Der Rose Pilgerfahrt, Op. 112 (その1) (99/7/11 記)
 

Der Rose Pilgerfahrt, Op. 112(ばらの巡礼)は、デュッセルドルフ時代の初期にかかれた作品です。 当初、ピアノ伴奏つきで、ソロと合唱のために書かれました。 Robert が私的に組織していた 30 人ほどの Singerkrnzchen (歌手の小さな輪とでも訳せばよいのか)と Clara のピアノで演奏されたようです。 1851 年 7 月 6 日に初演されています。 この後、Robert 自身により、ピアノ伴奏部のオーケストレーションが行なわれ、オーケストラ版は、1852 年 2 月 5 日に初演されています。

この詩(テキスト)は、Moriz Horn によって書かれている童話です。 天国のバラの精は人間界の愛を経験してみたくて、妖精の女王の許しを得て、下界に降りてきます。 そして、愛の苦しみと喜びとを知った後に、再び昇天するというのが、おおむねの内容です。 Das Paradies und Die Peri(ペリと楽園, Op. 50)の場合は悪事を働いた妖精が下界に追放され、試行錯誤の末に天界の許しを得て、天界に戻ることを許されるというストーリーで、 この作品とのストーリー上の共通点が見られます。 この世のさまざまな辛酸をなめながら、それらの体験を糧として、魂の浄化が行なわれて救済されるというのが、Robert の願いでもあり、また、その当時の人々の共感を得たようです。 この曲は、19 世紀のあいだはけっこう演奏された記録が残っておりますが、20 世紀に入ってからは、めったに演奏される機会がないようです。

この時期の Robert は、童話に興味をもっていたようで、ヴィオラとピアノのための童話の絵本(Op. 113)や、クラリネットとピアノのための童話(Op. 132)を作曲しています。 現実を超越した世界に対する Robert のあこがれの現れかもしれません。 超現実的な世界が、童話の世界にも見いだされるのみならず、彼岸の世界にも通じているように感じていたのかもしれません。 この時期の Robert は、既に交霊術にのめりこみ、彼岸と更新しようとさえしていたのです。

ここでは、Huber 指揮の CD (ebs 6075)のライナーノートをもとに、歌詞を紹介いたします。

Erster Teil(第一部)

Nr. 1 (第1曲)

Frauenchor
Die Frlingslfte bringen
Den Liebesgruss der Welt,
Des Eises Bande springen,
Es grnt das de Feld.
女声合唱
春風が、世界に愛の挨拶を、運んでくる。
硬い氷がとけて、荒れた野原が、緑におおわれる。
Die ersten Blumen tauchen
Aus Grnem Viesenplan,
Und schau'n mit Kindsaugen
Uns frhlingsgkbig an.
すると最初に、緑の野原のなかで、花がつぼみをふくらませる。
子供の目のように、春への思いを、私たちになげかける。
Im maiengrnen leide,
Mit Blten reich gestickt,
Hat sich zur Osterfreide
Ein jeder Baum geschmckt
木々も、五月の緑をまとい、花でかざられて、楽しい復活祭を 待ちかまえている。
O sel'ge Frhlingszeit!
Du trocknest stille Trnen,
Die unsres Herzens Sehnen
Geweint im tiefsten Leid.
よろこびにあふれる春という時よ。
春は、秘められた涙をぬぐってくれる。
深い悲しみにうちひしがれて、私たちが心の中で流していた涙を。
In manche Winterbrust
Tnt auch dein Sonntagsluten,
Und mancher Keim der Freiden
Erwacht zu neuer Lust
暗い長い冬のあいだの、日曜日の鐘の音も。
そして喜びの芽がいくつも目覚めて、(春の)新しい喜びになっていく。

Nr. 2 (第2曲)

