「PRT-03」タグアーカイブ

禁断のClassAA ヘッドホンアンプは完成するか・・・はらわたなど

ケースはタカチ HY-70-33-22SS だ。 サイドの放熱器は全く不必要なので、OS-70-20-33SS のサイド面をパネル面として使うのが正しい選択なのだろうが、HY型のほうが圧倒的に安いので、こちらを利用している。 おそらく、OS型はパーツ数が多いために値段が高くなるのだろう。 配置は左からトランス、PRT-03、アンプ基板と、HPA-1000ヘッドホンアンプと同じ配置で、アンプ基板も右側が入力、左側が出力側となっている。

PRT-03 の出力抵抗には、酸化金属皮膜3W 10Ω / 47Ωをいれてあるが、使う意味はなさそうに感じている。

横幅はけっこうキツキツでぎりぎり。
アンプ基板

NFBの補正コンデンサは抵抗に直付け。 調整の都合上こうするのが楽で横着した。 導電性テープを用いてベタアースを作っている。 MUSES01 を V-AMPに採用する予定で作り始めたため、ひとつのオペアンプを両チャンネルで共有するつくりになっている。 入力コンデンサは PMLCAP なので、裏面にはんだ付けしてある。

アンプ基板裏面
上から禁断のClassAAヘッドホンアンプ、2台目の Blue Snow DAC, HPA-1000ヘッドホンアンプ

写真で見ても、禁断の ClassAAヘッドホンアンプの前面の光の照り返しが違うのがわかるだろう。 実は、XLR4 のためのメタコアによる穴開け作業で、手が滑り、XLR4穴周囲に大きな傷を作ってしまった。 ホルツ 補修用パテ アルミホール用アルミパテで穴埋めして削ったところ、色が全然違いかえって目立つことが判明。 さらに、削ったことにより、パネルのアルマイト加工がはがれる部分がでてきて、パネルが全体的におかしなことに。

仕方がないので、電動サンダーでアルマイト加工ではがし、紙やすりできれいにしてから、アサヒペン カラーアルミスプレー (シルバーメタリック)で薄塗×4回塗装したところ、まずまずの結果を得て完成と思ったが、室内に持ち込むと塗装ムラが目立ち、#600, #1200 #1500 の紙やすりで水研ぎしても、きれいにならず、むしろ塗装前のほうがきれいだったため、ラッカーで塗装をすべて落とした。 塗装を落とした際にパテも全て溶けて流れた。

傷が著しく目立つため、最後の手段で、手作業で #240の紙やすりでヘアライン加工を施し、#600の紙やすりで調整した。 そして、XLRジャックを付けたのちに、傷隠しのために金属の円盤を付けて完成というわけ。 ちなみに金属の円盤は、ハードディスク分解で手に入れた軸受けだ。

禁断のClassAA ヘッドホンアンプは完成するか・・・トラブルシューティング

さすがに、同じトラブルをやらかせば、すぐに気が付く。 100Hz の歪み率だけ悪いのはアースの問題だと。 ClassAA基板のみで歪み率を測定すると、100Hz でも 1kHz とほぼ同じ歪み率なので、問題は電子ボリュームあたりのアース処理に問題があると。 HPA-1000 でも同じ問題で悩んだ経緯があり、たかじんさんから下記のコメントをいただいた。

GNDの接続、とくにループになってしまうことによる影響は大きいですよね。

ハムノイズとして現れることが多いのですが、ひずみ率として捉えるのは面白いと思いました。

HPA-1000 は2枚の基板をあまり離さずにGNDラインを1本で繋げるという手法をとってもらうのが理想です。 でもそこに電子ボリュームが入ると、電子ボリュームの電源のGNDが必要になり、GNDループが発生します。

この辺の処理はいくつかあるのですが、トランスからの漏れ磁束を拾ってしまう事もあったりして、ハムノイズという現象だけを追っていると一筋縄ではいかないんですよね。
GNDだけでなく、信号ラインからも漏れ磁束を拾ってしまうから。

PGA2311 電子ボリュームの信号系のアースを、ClassAAアンプ基板の入力端子から供給するのではなく、電源であるPRT-03 の S-GND から供給することにした。ひずみ率特性のみならず、音質向上が得られたのは言うまでもなく。

ClassAAヘッドホンアンプ 33Ω負荷 ひずみ率特性(クリックで拡大)
ClassAAヘッドホンアンプ 33Ω負荷 ひずみ率特性(クリックで拡大)

雑音歪み率は、100 Hz から 10kHz まで、左右差なくよくそろっていることに加えて、最小で 0.003% と HPA-1000 より優れている。 特性が優れているからと言って、音質が優れている証拠にはならないが。

