QUAD 44 壊れる(その3) | (99/6/28 記) |
この文章は、QUAD 44 壊れる(その2)の続編です。
そちらを先にお読みください。
電解コンデンサを交換しても、故障はなおらなかった。 それならば故障はどこだ。 電源ユニットのほうは、きちんと電圧がでているが、セレクタスイッチ部には、電源が供給されない。 そんな馬鹿な。
電源ユニット部から、セレクタスイッチ部にむけて、ひとつひとつの素子ごとに電源電圧を測定していく。 電源電圧が異常になった素子が、異常点だ。 デジタル電圧計で、ひとつひとつ電圧をあたっていく。 素子はどれも問題がない。 あとはジャンパ線だけなんだけどなぁ・・・。 ジャンパ線にデジタル電圧計の測定端子が当てられたとたん、セレクタスイッチ部が正常に動作し始めた。 測定端子を離したとたんに、また動作しなくなった。 あれっ・・・ そうか。 ジャンパ線のハンダづけ部分が接触不良になっているのだ。 アンプの電源を抜いて、ジャンパ線をハンダづけしなおした。 ヤニの焦げるにおいがする。 ここまできて、やっと故障の原因が理解できた。 ヤニいりハンダでハンダづけされていたため、ヤニが回りを侵食して、接触不良になっていたのだ。 QUAD ともあろう会社がヤニいりハンダでの接触不良とは・・・。 あっけない幕切れであった。
故障ポイント: 赤丸で囲んだところがハンダづけ不良となっていた
ところで、交換した電解コンデンサの容量を測定してみた。 10 年以上使用されていた電解コンデンサだから、さぞかしひどい値だろうと思っていたが、測定値は次の通り。
表示容量(μF) | 実測容量(μF) |
1,000 | 1,000 |
1,000 | 1,020 |
100 | 97 |
47 | 47 |
47 | 48 |
以上は、電源部の電解コンデンサの値だ。 いずれも定格の範囲内の変化といえる。 すなわち劣化はないと考えられる。 カップリング用に用いられた 12 個電解コンデンサでは、表示容量 = 100 μF にたいして、実測容量は、112, 110, 108, 109, 110, 111, 108, 108, 112, 111, 107, 112 といずれも定格の範囲内であった。 もうひとつのカップリングに用いられていた 2.2 μF の無極性電解のほうは、2 個とも 2.4 μF であり、これまた、定格の範囲内であった。 これは、私にとっては意外な結果であった。 電解コンデンサの寿命は、通常品では、1,000 時間(定格温度にて)とされている。 温度が 10 度下がれば、寿命は2倍に伸びるといわれている。 この QUAD 44 は、製造以来 10 年を超える歳月が経過しており、中古で私が購入してからの使用時間は優に 10,000 時間を超えている。 電解コンデンサは、当然劣化していても不思議はない。 さすがは QUAD と褒めたたえてよいかもしれない。
以上が、QUAD 44 修理の顛末記だが、コンデンサの容量測定キットの作成を含めても、6時間弱で修理が完了した。 総費用は 6,500 円ほどであった。 久々にハンダごてをあたためて、お遊びができたのが、何よりの報酬だったかもしれない。
電解コンデンサの銘柄が変わったわけで、音が変わったと思う人もいることだろう。 しかしながら、はっきりした音質の変化は聴き取れなかった。 定数変化を行ったり、他種類のコンデンサをパラレルにするなどすれば、音も変わるかもしれないが、それは今回の修理の目的にそぐわない。 何より、この QUAD 44 の音質を、私は高く評価しており、それを変えようとは思わない。 はっきりした音質の変化がなかったことにほっとしている。
それにしても、電解コンデンサの容量抜けが故障の原因じゃないって、最初からわからなかったなんて、未熟な腕前ですわねぇ。 セラヴィなら一発よ。 ホホホホホホホ〜
> n'Guin (from Elizabeth)
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(to be continued...)