金田式DCアンプ入門 (98/2/26 記)
 

MJ「無線と実験」の製作記事の中から、私が選んだのは、金田昭彦氏設計制作の「DCアンプシリーズ」だった。 当時、「最新オーディオDCアンプ」という単行本も出ており、記事の説得力あふれる調子にも驚いたものだ。

MJ「無線と実験」の製作記事をみていると、数ヶ月おきに新作が発表され、新作こそが最良のアンプと力説される。 部品をそろえている間に、新作がどんどんでてくる。 また、その当時は電池式のアンプが多く発表されていた。 電池の銘柄まで指定があって、電池をはんだづけしながら使用する。 とてもじゃないけれど、電池を使い捨てにしながら・・・ というのは、お金のない私には抵抗があったので、「最新オーディオDCアンプ」の単行本に掲載されているアンプを作ることにした。 当然ながら、一番安上がりと思われた、A Class 15 + 15 W のアンプだ。 2SK30A 初段の二段差動型アンプ+ 2SA627-2SD188 のシングル SEPP という構成のアンプだった。 これなら、地方都市の仙台でも、何とか部品を入手できた。 困ったのは、電源トランスだったが、これだけは通販で手に入れた。 金田氏の製作記事では、部品の一品一品まで、どのメーカーの部品を使用するように指定があり、配線する線材の向きにも指定があったように思う。 とにかく、それに従えば、良いアンプが素人の私にも作れるだろうという思いつつ、ひとつひとつ部品を集めていった。

大学合格後の休み期間(ニ浪したので、部品集め期間は二年に及んでいる!)に、私は部品集めをしていた金田式アンプを作った。パワートランジスタの放熱も初体験で、パーツ屋さんのお兄さんに、どうやるのか、教えてもらいながら作ったのを今でも覚えている。 とにかく、ディスクリートのトランジスタアンプを作るのは初めての経験であったが、アンプは一発で動作した。

さっそく、音を出し始める。 ところが、「なんだこりゃ?」という音。 どこか配線が間違っているのかと思って、配線チェックをやり直したり、電圧測定をしなおしたり。 何しろ、当時は、テスターしか持っていなかったから、何もわからない。 発振しているとか、何か問題があるのだろうと思った。 しかし、発振しているのなら、いろいろと変なことが起こるはずだし、各部の電圧も異常がないし・・・ みなさんは、もうおわかりだろう。 アンプがヒートアップしていない上に、エージングがすんでいないせいで音が悪いだけだ。 翌日、近所のハム(アマチュア無線)をやっている人から、オシロスコープを借りてきた。 いろいろ調べても、異常なところは見つからない。 「う〜ん。 はずれをひいてしまったのか?」と思いながら、コーヒーブレークということで、FMを聴き始めた。 たまたま、チェック中のアンプにスピーカーがつながっていたので、そのまま聴き始めた。 当時のFMクラシックアワー(という名前だったような気がする)の最初には、観客の拍手がはいる。 その拍手の生々しさにびっくりした。 今までに私のスピーカーから出てきたことのないような、臨場感あふれる音だった。 曲目は Schumann の交響曲第4番、サバリッシュ・N饗の演奏であった。 演奏のすばらしさに驚きつつ、アンプの音にも感動した。 とにかく音の粒立ちが良い。 気持ちよいほど音にコントラストがつく。 小出力アンプではあるが、低域の音質もしっかりして、これも良かった。

私にとっては、これが Schumann の交響曲との出会いになった。 それまでの私は、Schumann はピアノ曲や声楽曲の作曲家であって、交響曲や管弦楽曲はないも同じという、某評論家のことばを固く信じていたので、Schumann の交響曲第四番にも驚いた。 さっそく、翌日に、仙台レコードライブラリーに行って、Schumann 交響曲第四番のレコードを買ってきたことはいうまでもない。

金田式DCアンプに満足した私が、さっそく、プリアンプの材料を集め始めたのは、想像に難くないだろう。 しかし、金田式プリアンプを作る日は永遠にやってこなかったのだ・・・。

(to be continued...)

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