MC ヘッドアンプに挑戦 | (98/3/24 記) |
このころは、まだ LP 全盛時代だったので、好みの音を変える大きな材料として、カートリッジがあった。 私の好みの演奏家(Elly Ameling, Ingrid Haebler, Arthur Grumiaux ...)がほとんど、Philips レーベルに集中していたことから、試しに一本と思って買った Philips のカートリッジが、自分の好みによく合っていた。 422-III という型版で、MM 型のカートリッジだ。 弦楽器が柔らかく響く。 そのかわり、ピアノはちょっと苦手だ。 Steinway & Sons のような細く堅めの音には似合わない。 しかし、Bsendorfer のふっかりとした柔らかな音の表現は得意だ。
その Philips から、922-II という MC 型のカートリッジが発売になった。 これは、422-II の音をきりっと引き締めた感じで、クラシックのピアノにはちょうど良い。 Steinway & Sons も上品に響く。 もちろん、422-III も 922-II のどちらも Jazz には似合わないが、そういうときには、Shure の出番だ。
さて、922-II を、先に作った管球プリにどうやってつなぐか? が次の課題になった。 とりあえず、922-II は、Denon PMA-970 で聴いていたが、自分で作った管球式プリアンプができた以上、自分で作った昇圧手段で聴いてみたいと思った。 もちろん、ヘッドアンプだけではなく、トランスを使う手もある。 最初に使ってみたのは、トランスだ。 タンゴから出ていた MCT-999 というトランスを購入した。 しかし、これは、はっきり失敗だった。 トランスを使わずに、直接 MM 入力につないで、ノイズに埋もれながら聴いている方が、まだまともに聞こえる。 MCT-999 が悪いというよりは、相性が合わなかったのであろう。 さっそく MCT-999 を売り払い、AU-340 (DENON) を試聴しに行く。 これもいまひとつ乗り気になれない。 お店の人曰く、「ヘッドアンプの方がお好みに合うでしょうね。」と。 ところが、ヘッドアンプというと、\ 100,000 以上の製品がほとんど。 それならば、自分で作ってしまえ。
さっそくパーツ屋に走り、2SK-146 あるいは 147 あるいは 170 を手に入れようとするが、在庫はないという。 取り寄せを頼んでも、いつになるかわからないとのこと。 さすが地方都市、仙台 \(^^)/ お手上げ。 FET カタログを片手に、MC-ヘッドアンプの初段に使えそうな石を、そのお店の在庫から探したところ、2SK-117 なら大量に在庫があった。 在庫の 50 本を全部買い込み、そこからノイズレベルの低いものを選別することにした。 最初に作ったのは、ラジオ技術に載っていた、一石式の単純なのヘッドアンプ(回路図)。 電池駆動で、カートリッジ内に組み込んでしまうタイプのもの。 音は、今までに比べて良かったし、当初は満足していたが、カートリッジの針交換の度に、作り直すはめになるのと、誘導を拾いやすく、カートリッジをさわるだけでも、ノイズがでる。 スピーカーを壊しそうで、ちょっと精神衛生上悪い。 もうひとつの問題は、電池駆動という点だ。 意外に電池を食うようで、単1の電池でも、1カ月強程度しかもたない。 やはり、AC 電源を使いたいところだ。
いずれにしても、仕切り直し。 あまり複雑なものを作ってもしょうがない(影の声:作れないんだろ)ので、FET を真空管だと思って、作り直すことにした。 それなら、真空管プリと同じく、SRPP でいけば・・・ ということで、考えたのが、SRPP もどきの回路(回路図)だ。 これは、SRPP もどきで、単なる定電流負荷の一段増幅+定電流負荷のソースフォロア回路である。 いつものごとく、オーバーオールの NFB はなし。 電源部(回路図)もいつも通りだが、リップルフィルタ代わりに三端子レギュレータを一発かませた。
S/N 比は、入力換算で、- 125 dB 程度(15 Hz 以下 6 dB/oct で切り捨て)取れたので、ノイズマージンは、55 dB 強とれた。 素人が作成した MC ヘッドアンプとしては、まずまずの成績だろう。 音質は、無帰還らしい奔放な(ちょっと荒れ気味な)音だが、気になるほどではない。 喜んでいたら、オーディオ店から電話が・・・。 Philips の MC ヘッドアンプの中古がでたけど、買うかって? そんなわけで、私は常用の MC ヘッドアンプが二台あります(^^)。
(to be continued...)