自分の耳を信じよう (99/5/24 記)
 

オーディオ機器の購入の際に、どんなことを参考にしていますか。 誰もがしていることといえば、

  1. オーディオ雑誌を参考にする
  2. オーディオ評論家の意見を参考にする
  3. 友人に意見を参考にする
  4. 販売店での店員の意見を参考にする
  5. カタログを参考にする
  6. 販売店で試聴をする

といったことでしょう。 オーディオ雑誌やオーディオ評論家の意見を聞くというのは、一見、もっともなことに思えます。 ところが、これほどあてにならないことはないのです。 AUDIO 装置の選択というのは、感性の問題です。 聴き手が満足できなければ、意味がない機械なのです。 あなたは、CD を買うときにレコード芸術などの雑誌の評価を気にしながら購入しますか? たいがいの方が NO でしょう。 お気に入りの評論家の記事を別として、あとは、流し読みしていますよね。 AUDIO でも、全く同じでよいのです。 AUDIO は機械だから、性能表が・・・ ということは、全くないのです。 すべて感性で決めてかまいわないのです。

毎年、この手の雑誌は、年間ベストテンのような評価記事を出します。 この結果を信じて、それぞれの部門の最優秀製品を集めたら、良いシステムができると思ったら、大間違い。 音楽の方でも、組み合わせの妙というのがありますよね。 例えば、アルゲリッチとコンドラシンの組み合わせは、アルゲリッチが奔放に弾き放つと、コンドラシンが手綱を引き締めて、ぐっと抑制する。 この組み合わせの妙が、アルゲリッチファンのお好みに合わないかもしれませんが、私のような、アンチといってもよいファンには、こたえられない魅力に感じたりします。 オーディオでも、全く同じことがおこるわけです。 CD を聴くには、CD プレーヤーとアンプとスピーカーが最低限必要なわけで、これらの組み合わせの妙がなければ、良い聞こえかたはしないのです。 また、その妙は、聴き手によって変わってきて当然なのです。

閑話休題。 販売店での店員の意見を参考にするときにいたっては、いっそうの注意が必要です。 店員さんと言っても、メーカーからのお手伝いさんもいます。 ある特定のメーカーの製品だけを推薦する店員は、とにかく避けましょう。 メーカーに関しては、もうひとつ。 ブランドイメージで選ぶのは止めましょう。 音を聴かずに判断するのは、ろくなことがありません。

カタログは、参考になります。 参考になる項目は、なによりも外見寸法とデザインです。 極端なことをいうと、それ以外のデータは、どれも五十歩百歩の情報です。 例えば、出力が何ワットだろうが、かまいません。 普段、我々が使用している音量では、ピークでも数ワットがせいぜいです。 あまり気にするような情報ではないのです。 話題の新技術「!@#$%^」なんてのは、読む必要なんかありません。 その手の技術が、本当に革新的なら、すべてのメーカーが採用するに決まってるじゃないですか。 すべてのメーカーが採用してから買った方が無難です。 正直言って、音だけの AUDIO では、その手の技術革新なんて、そうそうありません。 とにかく、流行廃れには、手を出さないことが大切です。

友人に相談するのは、オーディオ雑誌などを参考にするより、良いアイディアです。 あなたの好みについても、いろいろと考えてくれるでしょう。 そして、一番よいのは、実地に、その製品をあなた自身の耳で、確認することです。 自分の耳では判断できない・・・と謙遜なさる方もいますが、最終的な楽しみ手が自分である以上、自分が楽しめればよいのだとわりきるべきです。 音楽の方で、自分はアルゲリッチに感激した・・・ と思ったら、ほかの誰かが「アルゲリッチなんて・・・」といっていたとしても、聞き流すか反論するでしょう。 それと同じことなのです。 とにかく自分の耳を信じることから始めましょう。

試聴の際に気をつけたいことを書きましょう。 試聴の時には、あなたが良く聴き知っている CD(あるいは LP)を持っていくことにつきます。 そして、あなたが最もよく知っているジャンルの曲で、大好きな、しかし異なるタイプの演奏家の2人の CD を持っていくのが良いのです。 そして、大好きなおふたりの演奏が魅力的に聞こえて、しかも、おふたりの弾き方の違いが最もよくわかる装置を選べば、購入を後悔することは、まずありません。 弦楽器とピアノの2枚の CD を持っていくというのも、よくある例ですが、このような場合には、鮮やかに聞こえる機械の評価が高くなりがちです。 そういう機械の場合、誰の演奏を聴いても同じ音色に聞こえてしまい、後で幻滅してしまうことになりかねません。 また、声が入っている CD を持っていくのも非常によいアイディアです。 人の声というのは、もっとも普段よく聞いている(聞こえてくる)題材です。 その上、よく知っている人の声を聞き誤ることは、あまりありません。 演奏会などで実際に体験して、感激した演奏家の声なら聞き誤ることはないでしょう。 こういう題材でオーディオ機器を評価することは、実によいアイディアです。

私の場合は、以前は、ピアノとして、館野泉とイングリッドヘブラーで評価しておりました。 最近は、ピアノとしては、伊藤恵の CD を一枚だけ持っていきます。 そして、声はアメリンクの CD です。 なんだ、言うことが違うじゃないかといわれるかもしれませんが、私の場合はピアノは伊藤恵一枚で十分なのです。 この方は、複数のピアノを渡り歩いて演奏しているのじゃないかと思えるほど、キータッチを変えることで、音色を変えるワザをもっています。 だから、その音色の変わり具合を聴き取れるかどうかで、オーディオ機器の評価が十分にできます。 もしも伊藤恵が一本調子に聞こえるとしたら、そのオーディオ機器の評価は、(私にとっては)聞くに値しないことになります。 ここで合格したら、アメリンクの出番です。 残念ながら、両方に合格できる装置は、数えるほどしかありません。 ∞に続く自作音響機器(オーディオ)の世界の遊佐さんの言葉を借りれば、「売れるものより愛されるものが生まれない時代」なのです。

次回からは、装置ごとに、気になることを書き連ねていきたいと思います。

(to be continued...)

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