 左Ch 0.043mV、右Ch 0.038mVと7DJ8 に比べておおよそ半分程度である。

方形波(矩形波)のオシロも記載しておく。

100Hz

1kHz

10kHz

10kHz 負荷なし

10kHz 0.1μF負荷

10kHz 1μF負荷

0.1μF のコンデンサ負荷では発振気味のリンキングが認められるが、基本的に安定していることがわかる。

肝心かなめの音質だが、7DJ8全段差動ミニワッターが小出力を感じさせないピラミッド型の雄大な音に対して、6R-HH2全段差動ミニワッターは優しさを感じさせる音だ。 もちろん、全段差動ミニワッターらしく、出すべき音はしっかり出してくれる。 14畳のリビングにある Dynaudio Contour 3.3 をしっかり鳴らしてくれる。 ピアノコンチェルトを聴くと、雄大なオーケストレーションの表現では 7DJ8全段差動ミニワッターに一日の長があるが、ピアノのキータッチの違いといった雰囲気感の表現は 6R-HH2全段差動ミニワッターのほうが上手だ。Altec Mini Monitor 8A での試聴では、7DJ8 全段差動ミニワッターは相性が悪いらしく、何を聴いても明るく澄み切ってしまうが、6R-HH2全段差動ミニワッターはこのあたりも上手だ。 ちなみに、7DJ8 全段差動ミニワッターは、ぺるけさんの トランス型 DAC だと静けさの表現も得意だが、Soulnote sd2.0 だと静けさの表現がいまひとつのようだ。 6R-HH2全段差動ミニワッターではこういう相性問題は少ないようだ。

トータルでみて、ミニワッターを思わせないピラミッド型の雄大な音が7DJ8全段差動ミニワッターの長所だが、6R-HH2全段差動ミニワッターでは、雄大さの代わりにおしとやかさを身につけたように思える。 6R-HH2は、全段差動ミニワッターとしても十分に存在価値がある真空管であるといいたい。

追伸: ちょい聴きだが、6R-HH8 もなかなかよい。 7DJ8 と 6R-HH2 の中庸といったところ。 このミニワッターは、アンプ作りなどの作業部屋の tangent EVO4  を鳴らすたに作ったが、ぺるけ師匠が愛用していたことをたったいま知った。 ちなみに、Monitor Audio の R95HD/R45HD も単身赴任先で使っている。 みんなおんなじこと考えるのね…..

7DJ8 全段差動ミニワッター

さて、出力段を定電流化した7DJ8全段差動ミニワッターだが、聴感から、NFBは 11dB ほどかけることとした。 微分補正コンデンサの容量決定は、下記の周波数特性から 470pF に決定した。70kHz 前後の盛り上がりが補正されているのがわかる。

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歪み率特性は下記の通り。5%歪み率で 0.9W とれている。 本家に比べるとやや歪み率が高いが、NFB量が少ないためかもしれない。 残留雑音は 左Ch 0.081mV、右Ch 0.075mVと十分に低い。

さて、本番は 6R-HH2 だがどうだろうか。

to be continued…

 

6R-HH2 はミニワッターの夢を見るか・・・試行編

6R-HH2 はミニワッターの夢を見るか・・・構想編で述べたように、7DJ8/6R-HH2 全段差動ミニワッターは A2級ドライブの方がよさそう。 ところが、本家本元のぺるけさんのところでは、エミッタフォロワ付きの 6DJ8 全段差動ミニワッターは、複雑な発振がおきて凍結状態とか。

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とりあえず、上図のようにエミッタフォロワ付きで出力管の出力段の定電流回路はとりあえずカソード抵抗1本で試みてみたところ、7DJ8 / 6R-HH2 とも、0.6~0.7W 程度は取れた。 しかし、カソード電圧は 7DJ8 と 6R-HH2 で1V程度の差が生じていたので、出力段の定電流化 を行うこととした。 6R-HH2 もミニワッターとして使える!

to be continued…

7DJ8 のヒーター電圧測定

手元にあるのは 7DJ8 であるが、この真空管のヒーター電圧は、諸説ある。 7.0Vという記載もある一方で7.6V という記載もある。 どちらにせよ、7DJ8 はトランスレス用で、電流は 0.3A である。 よって、手持ちの 7DJ8 のヒーターを点灯させてみて、電流値が 0.3A になる電圧を調べるのがよいと考えた。

