Clara Schumann Konzert fr Klavier und Orchester (98/9/13 記)
(2000/1/10 追記)
 

Konzert fr Klavier und Orchester (ピアノ協奏曲 op. 7)は、3つの楽章から成っています。

  1. Allegro maestoso
  2. Romance: Andante non troppo con grazia
  3. Allegro non troppo

ピアノ協奏曲(op. 7)は、1837 年、クララが弱冠 18 才のときに出版された作品です。 クララは、作品をロベルトに送付して、音楽新報(Neue Zeitschrigt fr Musik)に紹介して欲しいと依頼したものの、自分で批評することなく、C. F. ベッカーという人物に委託し、「この曲の作曲者はご婦人であるから、その欠点をあからさまにするのは礼儀に反する・・・」といった批評を書き、それを読んだクララを悲しませたという、いわくつきの曲である。 その一方で、この曲のオーケストレーションには、ロベルトも手伝っているとの説もある。

第一楽章は、重々しく始まる。 そのテーマをピアノが引き継ぎ、曲が進行していくが、曲の進行は、どちらかというとモーツァルトよりは、ベートーベン・ブラームスを思わせる重さと暗さを感じさせられる。 とても、可愛いクララの写真から想像できない楽章である。

ところが、この第一楽章の重々しさは、策略なのである。 第二楽章は、うってかわって叙情的なリリシズムが支配する。 ピアノによる語りかけが長く続いた後に、ピアノの呼びかに応じるが如く、チェロが朗々と鳴り響く。 このピアノとチェロのロマンティックなやりとりが、この曲の聴きところのひとつだと私は思う。 第一楽章が重く、暗いがゆえに、第二楽章の哀調を含んだピアノとチェロとのやりとりが、いっそう感動を引き起こす。

第三楽章は、まとめにはいる。 第一楽章のテーマが、今度は先ほどより軽快に鳴りわたるかと思えば、変形された先のテーマが、まるで新たなテーマでもあるかのように、いっそうかろやかに鳴り響く。 第三楽章だけで、小さな変奏曲を作り出しているかのようにも聞こえる。

さて、おすすめの演奏ですが・・・
ロベルトのピアノ協奏曲とは異なり、手元には3種類の録音しかありませんので、その全てを取り上げてみました。 (2000/1/10 2種類追加して、5種類となりました。)

Michael Ponti (Pf), Schmidt-Gertenbach/Berlin Symphony Orchestra 盤(LP: Vox, H-5033V)は、この曲の古くからの定番というべき演奏(というか、これしか長いこと手に入らなかった)です。 聴き所の第二楽章のピアノとチェロのかけあいも美しいですし、私にとっては、スタンダードな演奏といえるでしょう。 カップリングは、クララの他作品です。

Lucy Parham (Pf), Barry Wordsworth/BBC Concert Orchestra 盤(CD: Castle Communications, Autograph MAC CD 902)は、即物主義的な演奏だと思います。 カップリングは、ロベルトの協奏曲と後で触れる Konzertsatz in F minor ですが、ロベルトの協奏曲の演奏は、まさに楽譜通りの演奏で、どんな早いパッセージでも、スラー、スタカット、それらなしの普通の音符との区別をきちんとつけている演奏です。 おそらくクララの協奏曲でも、厳密にやっているであろうと想像しています。 ロベルトの場合は、そういった演奏スタイルが非常に良いほうにでていますが、クララの場合には、ちょっと硬過ぎ・・・という感じもなきにしもあらずです。 しかし、そういう演奏姿勢が、第三楽章では、非常に好感が持て、良い雰囲気をかもしだしています。 弦楽四重奏で、ブタペストの演奏がお好きな方なら、お勧めの演奏といえるでしょう。