禁断のClassAA ヘッドホンアンプは、3.5W程度は出るので、知人宅で、Technics SB-MX100D を鳴らさせてもらう機会を得た。 ClassAAアンプは Technics のお家芸だからだ。 絶妙の空気感に驚いた。 村治佳織のギターが目の前に浮かび上がるように聞こえる。 何よりも素晴らしいのは、奏法の違いがよくわかることだ。 1980年代に聞いた Technics の高級機を彷彿させる、ちょっと離れたところからきれいに響かせる感じといったらいいだろうか。 ジャズトリオなどでは、楽器の位置関係がよくわかって、響き合う様子もよくわかる。 この感じは、手持ちの Linaeum や Dynaudio では得られないものだ。

閑話休題。 私が作成した HPA-1000 は、初段トランジスタに 2SC2240 を使っているためか、清楚で女性ボーカルの良さが引き立つ感じがとてもいい。 隅々まで音の余韻が聴こえて大人な響き。 穏やかなで落ち着いた雰囲気。 これに対して、この禁断のClassAA ヘッドホンアンプは、HPA-1000 に比べると、もう少しクールにまとめてくる。 Modern Jazz Quartet のおしゃれさがよく目立つ。 交響曲を聞くと、HPA-1000 は、ホールトーンもよく聴こえる中央よりやや後ろの席。 この禁断のClassAA ヘッドホンアンプは、よく全体を見渡せる2階席の最前列といった感じ。 

いずれにせよ、難産だった禁断のClassAA ヘッドホンアンプが完成して、とてもうれしい。

禁断のClassAA ヘッドホンアンプは完成するか・・・測定してみる

とりあえず、周波数特性を測定してみることにした。 NFの補正コンデンサなしで調べてみる。

周波数特性(クリックで拡大)

高域のカットオフは、入力のハイカットフィルタによると考えられるが、位相特性はかなり悪いので、NFの補正コンデンサの調整が必要だ。 6.8pF で位相特性はかなりの改善が認められ、10pF ではさらなる改善が認められる。 15pF に増やしても誤差程度の改善しかないが、22pF まで増やすと位相特性は理想的になるが、10kHz から影響が出てしまう。 よって、10pF に決定することとした。

(クリックで拡大)

残留ノイズは、LED電球のON/OFFでも数字が変わるので、本当のところはよくわからないが、マルチメータのショートから、7μV程度の変動がみられるのみだ。 十分にノイズが少ないといえる。 Rコアトランスを利用したのが、好結果を生んだといえるだろう。

安心してひずみ率(THD+N)測定を始めたところ、1kHz では、最低が0.005% と、WaveGene/WaveSpectra 測定の限界に近い数字で満足したが、100Hz では、安定して0.2~0.3 % と高い数字を示していた。 またやってしまったようだ。

to be continued…

禁断のClassAA ヘッドホンアンプは完成するか・・・希望の光が

電流増幅に、パワーオペアンプの LM1875 を用いて失敗してから、半年余り、禁断のClassAA ヘッドホンアンプの進展はなかった。 よって、HPA-1000 を先に作ることになった。 そんな折に、定期的にj巡回しているお気楽オーディオさんで、TDA2030 のほうが LM1875より安定しているという記事があり、TDA2030 を試してみることにした。 

TDA-2030は、ピン配置はLM1875と同じパワーオペアンプで、出力電流(Iout)はデータシートによれば 3.5A と、LM1875 の 4A よりやや少なめ。 少ないとはいえ、一般的なオペアンプとは桁が違う。

MUSES8920 + TDA2030 で、片チャンネルは安定して動作し、0,5A のヒューズで出力を短絡しても、問題ない。 喜んで、両チャンネルを作成してみると、発振してしまった。 NFループのコンデンサを調整してみたが、発振は変わらない。 

ふと思いついて、V-AMP のオペアンプを変更してみると、LME49720 では安定して動作することがわかった。 バラックで 1kHz の歪み率をとってみると、0.03%程度なので、問題なさそう。 他のオペアンプを使ってみると、MUSES01, MUSES02, OPA2604はきれいに発振、OPA627 は大丈夫そう、OP827 も発振しそう。OPA2134も大丈夫そうであった。 とりあえず、LME49720 で進めてみることにした。

(クリックで拡大)

電源およびヘッドホン保護は、たかじんさんの PRT-03 を使うので、理想的だ。 電源トランスは、ヤフオクで保護したRコアトランスだ。 無負荷で 14V(CTあり)で、外形が90mm × 100mm あることから、50VA程度の容量と思われる。 想像するに、12.6V(CT付き)4A 程度だろう。 ヘッドホンアンプには、十分すぎる電流容量といえる。

