アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・電源をどうするか

電源を考えた時に、以前に作ったバランス型プリアンプとは異なる難しさがある。 ひとつは、MCカートリッジ対応のためにノイズ対策を厳重に考える必要があることだ。 もうひとつは、Unbalanced-Balanced 変換基板 でも苦労したように、スペースがないことだ。

バランス型プリアンプでは、デジタルアッテネータの部分と、2つのフラットアンプの電源を、すべてトランスを分けることができた。 今回は不可能だが、せめてデジタル部分とアナログ部分ぐらいはわけたい。 また、ノイズ対策を考えると Rコアトランスを使いたい。 既製品があるわけではないので、特注品となるが、やむを得ないと思っていたところ、ヤフオクに 12V 2回路のRコアトランスが2個セットで出品されたので、手に入れた。 コアの大きさから 30VA 程度と考えられ、このプリアンプには十分だ。

ぺるけ師匠の私のアンプ設計&政策マニュアルのアース回路の解説にあるように、電源ラインにある電解コンデンサには、リップルフィルタとして働いているものと、信号電流の帰路として働くものがある。 このふたつを区別しておくことが大切で、ローカルの基板にもコンデンサを置くことが結構大切だと私は考えている。

たかじんさん設計の Blue Snow DAC でも、デジタル部分とアナログ部分でトランスが分けられており、トランスの近くにリップルフィルタと三端子レギュレータがある。 アナログ部分では、部品近くにローカルのリップルフィルタ&コンデンサが配置されている。 今回はこのパターンをそのまままねすることにした。 お気楽オーディオさんの TypeJ電源基板を利用した。 ショットキーバリアダイオードで整流後、デジタル用では日本ケミコンの105℃低インピーダンス・高リプル電流品で低Z のKZH電解コンデンサの並列使用、アナログ用では、オーディオ用ハイグレード品電解コンデンサ MUSE KZ 電解コンデンサの並列使用とした。LM317/337 で定電圧化後のパスコンには、MUSE KZ と OSコンデンサを併用した。スペースの関係で、チャンネルごとにイコライザ関係部分と ClassAA フラットアンプには、CRとトランジスタによるリップルフィルタをいれ、それ以外には電源供給部にパスコンをいれた。 これらの電解コンデンサはすべて MUSE KZ を使った。 おかげで、MUSE KZ 1000μF 25V の在庫をかなり使うことができた。

ローカルリップルフィルターとパスコン

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・Unbalanced-Balanced 変換基板

このプリアンプは、電気工作作業部屋に置くので、いろいろな入力があったほうがよい。 ところが、とにかく場所がない。 当初、たかじんさんの アンバランスTOバランス変換基板 BLA-01を用いるつもりであったが、95mm × 65mm と大きく、これを乗せるスペースはない。 よって、Unbalanced-Balanced 変換には、できるだけ小さくユニバーサル基板で組むことにした。

いろいろ調べてみて、目を付けたのは、ぺるけ師匠の OPアンプを使ったバランス型ヘッドホンアンプ  である。 特徴は、オペアンプを反転型として利用しているところにある。反転型の良さはたかじんさんの記事に詳しい。 ぺるけ師匠は、OPA2143 を使っているが、OPA2134 は手元に数個しかなく、入手難であるため、MUSES8920 を利用した。 MUSES01が大好きな私ではあるが、あまり使わないところに高価な MUSES01 を使う気にはさすがにならない。 回路図は以下の通り。 ぺるけ師匠の設計だけあって、実に安定。 特性は、DC ー 70kHz(-3dB)で、最小歪み率は WaveGene/WaveSpectra では測定限界以下。

この他、電源供給部に、MUSES KZ 電解コンデンサがパソコンとして入っている。

この基板で苦労したのは、とにかく小さく組むこと。 思考実験を繰り返し、Takachi TNF34-49( 34 x 49mm)に組み上げた。 裏面にも抵抗を配置しないと間に合わない。 BLA-01基板の1/4の面積ですますことができた。 でも、二度とやりたくない・・・。

