スピーカー選びと使いこなし(前編) | (99/8/24 記) |
スピーカー選びは大切です。 スピーカーを選択することで、音色の傾向はおおよそ決まってしまいます。 スピーカーは、電気信号を実際の音に変える働きをします。 音は、空気の振動で、人間が、おおむね 20 Hz から 20 KHz の音を聞くことができるのは、ご存じでしょう。 アンプから出た音声信号は、スピーカーのコーン紙などの振動板を振動させて、音に変換されます。 いいかえれば、1秒間に 20 回から、20,000 回の振動をスピーカーが作り出せれば、20 Hz から、20000 Hz の音を作り出せるわけです。
ここで、弦楽器の大きさと弦の長さを思い出してください。 ヴァイオリンと比較して、ヴィオラ、チェロ、コントラバスと、低音の楽器になるにつれて、形が大きく、弦も長いことに気がつきます。 弦が実際の音を作り出しているのはいうまでもありませんが、スピーカーも音を作り出しているのです。 この類推からもお分かりいただけるかと思いますが、(非常におおざっぱな言い方ですが、)大きなスピーカーは低音を出すのに適しており、小さなスピーカーは、高音を出すのに適しているわけです。 ひとつのチャンネルのスピーカーには、たいがい、高音用と低音用など複数のスピーカーユニットがついているのは、こういう理由によるわけです。
ところで、音楽を鑑賞するときには、ある程度スピーカーから離れて、聞きますね。 それはなぜでしょうか。 いろいろと理由が考えつきます。 スピーカーからの直接音と、部屋から反射してくる間接音とを両方聴き取ることも、理由のひとつでしょう。 特に、低音は反射を利用することで、音量を調節することが可能です。 (これについては、後編で述べます。) 高音用と低音用など複数のスピーカーユニットから発射された音を混ぜ合わせられた音を聴きとる必要があることも、理由としてあげられるでしょう。 もうひとつの大切な理由は、スピーカーが音を振りまく範囲(指向性)のことです。
スピーカーに対して、正面、30度ずれたところ、45度ずれたところ、60 度ずれたところ(上図のθがその角度にあたる)で、周波数特性をとってみました。 使ったスピーカーは、手持ちの Rogers Studio 7 で、周波数特性の測定には、測定は大切: 誰でも持っている(?)簡易測定器の紹介で述べた簡易スペクトルアナライザです。 Y 軸は、一目盛り 10 dB です。
スピーカーの正面見ていただいておわかりの通り、スピーカーの正面から、わきにずれていくにつれて、周波数特性が崩れていくのがわかります。 現在、たいがいの方は、スピーカーをふたつ(左と右の2チャンネル)以上、使用されていると思いますが、左右のチャンネルをある程度離して設置しないと、ステレオ効果がでません。 上図に示すように、左右のスピーカを一辺とした正三角形の頂点より後ろがリスニングポイント(聴取位置)として、適当だと言われるのは、スピーカーに指向性があることも、その理由の一つなのです。
さて、スピーカー選びにあたって、それを設置する部屋の大きさとのマッチングのことを私が書きたいのだと感じとった人はとても鋭い(笑)! 上図のリスニングポイントが、部屋の中にあればいいさ・・・ というわけにはいかないのです。 リスニングポイントのすぐ後ろが壁になっていたら、その壁からの反射があるので、ステレオ効果(音場感)が崩れてしまうのです。 リスニングポイントの後ろ側もある程度の空間が必要で、せめて、スピーカーとリスニングポイントとの距離の半分はほしいところです。 それともうひとつ。 ひとつのスピーカーに高音用、低音用・・・などの複数のスピーカーがついている場合には、そのそれぞれのスピーカーからの指向性を問題にしないといけないということです。 このことは、高さが 1 m を越えるようなスピーカーの場合に、大きな問題になります。 指向性を 30 度まで許容する場合で、その高さの倍、15 度とすれば、高さの 4 倍 の距離が必要になることになります。 指向性が強いスピーカーの場合には、大きな問題になります。
つまり、スピーカー選びには、それを置く部屋の大きさや、リスニングポイントがどこになるのか・・・ といったことから、おけるスピーカーの大きさの限界があるということです。 6畳間に、大きなスピーカーを置くことは、物理的には可能であっても、そこからよい結果を生み出すことは、よほどの経験を積んだ上級者でないと不可能だということです。 例えば、私のメインシステムの Quad ESL-63 を6畳間に、物理的に置くことはできるでしょうけれど、その環境でよい音が聞けるかというと、まず無理でしょう。 少なくとも、私には不可能でした。 6畳間のような狭い空間なら、小さめのスピーカーを使って、うまく低音のコントロールをしたほうが、好結果を得やすいのです。 下記に、おおむねのお勧めを上げてみました。 許容できるスピーカーの欄には、スピーカーが占めている長さ(高さ)を示しました。
部屋の広さ(脚注参照) | 許容できるスピーカー | おすすめできる例 |
3畳(1.8 x 2.7 m) | おおむね 40 cm まで | 10 cm クラス (Rogers LS 3/5 など) |
4.5 畳(2.7 x 2.7 m) | おおむね 55 cm まで | 16 cm クラス (Rogers LS 3/5 など) |
6畳(2.7 x 3.6 m) | おおむね 65 cm まで | 20 cm クラス (Rogers Studio 7 など) |
8畳(3.6 x 3.6 m) | おおむね 80 cm まで | 25 cm クラス (Tannoy Starling など) |
10 畳(4.5 x 3.6 m) | おおむね 95 cm まで | 30 cm クラス (Rogers LS 5/8 など) |
脚注: ここでいう部屋の広さは、実際に音がひろがる空間としてあいているスペースのことで、タンスなどを置いているスペースを含んでいません。 例えば、8畳間でタンス、本棚で2畳分使われていれば、6畳のところを参照してください。
念のために、書き添えておきますが、上の表は、あくまで目安に過ぎません。 それを越えるスピーカーを選択した場合には、よい結果が得られないと言っているのではないことにご注意ください。 上の表に従うと、よい結果が得られやすいことを示したつもりです。 現に、私の Rogers Studio 7 の部屋は、実空間では、4畳半程度しかありません。 しかし、良い音で聴くには、それなりの工夫と使いこなしが必要で、ポンと置いただけでは、ひどい音でなってしまいます。 それでは、皆様。 試聴をして、お好みのスピーカーを選んでください。
(to be continued...)