Erste Sinfonie B-Dur, Op. 38 (98/6/2 記)
 

Erste Sinfonie B-Dur (交響曲第1番 op. 38)は、4つの楽章から成っています。

  1. Andante poco maestoso - Allegro molto vivace --- 春の始まり
  2. Larghetto −−− 夕べ
  3. Scherzo (Molto vivace) −−− 楽しい遊び
  4. Allegro animato e graziozo −−− たけなわの春
日本語は、Schumann 初校の記載による
(出典:シューマニアーナ 前田昭雄 著)

交響曲第1番の「春」は、あまり好きな曲ではありませんでした。 以前は、好きな交響曲と言えば、なんといっても第4番ニ短調が筆頭で、次いで2番が好きでした。 最近になって、やっと第1番と第3番の良さがわかってきたように思います。 特に第1番の「春」。

一般にもしばしば指摘されるように、彼は指揮者へのアドヴァイスとして、春の香りを吹きこむことを要請してはいるが、その結果、春のイメージに満ちた演奏が、聴く人の心を自然に春的な感じで満たすことを望み、また信じていたのであって、プロブラムに「春」の字を出すことによって先入観を与えることをいわば惜しがったのである。
(中略)

シューマンの気持では、春という言葉は作曲・演奏の仕事場内部でのことにとどめたかったので、聴く人に「春」をつ与えるのは言葉なしに音楽が一人でするはずのことであった。

シューマニアーナ(前田昭雄 著)より

Schumann は、「春」という標題なしで、曲想から、春を聴衆にイメージさせたかったようです。 第一楽章の冒頭から、あなたは春をイメージできますか? どちらかというと、初夏 --- 梅雨の前の晴天の日々、あるいは梅雨の中休みでの青天のへきれきを連想なさる方が多いのではないでしょうか。 また、第二楽章から、(日本の)春のうららかな夕べを想像できるでしょうか? どちらかというと初夏の日の長い日々、あるいは秋の夕焼けを感じませんか? 第四楽章も、「梅雨が開けて夏が来た!」のイメージが似合いませんか?

いささか話が飛びますが、古代のインド・ヨーロッパ語族の言語(英語、フランス語、ドイツ語にはじまりインドに至る地域の言語)には、「夏」「冬」はあっても、「春」「秋」という言葉はなかったそうです。 「春」「秋」という言葉ができたのは、12 世紀ごろなそうです。 何を言いたいか、読者の皆様はもうおわかりでしょう。 ドイツには、日本のような春や秋という季節はないのです。

冬は冷たく、暗い季節です。 朝は、8時を過ぎて、やっと明るくなってきます。 あぁ、それなのに、夕方4時にはとっぷりと日が暮れます。 寒さも、最低気温が - 10 度以下になるのは珍しくありません。 川も、一部は凍ってしまいます。 3月になると、寒さはゆるぎ、日も長くなってきます。 しかし、皮のジャンバーなしに戸外に出ることはできません。 しかし、お祭り(Carnival!)があったり、人々の生活には笑顔が戻ってきます。 第一楽章の「春の始まり」は、こんな雰囲気を示しているように思えてなりません。

4月ともなれば、夕方8時になっても、まだ空は明るく、日中は暖かくなってきます。 人々はソーセージをさかなに、ビアホールにつどい始めます。 日本でも三寒四温ということばがありますが、ドイツは、もっと激しい感じがします。 三冬四春といったらいいのでしょうか。 暖かい日でさえ、朝夕は冷え込み、皮のジャンバーを手放すことはできません。 寒い日は、陽こそ長いものの、寒さは冬と変わりません。 第二・三楽章は、こんな生活の日々を思い出させます。

私が暮らしていた Dsseldorf でも、春は唐突にやってきました。 5月になると、もう陽気は初夏です。 日中は、30 度を超えます。 しかし野には、菜の花やたんぽぽ(などの、日本では春の花)がいっせいに咲き乱れ、あらゆる植物が萌えいづる日々を迎えます。

どろしぃちゃん (10 KB) 先の引用からすると、Schumann は、音楽だけから、聴衆に、「春」を思い知らせたかったのだと思います。 しかし、さすがに、日本の聴衆が相手では、ちょっと無理があるようですね。 この意味では、我々、日本人は、「春」という言葉にとらわれずに、この曲を聴いた方が、曲のイメージを膨らませることができるかもしれません。


交響曲第1番のおすすめの LP/CD は、Wolfgang Sawallisch / Staatskapelle Dresden の録音(EMI CDM 7 69471 2)です。 シューマンらしい管弦楽法の妙味が生かされている演奏だと思います。 Kurt Mazur / London Philharmonic Orch. の演奏(Teldec 2292-46445-2)も捨てがたいと思います。 こちらの演奏は、賛否両論があることと思いますが、私は、和声の構築のうまさを評価したいと思います。 Kurt Mazur には、Gewandhaus との旧録音もありますが、新録音の方をとりたいと思います。 Gewandhaus との録音で、忘れてはならないのは、むしろ Konwitschny の方でしょう。 Konwitschny の演奏も、忘れ難い好演奏だと思います。

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