Der Rose Pilgerfahrt, Op. 112 (その6) | (99/9/12 記) |
さてさて、歌詞全文の邦訳はいかがでしたでしょうか。 お願いだから、つまらないなんて言わないで。
さて、この曲の聴き所ですが・・・。 私の好みでしかありませんが、第 17 曲の、ばらとテノール独唱(林務官の息子)との愛の賛歌があげられるでしょう。 こういう喜びの表現は、Frauenliebe und -leben と同じく、Robert の独壇場とも言える箇所です。 逆に、第 23 曲の今まさに、死にゆかんとしているばらの Das ist kein bleicher, Schwarzer Tod, Das ist ein Tod voll Morgenrot!(わたしの死は暗くも冷たくもありません。それは朝日の赤い色に満ちあふれた死なのです。)の部分の陰影の深さはどうでしょうか。 この部分にすぐに続く Tenor-solo の静かな響きや、最終曲の導入部の救済の表現も素晴らしいと思います。
この曲の難点は、多くの人々が指摘しているように、題材の内容のわりに構成があまりに大きすぎることがあげざるを得ないでしょう。 オーケストラと混声合唱団に加えて4人の独唱者が必要です。 何しろ内容は童話ですから。 楽園から、この世に生まれいでる。 辛酸をなめた末に幸せな日々を送って死を迎える。 そして最後には天上の国へと救済される。 キリスト教的な側面を持っているとも言えますが、最初から原作者が示しているように、童話の域を出ないのです。 この意味でも、最初にかかれたピアノ版は、この曲の良さを、うまく表しているとも言えます。 私自身がこの曲の素晴らしさを知ったのも、ピアノ版でした。 オーケストラ版しか聞いたことがない方は、ぜひともピアノ版をお聴きになることをお勧めします。
discography録音は、非常に限られており、LP 時代には、Rafael Frbeck de Burgos によるオーケストラ版の録音(1975 年)しかありませんでした。 この他に、オーケストラ版としては、Gustav Kuhn による演奏と Spering による演奏があります。 Spering による演奏は古楽器を用いた演奏です。 ピアノ版は、長らく Rupert Huber (Pf: Roberto Szidon) による録音しかありませんでしたが、今年(1999 年)となって、Marcus Creed (Pf: Philip Mayers)が発売されました。 この録音では、1850 年代に作成された Streicher 製の Pianoforte (Clara が愛用したピアノのメーカー!)が使用されています。 他の録音をご存じの方は、ぜひとも教えてください。
ピアノ版
1) Rupert Huber 指揮、Roberto Szidon ピアノ、Sdfunk-Chor, Stuttgart 合唱、Rosina Bacher ソプラノ、Scot Weir テノール (ebs 6075)
優れたピアノ伴奏により、美しく澄み通った演奏が聴けます。 私がこの曲の美しさを教えてもらった CD です。 ここの掲示板で、伊藤さんから教えてもらいました。 一押しの演奏ですが、CD は国内では入手困難ではないかと思います。 1999 年 7 月現在では、インターネット通販で、Berkshire Record Outlet:廃盤専門店 より購入することができます。
2) Marcus Creed 指揮、Philip Mayers ピアノ、RIAS-Kammmerchor 合唱、Christian Oelze ソプラノ、Birgit Remmert アルト、Werner Gra テナー、Hanno Mller-Brachmann バス (Harmonia Mundi France, HMC 901668)
先に書いたように、Pianoforte を用いているのが新味ですが、それに加えて、Huber 盤と異なり、一部の合唱が、独唱者群で歌われています。 その結果、合唱だと発音が濁りやすいところが、非常に聴き取りやすいという特徴があります。 韻律などの詩のもつ楽しみを十分に味わうことができる演奏になっています。 その意味で、Huber 盤との聴き比べをお勧めしたい盤です。 この CD には、英仏語の対訳がついています。 但し、英語は直訳風のスタイルで、何を言っているのかよく分からない感じがします。 (この英語を読むより、このホームページの邦訳のほうがまだいいですよ〜 ^^)
オーケストラ版
3) Rafael Frbeck de Burgos 指揮、Dsseldorfer Symphoniker 管弦楽、Chor des Stdtischen Musicvereins e.V. Dsseldorf 合唱、Helen Donath ソプラノ、Kari Lvaas アルト、Theo Altmayer テナー、Bruno Pola バリトン、Hans Sotin バス (EMI 1C 193-28 842/843, LP)
とにかく、ずっとこの演奏しかないものだと思っていました。 手元のレコードは、SQ 方式の 4 チャンネル方式対応! と時代を感じさせるものです。 長いこと、私はこの曲をこの LP で聴いてきましたが、管弦楽の重さにひきづられて、曲を誤解していたような気がします。 この点は、この演奏が悪いためではなくて、管弦楽版の演奏では、どれでも、曲が重々しくなってしまう傾向があります。 この LP は歴史的名盤と言えましょう。
4) Gustav Kuhn 指揮、Danish National Radio Symphony Orchestra and Chor 管弦楽・合唱、Inga Nielsen ソプラノ、Annemarie Moller アルト、Deon van der Walt テナー、Guid Paevatalu バリトン、Christian Christiansen バス (Chandos Chan 9350)
比較的、現在でも入手が容易な CD ではないでしょうか。 管弦楽版らしい重々しさを、やはり感じてしまいます。 独唱者の発音が聴き取りにくく、個人的には、あまり印象に乏しい盤です。
私の愛聴盤は、現在、上記のうちの、2) Marcus Creed 盤と 5) Christoph Spering 盤になっているようです。 とはいえ、1) の Huber 盤も捨てがたいものがありますし、他の演奏を聞かないわけではありません。 ピアノ演奏版は、どちらも、Robert の歌曲に通じる巧みさを感じます。 Robert らしい ピアノの使い方も至るところで感じます。 とにかく、ピアノ版をお聞きになったことがなければ、ぜひとも一度は聞いてみることをお勧めします。
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