真空管な日々(その4) (98/4/7 記)
 

これまでの話で、おわかりの通り、一応、MC 入力から 6G-A4 シングルアンプまで、 次作アンプだけで、音を出せるようになった。 数ヶ月の間、この組み合わせで満足していたのだが、製作の虫が動き始める。 6G-A4 シングルアンプに大きな不満はないが、低域の伸びがもう少ししっかりしていると、もっとうれしい。 そう考えると、次なるターゲットを考えると、プッシュプルアンプしかない。 今にして思うと、大出力のシングルアンプという手もあったと思うのだが。

 出力段を何にするかが、最初の問題だ。 今まで三極管ばかり使ってきたので、ビーム管、五極管というのもいいかもしれない。 候補は、6V6GT, 6CA7(EL34), 6GB8, KT88 とよりどりみどり。 一方、三極管の方は、2A3、6G-A4, 3C33, 50CA10, 8045G お金がありあまるほどあれば、WE-300B プッシュプルとか・・・冗談ですから、真に受けないように。 私の場合、低能率スピーカー(89 dB/m)にもかかわらず、聴取レベルが低いためか、数 W あれば、十分のようなので、目標出力は、5 W 程度で十分なので、どれでも問題はない。 結局、球のイメージ(と経済力)で決めるしかない。 最初に考えたのは、手持ちにあった 6GB8 であるが、自分で作ろうと思っている矢先に、請われて、嫁入りしてしまった。 次は、やはり 6CA7 を考えた。 有名な球だし、シングルの時の実験でもいい音を聴かせてくれた。 ちょっとクールな感じも悪くない。 そんなときに、MJ「無線と実験」の部品交換のコーナーを通じて、6G-A4 の新品を 2 ペア入手した。 友人が、私の 6G-A4 シングルを試聴して、自分で使う予定がないからスペアにと、1 ペアをいただいた。 手元には、使用している分も含めて 6 ペアあることになり、これは、十分な数量である。 皆様ご存じのように、私にとっては、6G-A4 は、シングルでもお気に入りの音を出してくれている、かけがいのない球である。 結局、また、6G-A4 ということになった。

さっそく、製作記事をあつめたのだが、人気がない球のせいか、意外なほど製作記事が少ない。 魅惑の真空管アンプその歴史・設計・製作(浅野 勇 先生監修)に1件、ラジオの製作に1件、初歩のラジオの別冊に1件と合計3件。 その当時、黒川達夫さんの MJ の記事はまだでていない。 

出力段の設計は、私の場合はおおざっぱ、かつ、簡単である。 A1-PP で出力は十分なので、ロードラインの引き方の問題などは出てこない(影の声: わからないことを避けて通っているんだろ ^^)。 問題は、位相反転段である。 私の手元にある測定器は、低周波発振器とオシロだけなので、ミュラード型のように、厳密な AC バランスを要する(と思われるもの)は、ふさわしくないと思った。 今なら、情熱の真空管の記事を読みながら、差動型なんかに手をだすのでしょうけれど。 無難なのは、抵抗の精度だけで、反転の精度が決定する P-K 分割型でしょうけれど、この回路は、カソード側とプレート側との間で、出力インピータンスが 10 倍以上異なるので、どうやっても、高域(20 KHz 以上)では、バランスがとれない。 それに利得配分でも、あんまりいいことはない。 いくら、6G-A4 が、2A3 に比べてドライブしやすいと言っても、初段増幅+PK 分割 だけだと、初段に高利得の五極管を持ってこないと、フルドライブできない。 だからといって、初段増幅+ PK 分割+ドライブ段 と三段構成にすると、利得は余りがちだし、その一方で、over all NF をかけるのが不安定になりかねない・・・。

いつまでも迷っていても、音は出てこない。 十分な設計もしていないのに、私は、トランスを買ってしまった。 出力トランスは、MJ に載っていた Tango FX-50-8G を特注したのだが、3カ月待たされた挙げ句、あえなく断られた。 有名な著者が欲しいと言えば、親身になってくれるのだろうけれど、一地方都市の住人には、Tango は非常に冷たかった。 LUX の OY シリーズは、既に製造中止で、それでも、Tango の製品を買うしか選択肢はなかった。 製品ラインの中から、FX-40-8 を選んだ。 この出力トランスも、発注してから、手元に届くまで、数ヶ月かかった覚えがある。 この時以来、Tango に対して、私は悪いイメージしかもっていない。 電源トランスは、6G-A4 PP には、定番の ST-220 チョークトランスは、5H / 250 mA 程度のものを選んだ。

いろいろ迷ったのだが、結局、当初はオーソドックスにということで、6AU6 (初段増幅、五極接続)- 12AU7A (パラ、PK-分割)- 6G-A4 PP(自己バイアス)という回路でスタートした。 オーソドックスで無難な回路であるが、12AU7A の PK-分割では、6G-A4 をドライブしきれないようで、この段の方が先にクリップすることがわかったので、結局、12AU7A (SRPP 初段) - 12AU7A (パラ、PK-分割) - 12AU7A (SRPP ドライブ段)- 6G-A4 PP(自己バイアス)という回路構成で、一応、組み上げた。 例によって、定電圧電源付きだが、電流量が大きいため、ラッシュカレント対策には、かなりの試行錯誤を要した。 何個制御用のトランジシタをダメにしたか、覚えていないほどだ。 こんなことをやっている間に、MJ「無線と実験」に、黒川達夫さんの 6G-A4 PP の卓越した記事が掲載され、今度はそれのデッドコピーに挑戦しようと思っていたのだが、それを果たせぬうちに私の大学生活は終わりをつげた。

私の 6G-A4 PP アンプは、今なお、試行錯誤の中で止まっている。 

(to be continued...)

続きに進む
このページのトップに戻る
AUDIO な日々 の一覧に戻る