Enrica Ciccarelli (Pf), Friedemann Layer/Orchestre Philharmonique Montpellier 盤(CD: Agora AG 014.1)は、サロンの雰囲気漂う気品高い演奏です。 コニャックでもかたむけながら… といった、良い意味での余裕を感じさせられます。 第二楽章の恋人同士の語らいのような、甘くて熱いピアノとチェロとのやりとりも最高ですし、第一・第三楽章での雰囲気も良好です。 カップリングは、ロベルトのピアノ協奏曲とメッシーナの花嫁です。

Velonica Jochum (Pf), Joseph Silverstein/Bamberger Symphoniker (CD: Tudor 788) は、良い意味でオーソドックスな演奏というべきでしょう。 カップリングは、クララの室内楽作品です。 クララの作品の素直な良さをうまく引き出しているといえるでしょう。 他の演奏家の録音をいろいろと聴いていなければ、これで満足していることと思います。 カップリングの良さもあって、クララ愛好家必須の CD といえると思います。

Shoko Sugitani (Pf), Gerard Oskamp/Berling Symphoniker (CD: Verdi RecordsLC 7709) は、日本人では唯一の録音だと思います。 無駄のない演奏でありながら、ロマンティック。 素晴らしい演奏です。 Lucy Parham 盤の少々無機質になりそうなところを、うまくカバーした演奏です。 アーティキュレーションの取り方が、良い意味で古典的なところが、うまく、この曲の情緒的な側面に合致したというべきでしょう。 (カップリングされているロベルトの協奏曲では、失敗しているとも言えますが。) この演奏を聴いて、クララはは、古典派の良いところを、ロマン派の中で生かしていった作曲家だと、改めて感じました。 とにかく、手持ちの5枚のクララのピアノ協奏曲の録音の中では、文句なしの推薦盤です。 (余談になりますが、この組み合わせによる、Beethoven のバイオリン協奏曲のピアノ編曲版を含むピアノ協奏曲全集も隠れた名盤です。 こういう優れた演奏に目を向けられない大手マスコミが私は大嫌いです。)

ところで、上記のロベルトのピアノ協奏曲とのカップリング盤の中に、私のロベルトのピアノ協奏曲のお勧め盤があります。 (さぁ、どれでしょう??? 常連さんはご存じですね。 ^^) これら以外では、私のお勧め盤は、クララの弟子だった、Funny Davies の演奏ですので、何故か、クララに何らかの縁がある方の演奏ばかりです。 クララの録音も残している…となると、私にとっては、良い演奏にたどり着く早道のような気がしてならないのですが、みなさんはいかがでしょうか?

Clara Schumann Konzertsatz in F minor (98/9/13 記)
 

1847 年に作曲された、ピアノ協奏曲の断片です。 作曲された年代を如実に反映しており、先のピアノ協奏曲より、ロベルト色が濃いというか、より複雑で、和声の美を感じさせられる曲です。

非常に乱暴な話なのですが・・・・ クララのピアノ協奏曲 op. 7 は、雰囲気とか構成から、ロベルトの交響曲第1番に喩えれば、この Konzertsatz は、ロベルトの交響曲第4番の第一楽章あたりに喩えられるのではないでしょうか。 (おそらく、ピアノ協奏曲にせよ、この曲にせよ、聴いたことがある人は少ないと思うので… あえて喩えてみましたので、良く知っている人は、他の喩えを考えてみてくださいな。) Diana Ambache (Pf, Cond)/Ambache Chamber Orchestra盤(BBC Music Magazine の付録 CD: BBC MM45)は、掲示板でおなじみの伊藤さんから、教えていただいた盤です。 こちらは、豪放な演奏が売り物です。

Lucy Parham (Pf), Barry Wordsworth/BBC Concert Orchestra 盤(CD: Castle Communications, Autograph MAC CD 902)は、ピアノ協奏曲でも出てきた盤です。 こちらの盤のほうが、オケは美味い感じがします。 即物主義的な演奏姿勢をだしているだろうと思っておりますが、好感が持てる、良い雰囲気をかもしだしています。 お勧めの演奏といえるでしょう。

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