真空管な日々(その3) (98/3/24 記)
 

真空管プリアンプを作ろうと思いたったのはいいのだが、どんな設計をしたらいいのか? 過去の「MJ 無線と実験」の記事を片っ端から読んだものの、甲論乙駁で、いいところをつなぎあわせて・・・ なんて虫のいい話は作れそうにない。 冷静になって考えてみれば、10 人著者がいれば、10 のオーディオ論があって当然なので、当たり前のことだ。

さて、私の場合は、どうするか? 相方の 6G-A4 シングルが無帰還アンプのため、けっこうハイゲインになっているから、フラットアンプは不要。 トーンコントロールも、以前に作った OP-アンプ使用のプリアンプにはつけていたけど、使ったことがないので、これまた不要。 そうなると、必要なのは、イコライザアンプだけ。 メインアンプ側に音量調節はついているから、セレクタスイッチも何もかも省いてしまおう。 そうすれば、作るのも楽だし・・・。

現在では、世間並みに、私のメインソースは、CD になっているが、当時はまだ CD が出始めたかどうかぐらいのころ。 当然、メインソースは、LP だ。 イコライザアンプをどのようにするか? というのは、当時は結構大きな問題であった。

RIAA カーブをどうやって得るかで、CR 式、NF 式 あるいはその折衷と大きく分けられる。 歴史的な名器は NF 式だ。 Marantz #7 しかり。 McIntosh C-22 しかり。 唯一の例外は、Quad 22 ぐらいだろう。 最初に回路を子細に眺めたのは、Marantz #7。 なんかよく分からない小容量のコンデンサがあるなぁ。(陰の声: こんな複雑な NF アンプはおまえには作れないだろ。) おつぎは、McIntosh C-22 だ。 これなら、デッドコピーなら作れるかもしれない。 (陰の声: どうせ NF で発振させるくせに。) まあいいや。 まず普通の二段 NF 帰還型のを作ってみよう。 これなら、ラジオの製作にも出ていたぐらいだから、簡単だろう。 あぁ、最初の名器の回路図検討は何のためだったの・・・ なんて言わないように。

12AX7A 二本ですむし、電流は微量だから、6G-A4 シングルから分けてもらえばいいし・・・ただ、電源には、リップルフィルタをさらに入れておこう・・・ なんてお気軽な発想で、1日がかりで組み上げてみた。 簡単だったけど、音は最低。 平板で無機質な音。 LF-356 使用の OP-アンプ使用のプリアンプにも完敗する始末。 このアンプで唯一満足できたのは、雑音レベルのみ。 入力換算で、-110 dB ぐらいはとれた。 ノイズマージンは、一応 60 dB とれるので、合格レベル。

改良するとすれば、二段 NF 型の後ろに C-22 のようにカソードホロワをつけることだろう。 すぐに 12AU7A を使って実験してみたが、あまり効果はない。 音の傾向は、似ているし、改善された感じはあまりない。 それならばと思って、# 7 デッドコピーに挑戦したが、どうなったかは、皆さんの方がよくご存じだろう。 発振して安定しないのだ。 そんなわけで、NF 型は頓挫。

やむを得ず、CR 型に挑戦することにした。 CR 型の欠点は、良好な S/N を得ることがむずかしいことだ。 CR 型の RIAA フィルタは、結構重い負荷になることも考慮しなければならない。 そのかわり、発振などのトラブルは少ないので、私向けなのかもしれない。 このページをずっと読んできた皆さんは、既に想像がついていらっしゃることでしょう。 私が考えたのは、SRPP - CR 型 RIAA filter - SRPP という構成(回路図)。 当然ながら、無帰還。 電源部(回路図)には、6G-A4 シングルと同じような定電圧電源を組んだ。

設計は簡単だったが、製作には苦労させられた。 地方都市では、1 % 精度のコンデンサなんて手に入らない。 左右の両チャンネルで、15 Hz - 30 kHz: - 1 dB / + 1dB にいれるのに、結構な時間の try and error を強いられた。  雑音の方は、定電圧電源の効果があってか、入力換算 - 103 dB 程度とれた。 常用の MM カートリッジは、入力換算 -47 dB 程度なので、ノイズマージンは、55 dB 程度だったが、実用上は、問題はない。 音質の方は、清楚でほっそりとした美人・・という感じ。 私の好みの音質に仕上がった。 (おとなしすぎると言う意見もありましたが・・・)

ここまで来れば、後は、MC ヘッドアンプ(?)あるいはトランス(?)だ・・・。

 

(to be continued...)

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