数本試したところでは、7.3V程度で 0.3A の電流量となった。 こうなると、6.3V をショットキーバリアダイオードでブリッジ整流する形では、SDI2100 のデータシートから考えると、7.1V程度となるであろう。一般にヒータ電圧は±5%が許容されているが、なんとなく気持ち悪い。

6.3Vを重ねて、12.6Vをショットキーバリアダイオードでブリッジ整流して、2本の 7DJ8 を直列につないでヒーター点灯なら、15.1V程度となるので、余裕がある。 この手でいこう。

6R-HH2のときには、さらに抵抗で電圧を落とせば良いだけになるが、ヒーター電流が 0.4A に増える。

7DJ8  と 6R-HH2 はピンコンパチなので、ヒーター電圧を切り替えれば、差し替え可能だ。 6R-HH2 に間違って7.3Vをかけたりしないように、工夫が必要だ。 単にスイッチで切り替えると、間違って手を触れたりする可能性がある。 鍵で切り替えるスイッチを購入しようかと思ったが、意外に手に入らない。

よって、端子板を使ってショートする形にした。 これなら間違うことはあるまい。

 

 

 

真空管ソケット洗浄

7DJ8 / 6R-HH2 全段差動アンプを作る準備をしていて、MT9ピンソケットの未使用品を数十年間死蔵していたことに気がついた。 新品を購入する方が良いかどうかを掲示板で質問しようと思ったが、その前に検索エンジンで調べてみると、おんにょさんの真空管アンプのホームページに、ソケットのピン洗浄のページにたどりついた。 銀製品のクリーナーで酸化皮膜を還元する手法なので試す価値があると考えた。

シルバークリーナーの Speedip に10秒程度つけて、極小の歯間ブラシで磨いた。 その後、化粧用のコットンをこよりのように細くして、ピン内部の拭き取りを行なった。

左:処理後、右:処理前のソケット クリックで拡大

写真でもはっきりわかるほどの差だ。 まさに新品同様のぴかぴかになった。 洗浄後のソケットを、7DJ8 / 6R-HH2 ミニワッターで使用してみるつもりだ。

 

6R-HH2 はミニワッターの夢を見るか・・・構想編

さて、6R-HH2のデータシートから書き起こして、ロードラインを引いてみよう。 ぺるけ師匠の6DJ8全段差動ミニワッターと同じプレート電圧、プレート電流のポイントで 7KΩのラインは下図の通りになる。

6DJ8 に比べるとだいぶ直線性が悪いというか、直線性が良い部分がグリッド電圧が正の領域に広がっている。 すなわち、6R-HH2 でミニワッターを作ろうとしたら、A2級動作を前提に設計する必要がある。 すなわち、エミッタフォロワ・ドライブにすることになる。

ぺるけ師匠の作例だと、6N6P ではエミッタフォロワドライブはうまくいったが、6DJ8 では複雑な発振が起きたとある。

6R-HH2 はエミッタフォロワドライブで、全段差動ミニワッターの夢を見られるのか?

6R-HH2 はミニワッターの夢を見るか・・・妄想編

ぺるけ師匠の6DJ8全段差動PPミニワッターは名だたるプロ音響エンジニア達がこぞって使っている名品なそうで、音を聴いてみたい。 運の良いことに、30年前に手に入れた、封も切っていない新品の東芝7DJ8が手元に11本ある。

6R-HH2 は、日本独自のカスコード増幅用高周波双3極管だ。AC電源電圧がアメリカは117Vなのに、日本は100V なので、トランスレスTVでヒーター電圧不足により利得が下がる事情で、日本独自のカスコード増幅高周波双3極管の*R-HH*が開発されたらしい。 これらの真空管の原型が6DJ8だ。 つい最近、ひょんなことから、手元には封も切られていないNOS(New Old Stock)品の 6R-HH2 を20数本手にいれた。

データシートによると、6DJ8 の 三定数は  μ=33,Gm=12550μ℧,rp=2.6kΩ (rp は計算値)であるが、ぺるけ師匠の「情熱の真空管アンプ」の本では、μ=32,Gm=5820μ℧,rp=5.5kΩ とある。 6R-HH2 は、データシートでは、μ=36,Gm=8000μ℧,rp=4.5kΩ である。 データシート同士を比べるとプレート抵抗は高め。 6R-HH8 は μ=45,Gm=16000μ℧,rp=2.8kΩ で、6DJ8 に近いかもしれない。

こんな 6R-HH2 だが、全段差動ミニワッターの夢を見られるのか?

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