Tenor-Solo
Johannis war gekommen,
Der Erde Hochzeitstag,
Wo sie als Braut am Herzen
Des lieben Frhlings lag.
テノール独唱
聖ヨハネ祭がやってきた。
天地の婚礼の日で、大地は花嫁となって愛らしく春に抱かれる。
Die stille Nacht umschleiert
Den Schlummer der Natur.
Das blasse Licht des Mondes
Durchwandelt Hain und Flur.
静かな夜のしじまは、自然のまどろみを、包んでくれる。
月の青い光は森や野原を照らしてくれる。
Die kleinen Blttchen schwirren
Kaum hrbar in dem Baum,
Um schilf und Wasserblumen
Schwebt Schlaf und Abendtraum.
樹木の小さな木の葉は、音もなく、そよぎ続ける。
眠りと夜の夢が、葦や睡蓮に訪れる。
Alt-Solo
Was ist auf jener Wiese
Fr zauberischer Sang,
Und unterm Frhlingsgrase
Fr wunderlicher Klang?
アルト独唱
草原からきこえてくる、摩訶不思議な歌は何?
また、春の草原からきこえてくる、あの不思議な響きは何?

Nr. 3. Elfenreigen (第3曲、妖精の輪舞)

Chor der Elffen
Wir tanzen, wir tanzen
In lieblicher Nacht.
Bis der Tag vom Schulummer
Morgenrot erwacht,
妖精の合唱
私たちは踊っている。
この心地よい夜に、踊っている。
夜の眠りからさめて、朝日がさしこむまで。
Bis vom Thau die Blume
Neues Leben trnkt,
Hoch auf, liederselig,
Die Lerche sich schwingt.
花が朝露から新たな命のもとを飲み始めるまで。
空高く、この上なく、楽しげな雲雀がさえずり始めるまで。

Nr. 4 (第4曲)

Tenor-Solo
Und wie sie sangen, da hren sie
Eine zarte, klagende Melodie.
Flugs hlt der Tanz, der wirr gerauscht
Und Alles auf das Liedchen lauscht,
テノール独唱
妖精たちが歌っているときにも、ひそかな嘆きのメロディがが聞こえる。
輪になっていた踊りは、急に止まってしまう。 そして、誰もが、その小さな歌にききいってしまう。
Rose
Frhling ist nun wieder kommen,
Hat gerufen:"auf, erwach!"
Was soll mir das Blhen frommen,
Der das herz vor Sehnen brach?
ぱら
春がまたやってきた。
「咲きいでなさい!」と、さきやいた。
思いのたけのあまりに、心のはりさけた私が 咲き出したとて、どうなるのでしょうか?
Wenn die Mdchen mit mir kosen,
Wenn von Liebe singt ihr Lied,
Klag'ich, da uns armen Rosen
Nie ein Liebesfrhling blht!
乙女が(ばらの)私に恋を打ちあけ、恋人に愛の歌をうたうとき、
わたしたち哀れなばらは、愛の春を迎えることはできないのですと、と訴えたいのです。
Frsitn der Elfen
Du trich Kind,
Du wnschest dir der Liebe Lust,
Wohl dir, da du von ihren Schmerzen
Bis Diesen Frhling nicht gewut.
妖稚の女王
おまえは、おばかな子供だねぇ。
おまえは、この春まで知らなかった愛のよろこぴを欲しがっているけれど、 愛には苦しみもあることを知らないでしょう。
Rose
Ich mmcht' es tragen, alles Weh,
Ich fhl' mich stark-
ばら
そうであっても、私は望んでいるのです。 どんな苦しみにも耐えます。
そして、(その苦しみに耐えられるほどの)強さを持っていると思います。
Frsitn der Elfen
Du Rslein, du?
Verlassen willst du unser Reich,
Wo Glck und Frieden ewig walten?
妖精の女王
小さなばらのおまえが?
おまえはわたしの国を捨てるつもりではないでしょうね。
この幸福と平和が永遠に満ちる国を?
Rose
O, lass mich eine Jungflau werden.
Lass lieben mich, den Mdchen gleich!
ぱら
ああ、どうか、ばらのわたしを乙女に変えてください。
わたしを乙女と同じように、愛すことができるようにしてください。
Frsitn der Elfen
Ver langst du's Rschen nun wohlan!
Die Menschen nennen auf der Erden
Die Mdchen ja der Rose Bild;-
Zum Mdchen sell die Rose werden!
Und also sei der Spruch erfllt!
妖精の女王
そうしてほしいのなら、ばらよ、いいでしょう。
この世の人間は、乙女たちをばらに警えているのに、そのばらが乙女になりたいとは!
それでは、願いを叶えてあげましょう。
Und eine Rose sellst du tragen,
Gefeit von mir zu deinem Heil!
Wer sie besitzt der Erde Freuden,
Die reinsten, werden ihm zu Teil.
でもおまえは、ばらを一本持っていなければなりません。
ばらが、おまえの変身のお守りなのです。
このばらをもつものに、この世の喜び、この上ない清らかな至福が与えられるのです。
Doch merke wohl; entfllt sie jemals deiner Hand!
So wirst du aus dem Leben scheiden;
Doch lange nicht! - Ein Frhlingshauch wird
dich als Rose
Zurck ins Heimatland geleiten,
しかし、覚えておきなさい。 それがおまえの手から離れると、おまえは変身した姿ではいられなくなります。
でも心配はいりません! 春の息吹がばらに戻ったおまえを、天国へ連れ帰ってくれるでしょう。
Chor der Elffen
Wir tanzen, wir tanzen
In lieblicher Nacht
Bis der Tag vom Schlummer
Morgenrot erwacht,
妖精の合唱
私たちは踊っている。
この心地よい夜に、踊っている。
夜の眠りからさめて、朝日がさしこむまで。
Bis vom Thau die Blume
Neues Leben trinkt,
Hoch auf liederselig,
Die Lerche sich schwingt.
花が朝露から新たな命のもとを飲み始めるまで。
空高く、この上なく、楽しげな雲雀がさえずり始めるまで。

