Große Sonate Nr. 3, Op. 14 (99/4/3 記)
 

Groe Sonate Nr. 3, Op. 14 は、1835-6 年に初版が作曲され、Konzert ohne Orchester という名前で出版されました。 その後、1853 年に Robert 自身による大改定が行われ、Groe Sonate と呼ばれるようになりました。 この時には既に Op. 22 のソナタが第2番と呼ばれていたため、この曲が第3番とされました。 初版の薄幸のときには出版社の注文に従って、協奏曲風な華々しさを出すように変更した第1楽章を、本来書いたままに近いものに戻しました。 最終楽章は、初版では16分の6拍子でしたが、改訂版では4分の2拍子になりました。 初版では、出版社の意向で、当初の5楽章構成からふたつのスケルツォを除去して、協奏曲らしい体裁を整えられておりましたが、改訂版ではひとつのスケルツォを第2楽章として復活させております。  なお、もうひとつのスケルツォは、遺作として発表されております。

おすすめの曲・Kraviersonate Nr. 1 (Op. 11, ピアノソナタ第1番) で、いろいろなモチーフが、楽章内の異なる部分、あるいは、楽章間で転用されて、発展していくのが、それまでの古典派のソナタと大きく違うところだと書きました。 この Groe Sonate Nr. 3, Op. 14 では、Andantino de Clara Wieck(譜例1)が、中心になっています。 この Clara の主題の特徴は、全体が下降調(音程が高い方から低い方へと変化していく)であることです。 この曲以外でも、Clara を想起するとき、下降調のモチーフが出てくると言われているようです。

  譜例1
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第3楽章冒頭を示す。 
全編をわたって流れる Andantino de Clara Wieck(Clara の主題)である。
 

  譜例2
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第1楽章冒頭を示す。 
赤線部が Clara の主題との関連部。 青線部の下降調にも留意。

第1楽章はソナタ形式で書かれています。 譜例2は、冒頭を示しますが、これは譜例1の Clara のテーマです。 譜例3の第1主題もまた、Clara の主題の展開形といえましょう。

  譜例3
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第1楽章第1主題を示す。 
右手のモチーフがが Clara の主題との関連部である。

第2楽章は三部形式ですが、譜例4に示す冒頭の第1主題が Clara の主題の展開形のように思われます。 第3楽章は変奏曲で書かれており、冒頭のテーマが、譜例1の Clara のテーマになっています。 これに対する変奏が続きます。 この楽章のみでも、変奏曲として完成されており、この楽章だけが演奏・録音されることもあります。 第4楽章はソナタ形式で書かれており、このソナタでは、唯一長調の曲です。

  譜例4
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第2楽章第1主題を示す。 

多くの批評家たちから、この曲は、ソナタとしての形式をなしていないと批判されることがありますが、私は、この批判は妥当だと思います。 しかしながら、それは形式論の上での問題であって、この曲の価値を減ずるものではありません。

さて、お勧めの LP / CD ですが、 伊藤恵の演奏(Fontec FDCD3438)を第一に推薦します。 それぞれの主題の情緒的な面での弾き分けが巧みです。 異なるピアノの間を飛び回って弾いているのではないかと思えるほど、キータッチによってピアノの音を変えており、これほどの演奏はめったに聴けません。 ジャン・フィリップ・コラール(LP: EMI CS2081)、仲道郁代(BMG BVCC-1088)の演奏も好演です。 ジャン・フィリップ・コラールの LP 盤は、非常に入手困難なのが残念です。 仲道郁代の CD では、(ファンの方なら想像がつくことと思いますが)第三楽章の Clara のテーマによる変奏曲の演奏が秀逸です。 一般的に、ホロヴィッツの演奏を推す方が多いと思います。 以前は私の愛聴盤でしたが、伊藤恵の演奏を知った後で聴くと、単調で、退屈な演奏にしか聴こえなくなってしまいました。 また、第三楽章の Clara のテーマだけの録音として秀逸なトロップの演奏(DENON COCO-80078)を推薦します。 このほかの演奏として、初版を演奏したバンフィールドの CD (CPO 999 217-2)があります。

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