構想編で述べたように、たかじんさんの PGA2311 電子ボリュームを使う。 この基板は低インピータンス出力なので、電子ボリューム基板とアンプ基板の距離を無視できる。 上記の回路図にあるように、たかじんさんの作例と同じく、入力におおむね 200kHz のハイカットフィルターをいれておくこととする。

to be continued…

禁断のClassAA ヘッドホンアンプは完成するか・・・迷走編

簡単に動作するだろうという予想に反して、作ってみると、SP OUT端子が電源電圧に張り付いてしまうというトラブルに見舞われた。まるでコンパレータのようだ。 発振を疑い、NFBコンデンサを調整してもダメ。 ネット上の作例との違いは、電圧増幅アンプとしてのオペアンプとが、三端子レギュレータで電源電圧が安定化されていることなので、この点も試みたものの、改善は認められなかった。

万策尽きて、ほかのパワーオペアンプを試みてみることにした。 秋月電子で安価に手に入る LM1875 である。 LM685T と同じく20Wのアンプを作成できる。 出力電流(Iout)もデータシート上4A と同じだ。 こちらにしてみたら、SP OUT端子は、ほぼ0V となったが、何らかの入力を入れた瞬間に、コンパレータ状態に元戻り。

手段がなくなってしまい、まだ安定していたフラットアンプに近づける試みとして、ホイートストンブリッジの抵抗値を高くしてみた。

この状態では、発振は認められたものの、NFBコンデンサ量を調整したら、発振は認められなくなった。

これでいいと思いながら、いつもの試験用ジャンクスピーカーで音出しをしてみた。 ClassAAフラットアンプと異なり、ボリュームをあげても音割れすることなく、いい感じで聴ける。

喜んで聞いていたら、スピーカー端子のプラス端子とマイナス端子が接触したとたんに、LM1875と虎の子の MUSES01 から煙があがった。

音は出ているのだから、過電流保護をつければよいかと思い、電圧増幅オペアンプには 0.05A、電流増幅のLM1875 には、0.5A のポリスイッチをいれて、スピーカーショートでもオペアンプが壊れてしまわないようにはしたものの、ここで歪み率を測定すると、出力にかかわりなく0.3% 程度で、極めて不安定であることが、測定からも立証されてしまった。

たかじんさんがおっしゃるように、禁断のClassAA アンプは、危険な構成で、フラットアンプならともかくそれ以上はアマチュアには無理?

to be continued…

禁断のClassAA ヘッドホンアンプは完成するか・・・構想編

アナログ対応バランスプリアンプのフラットアンプとして、禁断の ClassAA ヘッドホンアップを利用し、ヘッドホンアンプとして好結果を得たので、本格的に利用してみたいと考えた。 

本格的に利用するとしたら、電流供給アンプ(C-Amp)の電流供給能力をあげる工夫をしたいところだ。 ウェブ上の作例を探すと、C-Amp としてパワーオペアンプの LM675T を用いた作例とオペアンプにSEEP出力段を付加した作例が見つかった。 SEEP出力段を付加した作例はプリント基板を自作した作例であったこともあり、LM675Tの作例を追試してみることを考えた。

最終的にはヘッドホンアンプで使うことを考え、電源および保護回路等は、たかじんさんによる、HPA-1000 用の PRT-03 を用いれば、電源としても優秀だし、保護回路も完璧だ。

当初は、このヘッドホンアンプを、チャチャっと作り上げてから、HPA-1000に腰を据えて取り組むつもりだったが、実際には HPA-1000 のほうを先に完成させざるを・・・

to be continued…

無帰還A級ディスクリートヘッドホンアンプ HPA-1000 ・・・はらわた

左から、電源スイッチ、出力切り替え、ヘッドホン(XLR4)、NFB切り替え(LEDはNO-NFB時ON)ボリュームつまみ。
足はアルミ無垢(AFM44-20S)にした。
スピーカー出力は、バナナプラグ専用。 ほとんどたかじんさんのデモ機と同じ配置になっている。
中央の緑色の基板は、NFB切り替えのリレー用基板。 見ての通りで、各基板は数ミリ程度しかはなれていない。 QHコネクタのおかげでなんとか配線できている。

無帰還A級ディスクリートヘッドホンアンプ HPA-1000 ・・・再度のトラブルシューティング

最初に考えたのは、はんだ付け不良だ。 音を聴きながら絶縁物で部品をたたくと、はんだ付け不良がわかる。 どこも異常がない。 各部の電圧は正常だし・・・・。 万事休すか。