Nr. 5 (第5曲)

Tenor-solo
So sangen sie; da dammert's schon,
Ein Vogel singt im Morgenschlummer
Die Welt erwacht zu neuer Lust,
Zu neuem Schmerz, zu neuem Kummer.
テノール独唱
妖精たちが歌い、夜が明けた。
一羽の鳥が朝のまどろみのなかで歌い、 世界は、新たなよろこびに、新たな苦しみに、憂いに目覚めさせられる。
Und wie ein Blitz verschwunden sind
Der Elfen luft'ge Scharen,-
Nur auf der Wies' ein Silberstreif
Verrt noch,wo sie waren.-
そしてあっというまに、妖精の群れは、消えうせてしまった。
草原の上にのこされた銀色のおびだけが、そこに妖精たちがいた痕跡としてのこされている。
Auf schlgt das schne Rosenkind,
Wie trumend noch, das Augenpaar.
Ein durftdurchfrischter Morgenwind
Wirft Apfelbluten ihr in's Haar;
芙しいばらの子供がまだ夢みつつ、目を覚まそうとしている。
さわやかな朝風が、りんごの花を、彼女の髪にふりかかる。
Ein Rslein, morgenangegluht.
Am Busen,vielbedeutend, blht.
1本のばら(の女の子)が朝の光に照らされ、期待に胸をふくらませて、咲こうとする。
Rose
Wo bin ich?
Ist's Wahrheit, ist's ein Traum!-
Nein,nein,es ist kein Zauberbild;
Als Madchen wandelnd auf der Erden
Werd'ich durch Liebe glucklich werden.
ばら
ここはどこかしら?
夢なのかしら、現実なのかしら?
いいえ、いいえ、これはけっして夢ではありません。
この世に乙女となってあらわれ、わたしは愛されて、幸せになるのです。
Tenor-solo
Sie steigt den Hugel still hinauf;
Da thut vor ihren Blicken
Das weite Thal sich prangend auf
Begrenzt von Waldestcken.
Erreicht ist bald des ersten Hauses Thr
Sie tritt hinein und bittet freundlich
hier
Um Obdach.
テノール独唱
ばらは、しずかに丘にのぼってゆく。
すると、彼女のまなこの前に、森の背と境をなす深い谷があらわれた。
そしてまもなく、最初の家が見えてきた。
彼女は中に入り、泊めてくれるように、心から、たのんだ。

 

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原詩は、Huber 指揮の CD (ebs 6075)のライナーノートに従いました。
原詩の日本語訳は、私 n'Guin が気のおもむくままに、訳したものなので、誤りがたくさんあることだろうと思います。 誤りを見つけたら、あははははっ! と笑って、私に教えてくださいな。