バランス入力・アンバランス入力が自動で切り替わるように、TRS入力端子は2回路の独立スイッチ付き。 TRSに差し込むと、TRS入力に切り替わる。 小林電機商会で入手した。

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・ClassAA フラットアンプ

とにかく場所がない。 先のバランス型プリアンプでは、フラットアンプとして、たかじんさんの HPA-12 を使い、それぞれに専用トランスをつけた。 場所がない以上、オペアンプで作成することになるが、少しでも音質的に有利になるようにしたい。

目を付けたのは、たかじんさんによる禁断のClass AA ヘッドホンアンプである。 ClassAA とは、Technics が開発した疑似A級アンプ方式だ。 電圧増幅と電力増幅を別々のオペアンプに行わせるので、単なるオペアンプ一発よりも、低歪み率で高ドライブ能力を誇る。 動作原理は、たかじんさんが、テクニクス ClassAA回路とはテクニクス ClassAA回路の実際 のページに詳細な解説をしてくださっている。

ClassAA フラットアンプ

上図の実験(ただし CNF なし)で、-3dB が 900kHz と極めて優秀な周波数特性を示した(下図)。 位相補正を加えた上で、この回路に決定だ。 最終的には位相補正は、6.8pFが最適であった。

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なお、実装して、VOL-12/01 基板につないでみたところ、上図の回路のままだと発振してしまった。 バランス型プリアンプは完成するか・・・またもトラブル発生と同じかもしれない。 HPA-12基板と比較して、この ClassAAフラットアンプが圧倒的に広帯域であることを考えると、当然かも知れない。 先の例にならって、入力に 1kΩ ー 220pF のハイカットフィルタをいれたら、安定しましたとさ。

アナログ対応のプリアンプを作ろう・・・フォノイコライザーのサブソニックフィルターとバランス対応

出典: https://www.analog.com/jp/products/lt1115.html

フォノイコライザーは上記の回路で、この出力を平衡出力にすることと、サブソニックフィルターをいれることが目標だ。

最初のアイディアは、オペアンプによる unbalance-balance 変換回路を付加し、その後に CR型の 6dB/Oct のハイパスフィルターをいれるというアイディアだ。 比較的シンプルと言えるが、フィルタ特性は良くない。

アクティブフィルターにするというのも可能性としてはあり得る。 実際に計算してみるとわかるが、アクティブフィルターにすると低域特性が波打ったり位相がとんでもないことになったりということで、どんなアクティブフィルターにするかという設計思想の問題が多数出てくるようだ。 本格的なアクティブフィルターをつくることにすると、間違いなくそれだけでオペアンプ2回路を要するし、設計もいろいろ大変だ。 周波数特性を優先すると、位相特性が悪化したり、波形応答が悪化したりとといったジレンマが生じる。 回路規模がだいぶ大きくなることは必定だ。

unblance-balance変換回路後に、CR型のハイパスフィルター程度しか自分では設計できないなぁと思い始めたが、unbalance-balance 変換に優秀なライントランスを使うというのはどうかと思った。 優秀なライントランスなら、イコライザー出力程度の電圧なら、10Hz-100kHz 程度を 0~-1dB 程度 の周波数特性を保証できる。 サブソニックフィルターは考えなくてもそうなる。 手元に、TAMURA TAM121115 150Ω:600Ω とちょうど良いトランスもあるので実験してみた。

LT-1010CT は出力電流 ±150mA とかなり強力なので、そのままドライブできるのではとつないでみたところ、イコライザーのNF素子と両方の負荷はさすがに重すぎるようで、波打った周波数特性になってしまった。

オペアンプ一段のバッファ(LME49720)をかませてみると、低出力インピータンスでのドライブになるためか、数10kHz に急峻なピークが現れた。 これを是正するために試行錯誤したところ、R=680Ω/C=1000pF のローパスフィルタを一次側に挿入し、二次側の負荷抵抗を3.9kΩとしたところ下図の特性(オリジナルのEQアンプからの偏差)を得た。

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20 – 20kHz はほぼフラットで、8- 300kHz(0~3dB) と理想的な特性とといえる。  この解決策の問題点は、トランスを利用するため場所をとるということに尽きる。