こんにちは、Pioneer Puremalt Speaker(その1) (99/10/24 記)
 

QUAD ESL-63 のかわりとなるスピーカー探しがはじまった。 とりあえず、手持ちの Rogers Studio 7 を使っていたのだが、Philips のアンプとの相性は最悪で、Quad 44 + 405 で鳴らしていた。 Rogers Studio 7 は良いスピーカーではあるが、ESL-63 のかわりにはならない。 私の最愛の伊藤恵さんのピアノの表現と言う点で、ESL-63 に及ばないのだ。 例えば、シューマンのピアノソナタ第3番(Op. 14)の第一楽章の出だし部分で、冒頭の序奏が終わり、テーマが顔を出すときに、伊藤恵さんは、キータッチを大幅に変える。 序奏では、寂しげで、重々しい音が支配的だが、テーマ提示部にはいったところで、羽毛のように軽く、柔らかく、もの憂げな音に変わる。 こういう変化をうまく描出できるスピーカーと、こういうことが苦手なスピーカーがあるのだ。

手持ちの Rogers Studio 7 は、こういうところは苦手で一本調子になってしまう。 JBL J216Pro は、Studio 7 よりはましだが、QUAD ESL-63 とは比較にならない。 スピーカー探しに、伊藤恵さんのこの CD を使えば、最初の序奏とテーマの提示をきけば、はっきりと、私にとっての良し悪しがわかる。 QUAD ESL-63 の修理で知った「のだや」で、いろいろと試聴をさせてもらった。

私が思い浮かべていたスピーカーとしては、QUAD 以外のコンデンサ型のスピーカー(マーチンローガンなど)や KEF Refrence series があげられる。 マーチンローガンのスピーカーは、QUAD と同じくコンデンサ型という点で期待していた。 比較的辛口で、細身な音と言う点では QUAD に似ているのだが、先に上げたような差を出すタイプではないようだ。 残念ながら、マーチンローガンは、私の好みには合わない。 次いで、KEF Reference Model 3 を試聴した。 KEF は、故瀬川冬樹氏のお好みのスピーカーでもあり、私も気になっていたスピーカーであるが、なかなか上級機を試聴するチャンスがなかった。 KEF Reference Model 3 では、伊藤恵のピアノがうまく鳴り響いた。  アメリンクを聞いてもあまり不満はない。 しいて文句を言えば、ピアノの音の消え際が、ちょっと粗雑な感じがぬぐいされないが、これはスピーカーがたくさん置いてある試聴室だけの問題かもしれない。 いくつかお勧めのスピーカーを聴いたが、その中では、スペンドール BC-2(復刻版)あたりもここちよかった。 以前に小型スピーカーを聴いて好印象を持っていた B&W は、残念ながら、この手の表現はいまひとつだった。 Dynaudio などの比較的小さめのスピーカーにも興味があることをお話ししたところ、のだやの社長さんが、ちょっと聴いてみませんか、とすすめてくださったのが、Pioneer の Puremalt スピーカーであった。 

14 cm 2 way のバスレフ型小型スピーカーで、Pioneer というブランド名から私自身は期待もせずに聴いた(失礼!)のだが、伊藤恵さんのピアノの響かせ方も、余韻の消え入り方も、KEF やスペンドールよりも、一枚上手で、驚いてしまった。 社長さんがにこにこしながら、「なかなか馬鹿にできないでしょ。」と。 値段は \ 120,000 だという。 Pair で \ 240,000 + \ 30,000 (スタンドが必要)になるので、\ 300,000 弱ですむ。 雑誌でもみかけないスピーカーで、名前さえ知らなかったのだが、社長によれば、サントリーとパイオニアの社長がゴルフをしながら考えた、遊び心あふれたスピーカーなのだという。 サントリーのウィスキーを熟成させた樽の廃材を使って、何かできないか・・・という着想が、オークヴィレッジの手作り職人+パイオニアのスピーカーユニットにめぐりあって生まれたスピーカーだとのことであった。 スピーカーユニットは、欧州向けの輸出用ユニットをもとに生産された製品とのことだ。 エンクロージャーの材料の制限と、エンクロージャーの手作り生産ゆえ、1000 セット限定とのことで、お店にあるのが最後の1セットだという。 (帰宅後に Pioneer のホームページを見たところ、既に、完売御礼となっていた。) スピーカーの大きさを考えると、ちょっと高いかもしれないけれど、伊藤恵さんのピアノの響かせ方が、これほどうまいシステムはざらにはない。 「スタンドを組み合わせて、全部でいくらになるのか?」と問うと、税込みで \ 150,000 弱とのこと。 「ということは、ペアで \ 290,000 ということですね。」と念を押したところ、社長は笑いながら、「ペアで、込み込みで \ 150,000 弱ですよ。 このスピーカーの良さがわかった人は、みんな間違えるんですよ。 1本 \ 120,000 だと思い込むでしょ。 1本 \ 200,000 でも買い手がつくスピーカーなのに、パイオニアは商売が下手・・・。」 社長さん曰く、「まぁ、Puremalt Speaker でしばらく楽しんで、後でまた、シビアに聞き込んで選んでくださいな。 もしかすると、Puremalt Speaker の後継機が出てくれば、それも楽しいかもしれません。」

びっくりするほど安く、Quad ESL-63 の後がまが手にはいって、大喜び。 納入された日は、本当に満足して、伊藤恵さんのピアノに聞き入っていた。 Quad ESL-63 が不調になって1か月ほど楽しめない日々が続いていた私にとって、伊藤恵さんのピアノが満足に響く Puremalt には、本当に満足していた。 しかしながら、この喜びは、ぬか喜びで、わずか数日しか続かなかったのだ・・・。

大きさなどのデータは、Pioneer Puremalt シリーズの Web site でどうぞ。

(to be continued...)

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