修正をあきらめて、風呂に入っているときに、左右で違うところとして、アースラインを思い出した。 MUSES72320 ボリューム基板は、入出力ともに左右別の GND端子がある。 これは、たかじんさんによれば、MUSES72323 自体が左右の GND を分けて、チャンネルセパレーションをよくする工夫をしているからとのことだ。 しかしながら、左右別のGND をそのまま入力端子につなぐと、音源で GND は一緒になるので、下図のように左右のRCAケーブルを通して、音源とHPA-1000 のSGNDで大きなループを形成してしまう。 これはノイズ対策上問題になる。

点線がアースループを示している

上記の問題を避けるために、下図のように、入力端子の GND をつなぎ、MUSES72323 基板の左チャンネルのシールド線を利用して、アース電位を供給していた。 こうすれば、上述のループは形成されない。

上図だと、アースラインのループは形成されないが、シールド線によるアース電位は、左チャンネルの信号により、影響を受けることになる。 もしかすると、信号が大きくなると歪み率があがるのはこのためかもしれないと、風呂の中で考えたのだ。 シールド線を通して入力端子の GND をつなぐのではなく、下図のように HPA-1000 の SGND から直接つなぐことにするのだ。 こうすれば、ループも形成されないし、チャンネル信号がアース電位に影響を及ぼすこともない。

結果は大成功で、全体的に歪み率が下がった。 たかじんさんのオリジナルより歪み率は今一つだが、NFB量が6dB 少ないことを考えれば妥当と思われる。 音質はぐっと変わった。 ダイナミックさが大幅に増した。 たった一本の配線の違いで、こんなに影響が及ぶことがあるという貴重な体験をした。 

無帰還A級ディスクリートヘッドホンアンプ HPA-1000 ・・・測定してみる

音が聴けるようになって、たかじんさんのコメント「高級ヘッドホンを駆動するならHPA-1000がおすすめです。 HPA-12からすると一つ上の階に上がったかのような景色が見られると思います。」が気になる。

確かに、HPA-12のA級ミニアンプ(27番のところ)で、ヘッドホンを駆動するより良いのだが、上流の音源次第であるように思えるし、一聴して上という感じがしない。 ブラインドで聴かされたら区別できない。 HPA-12のA級ミニアンプが思いのほか良いのだろうと思っていた。

(クリックで拡大)
(クリックで拡大)

周波数特性は左右ともほとんど同じで、-3dB 点はおおよそ 270kHzだ。 位相回転も少なく、素晴らしい特性といえる。

ところが歪み率特性を図り始めたら、とんでもないことがわかった。ヘッドホンを考え、33Ω負荷にて測定したところ、1kHz での歪み率は、0.1mW では左右とも 0.07% と同じだが、10mW では左ch 0.17%、右ch 0.02% と差が開き始め、30mW では左ch 1.0%、右ch 0.07% と桁が違ってくる のだ。 1000mW 程度の定格出力であることを考えると、30mW でこんな歪み率になるのは、あきらかに異常といえる。

どこがおかしいのだろうか。 解決できるのだろうか。

to be continued…

無帰還A級ディスクリートヘッドホンアンプ HPA-1000 ・・・音が出るまで

HPA-1000 の入力端子は、はんだ付けではなく、2.54mm ピッチのヘッダピンにしておいたので、そこをショートするとハム音が消える。 外部から適当な音楽を流し込むときれいな音が流れることから、問題はMUSES 72323 ボリューム基板である。

オシロで動作することを確認していたのに、なぜだ? 壊してしまったかと、取り外してオシロで再確認すると、問題がない。 きちんとボリュームとして動作している。

ハムがでることから、アース関係だろうと思われることからアースの問題だと思われるが、電源を PRT-03 から取っている以上、アースはつながっているはず。 すぐに考え付いたのは、シグナル関係のアースがつながっていないのではと考え、HPA-1000 両基板の SGND間のアースをワニ口クリップでつないでみると、音は出るけどボリュームとしては機能していない。 たかじんさんのホームページでヘルプをもらおうかと思ったが、回路図片手に考えてみることにした。

(クリックで拡大)

回路図を検討すること1週間、わかったことは次の通り。

  1. 電源のGNDは、信号ラインのアースにはつながっていない。
  2. 信号ラインのアースは、左右で分離している。
    → 現状の配線では、信号系のアースがつながれていないので、ハム音がでるのは当然。
    → PRT-03 に一点アースするのが低雑音の決め手であることから、信号ラインのアースは、HPA-1000 の SGND からループができないようにつなげばよい
  3. たかじんさんの説明ページでは、アッテネータとして使う時には、オペアンプの3番と6番をつないで使うように指示があるが、そうすると、MUSES72323 の R+ 信号と R(OUT)信号が混合されることになる。
    → MUSES72320 基板と同じ使い方をするなら、3番だけから出力を取り出せばよい。

以上が正解で、音が出始めた。 「めでたし、めでたし」と思ったが、本当のトラブルシューティングは、実はこれから・・・

to be continued…